第115号 PARTNERコラム
国際協力への様々なアプローチ方法 ~大学職員とプロボノとして活動する~

建設したトイレと持ち主である小規模農家のご夫婦

建設したトイレと持ち主である小規模農家のご夫婦


私はこれまで、青年海外協力隊の感染症・エイズ対策隊員としてマラウイに派遣され、現在はまたマラウイに戻り大学職員としてJICAの草の根技術協力事業に携わっています。
国際協力に関わるには多岐にわたる方法があり、JICA海外協力隊はもちろん、JICA、外務省、NGO、国連、企業などがその一例です。

私は現在、大学の職員としてマラウイに駐在しています。
JICA草の根技術協力プロジェクトでは、マラウイの小規模農家向けにし尿分離型ドライトイレ(人間のし尿から堆肥を作ることのできるトイレ)を建設しています。
マラウイは農業大国であり、約8割の人が農業に従事しています。しかし最近の物価上昇により化学肥料の価格も高騰してしまいました。
特に畑面積が狭く、収入の少ない小規模農家にとって高価な化学肥料を捻出することは難しく、肥料が手に入らないことで作物を育てられない状況が続いています。このドライトイレを建設することで、農家が継続的に堆肥を手に入れることができるよう支援しています。マラウイでは日本のような水洗トイレは広く普及しておらず、土に穴を掘っただけの穴トイレが主流のため、下痢やコレラなどの感染症のリスクも高まっています。このトイレには農業利用としてだけでなく、衛生的で環境にも配慮しているという利点があります。

小規模農家と建設したトイレの問題について話し合う様子

小規模農家と建設したトイレの問題について話し合う様子

一方で私はタンザニアで活動するNGOであるAfriMedicoでもプロボノとして活動しています。
AfriMedicoでは全メンバーがプロボノであるため、本業の合間をぬって活動しています。基本的に全てオンラインでの活動になるため、私のような海外在住のプロボノも何人かいます。AfriMedicoでは日本の伝統的な置き薬(各家庭に薬箱をおき、使用した分だけを徴収する仕組み)を使うことで、農村部の人々が必要な時に必要な分だけ薬を使用できる環境を提供しています。

元々は国連などで国を動かすような仕事に興味を持っていましたが、現在では草の根での活動にやりがいを感じています。
青年海外協力隊の時には毎日地域の人と話をしながら活動を決め、彼らと一緒に一から何かを作っていく楽しさを知りました。
草の根で活動する良さは誰よりもその地域の人のニーズを把握しその地域の人にとっての最善の活動ができることではないかと思っています。現在の仕事でも毎日農家さんを訪問し、建設したトイレに問題がないか、作物の様子はどうかを聞く日常が私にとっては楽しいひとときです。

国際協力といっても様々な場所で様々な方法で関わることができます。私の場合は今後も草の根で現地の人と話し合いながら現地の人のためになる活動を続けていきたいと考えています。

青年海外協力隊の時に一緒に活動した住民団体と帰国前に記念撮影

青年海外協力隊の時に一緒に活動した住民団体と帰国前に記念撮影

京都大学大学院 地球環境学堂
矢谷 優季

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