第144号 PARTNERコラム
新卒NGOアフリカ駐在員、国際協力を追求すべく作家の道に挑む
「新卒でNGOに就職してアフリカに駐在だなんて。君はきっと後悔する」
私はそう言われながら、大学を卒業した2022年の春、ウガンダにやってきました。
高校生の頃、旅人の本を読んで憧れたアフリカ。大学生になるとバックパッカー旅や、休学してルワンダの大学に留学するなど、何度もアフリカに通いました。
アフリカ周辺9カ国から集う学生たちとのルワンダ留学生活
アフリカに浸かる学生生活の中で私が出会った友人の多くは、母国の紛争によって悲しみや苦しみを抱えていました。
しかし同時に、彼らの中には、確かな平和への情熱がありました。
「自分が生まれ育った地域の平和のために働きたい。そのための術を大学で学びたい」
ルワンダの大学で学んだ同世代の若者たちに励まされ、私は決めました。大学を卒業したら、一秒でも早くこの大陸に戻ってこよう、と。
ウガンダに赴任した私を待ち受けていたのは、深刻な飢餓の問題でした。
2022年、ウクライナ戦争以後、国際食料価格高騰の波がアフリカにも広がり、貧困層の人々が食料を買うことができずにいました。
「毎月100名以上が餓死しています」
ウガンダで「最も取り残された場所」と呼ばれる北東部カラモジャでは、深刻な飢餓によって命を落とす人がいました。その上、この地域は半乾燥地帯に属し、農業も限られています。
飢えや渇きを凌ぐべく、若者たちは窃盗団などに加入し、襲撃・略奪などの暴力に加担していました。そこで私たちは、地域住民自らが食べ物を作り、命と暮らしを守るための灌漑プロジェクトを構想しました。
荒地を耕し、灌漑用農地を整備する住民たち
言うは易く行うは難し。
国際援助の現場は、決して美しいだけの世界ではありません。日々が課題と困難の連続です。
中央政府との交渉決裂、政治家による妨害、仲間内の横領未遂など、想像の斜め上をゆく困難が降りかかりました。
しかし、それと同時に私は、厳しい世界の中で懸命に今を生きる人々と出会いました。——それは、カラモジャの農民たちです。
灌漑農業を通して、トマトを収穫できた住民と筆者
貧困・飢餓・紛争が蔓延する中でも、農業を通して人生を変えていく農民たち。彼ら彼女に日々励まされ、私は駐在生活を続けることができました。
そんな現場での日々、人々との出会いを、私は日記として数年間記録し続けました。そしてある時、この経験を、光も闇も包み隠さず、多くの人に伝えたいと思ったのです。
昨夏、私は一冊の本を出版しました。『荒野に果実が実るまで 新卒23歳アフリカ駐在員の奮闘記』 です。
著書『荒野に果実が実るまで 新卒23歳アフリカ駐在員の奮闘記』
それと同時に駐在生活が長くなる中で、より広いまなざしで国際協力を捉え、自分の力を高め、試してみたいと思うようになっていきました。
2025年8月、私は新卒から3年4ヶ月勤めたNGOを退職しました。次のステージとして選んだのは「書くこと」、すなわち「伝えること」です。
著書刊行記念 講演会の様子
現在は、作家・ライター活動を通して国際協力をより深く追求し、多くの日本人にとって他人事となりがちなアフリカの現実を伝えたいと考えています。
国際協力は冬の時代が来る、と言われるなかで、本当の意味のある現場活動を続け、社会問題の解決を志すならば、より多くの人を巻き込み、活動の輪を広げる必要があります。
ただ真面目に発信をするだけでなく、いかに意味のあるテーマを”面白く”、”深く”伝えていけるのか。
毎日そんな問いと向き合いながら、今日もアフリカを歩き、人の声に耳を傾け、原稿を書いています。
作家
田畑 勇樹