第118号 PARTNERコラム
マダガスカルから始まった国際協力~協力隊とアフター協力隊~(後編)

前編を読んでみて、私の協力隊活動は皆さんの思い描く国際協力のイメージと合致する部分はあったでしょうか?
一口に「協力隊」と言っても、職種は様々で学校現場の改善、医療現場の改善、日本語教育など、それぞれでアプローチ方法は異なります。

私が協力隊活動に取り組む前にイメージしていたのは、「農村地域の人々が豊かになり、食料や水に困らず、子どもが学校に通える」ということのみ。
その大目標に向かって、水田の広がる農村で泥をこねてかまどを作ったり、限られた料理道具と調味料で調理方法とレシピを考えたりなど、正直なところ目標達成までのプロセスは想像できていなかったと思います。

そして、これらの活動は一人では到底完結できず、相手の協力が必要です。
かまどの材料に必要な粘土は、あるポイントを掘り返して作業場所まで運ぶ必要がありますが、粘土の詰まった重いバケツと掘り返すのに使った大きなスコップを持って未舗装路を運んでいくのは、私の体力では危険を伴うこともあります。
また、例えば豆乳を作るには大豆をすりつぶす必要がありますが、農村にはミキサーはないため、すり鉢とすり棒(杵と臼のようなサイズ)のある家庭から借りてきていました。

田んぼから掘り返した粘土を運ぶ様子

田んぼから掘り返した粘土を運ぶ様子


食材をすりつぶす様子

食材をすりつぶす様子


協力隊が終わって約4年が経った昨年、任地を再訪することができました。
同僚や農家さん、近所の人々と再会し、良くなっていること、変わっていないことを目にしてきました。
自分の活動の成果が目に見えたかと言えば、人脈以外には感じられることはなかったのが正直なところです。
けれども、この現地の人々との繋がり、現地語でコミュニケーションを取れること、相手国に興味を持ち続けていることが、草の根外交の成果なのではないかと思っています。

マダガスカルから帰国した後のキャリアは、現職参加だったため会社に復職し、以前所属していた国内営業から、現在はシンガポール社へ異動となりました。
入社以来、国内ビジネスの経験しかなかった私が海外ビジネスに携われるようになったのは、協力隊を経験したからこそだと思っています。
協力隊経験と現在携わっているビジネスは経験が直結するものではありませんが、異文化の中に溶け込む、日本と海外のインターフェースになり差異を埋めていく、といったところで、経験が活きていると感じています。

現在、仕事においてはマダガスカルとの関わりは持てていませんが、マダガスカルに関わったことのあるメンバーで立ち上げたマナトゥディ基金( https://manatody-fund.jimdofree.com/ )という任意団体で広報担当として、SNSでマダガスカルの情報発信をしています。
これも一つの国際協力の形です。現地を訪れることができなくても、遠地からできるアプローチ方法を探して継続するということが、自分なりの国際協力へのアプローチ方法を作り上げていくと思います。

縁があって大好きになったマダガスカルとの繋がりを大切にしながら、今後も私なりのマダガスカルとの繋がり方を模索していきます。
お読みいただきありがとうございました。

再会した元同僚と農家さんと成長した子どもたち

再会した元同僚と農家さんと成長した子どもたち


バス停まで見送ってくれる友人

バス停まで見送ってくれる友人


富士電機株式会社 シンガポール駐在
大渕 由貴
(JICA海外協力隊 2017年度2次隊 / コミュニティ開発 / マダガスカル)

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