第117号 PARTNERコラム
マダガスカルから始まった国際協力~協力隊とアフター協力隊~(前編)

2017年9月末、日本から飛行機を乗り継ぐこと約24時間、協力隊の任国マダガスカルに到着しました。
すると空港で購入予定だった携帯SIMのお店は閉店しており、移動のために手配したマイクロバスは自走不可の故障、換金所では現金が足りないと言われ、到着初日からたくさんのつまずきがあったことを覚えています。

マダガスカルは人口3,030万人(2023年 世銀)、面積は日本の1.6倍、アフリカ大陸の東側に位置する世界で4番目に大きな島国です。
主食はお米で国民の8割が農業・稲作に従事しています。常夏の島と勘違いされることも多いのですが、首都アンタナナリボは標高約1,300mに位置し、冬にあたる6~8月の平均気温は15℃前後と寒い季節もあります。

協力隊での私のミッションは、首都から北へ90km離れたアンズズルベという農村地域での「生活改善活動」でした。
生活改善と言っても、当時の私は マダガスカルの農村地域はおろか、日本の農家の暮らしも知りません。
行政の農業プロジェクトの委託先であるNGO(所長、経理、用務員の3名のみの小さな事務所)を拠点に、NGO所長から地域の村長や農業プロジェクトのキーパーソンなどを紹介してもらい、農村訪問、農作業手伝い、ホームステイなど、まずは生活を知るところからスタートしました。

農村の一般的な食事、おかずをご飯に載せて食べます

農村の一般的な食事、おかずをご飯に載せて食べます


手作業で脱穀する様子

手作業で脱穀する様子


「生活改善活動」とは、日本の戦後の農村で行政施策として展開されていた活動で、家事炊事の合理化や料理の栄養改善、農業技術の取り入れなどテーマは多岐に渡ります。
私のメインとなっていた活動は、「改良かまど作り」と「栄養改善料理」でした。
農村地域の燃料は薪で、金属棒でできた台座をかまどとして利用している家庭が多くありました。
このかまどの効率を上げ、燃料消費を減らすべく、地域にある土、粘土、枯稲などを使用して燃焼効率の良い「改良かまど」を形作ります。
また、そのかまどを利用して、農村地域ではなかなか食べられない肉の代わりに、大豆を使ったメニューを紹介したり、一緒に考えたりしながら、タンパク質摂取の機会を増やすなどを目指しました。

左:一般的なかまど、右:改良かまど

左:一般的なかまど、右:改良かまど


活動を通して学んだことは、お金がないことは不幸ではないということ。
日本の暮らしでは便利な家電やサービスが簡単に手に入りますが、マダガスカルの農村地域では自給自足がベースです。
家に電気や水道が通っていなくても、心地よく暮らせる生活の工夫が至るところにちりばめられており、現代日本の生活に慣れている私には不便でも、彼らにとっては不便ではありません 。
「生活改善活動」を推進する!と掲げながら、私の方が彼らからたくさんの生活の知恵や工夫を教えてもらいました。

ただやはり、生活がうまくまわっているうちは問題なくても、例えば病気やケガをしたり、自然災害で被害を受けたりなどした場合は、生活は変わってしまうことも少なくありません。
具合が悪くなった時に病院を受診する費用や災害で被害を受けた家や農機具を修繕する費用など、そういった「いざ」という時の蓄えが持てるようになるにはどうすれば良いか、ということも併せて考えるようになりました。(次回へ続く)


活動先に広がる水田風景

活動先に広がる水田風景

富士電機株式会社 シンガポール駐在
大渕 由貴
(JICA海外協力隊 2017年度2次隊 / コミュニティ開発 / マダガスカル)

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