第145号 PARTNERコラム
国際協力だと気づいたのは、ずっと後だった

「国際協力を志して」アフリカに向かった、という感覚は、私にはありません。
振り返ると、人との出会いが重なった結果、気づいたら国境を越えていた。それだけのことです。

22年前、ジャズシンガーを目指してニューヨークに短期留学していた頃、私は将来が見えず不安を抱えていました。
日本では、決められた枠にきちんと収まれていないと「人」として認められないような感覚があり、その枠にうまくはまれない自分に息苦しさを感じていました。
そんな時、誘われて参加したアフリカンダンスのクラスが、私とアフリカの最初の出会いでした。
帰国後、日本でセネガルの人たちと知り合い、一緒にいる時間がとても楽に感じられました。「完璧な人間でなくていい」と思えたのです。 


埼玉県にあるセネガル料理店の1周年記念パーティーにて演奏

埼玉県にあるセネガル料理店の1周年記念パーティーにて演奏 


2010年、初めてセネガルを訪れた時、私が何者であるかを問われることはほとんどありませんでした。
ただ、そこにいる一人の人として迎え入れてもらえた。それが嬉しかったのを覚えています。 

その後、西アフリカの伝統弦楽器コラと出会い、学び始めました。
伝統音楽を学ぶことは簡単ではなく、何が間違っているのか分からないまま怒られて、悔しくて泣いたこともあります。それでも続ける中で、「相手の文化に入る」ということの重みを実感していきました。 
コラの音色を日本で広めたい。そう思いながら活動を続けるうち、いつか娘たちにもアフリカを見せたいと考えるようになりました。 

2021年末、8歳と4歳の娘を連れて、セネガルとガンビアで約2か月半を過ごしました。 
日本の学校で苗字をからかわれ、つらい時期を過ごしていた長女は、帰国後「日本では人が少し嫌になっていた。でもアフリカでは、みんなが優しくて、人に癒された」と話しました。 
また、私が現地で「チンチョン」と中国人と間違われて嫌がっていると、娘は「きっと知らないだけだから、怒らないで教えてあげればいい」と言いました。
この言葉に、私の心は緩みました。私も娘に癒されました。


横浜市立金沢動物園、ズーラシアで毎年開催のWorld Okapi Dayイベント

横浜市立金沢動物園 ズーラシアにて 
毎年開催のWorld Okapi Dayイベント


この経験を通して、音楽だけでなく、アフリカの人々の温かさや異なる価値観の豊かさを、もっと日本に伝えたいと強く思うようになりました。 
そして何より、私自身が日本で暮らすアフリカの人たちに何度も助けてもらってきたことを、改めて実感しています。 
文化が分からず迷った時、丁寧に話を聞いてくれました。だから今は、まず目の前の、私を大切に思ってくれている人たちに恩返しをしたい。そう思って活動しています。 


日本人かアフリカンかという前に、一人の人間として向き合い、関係を続けていく。その結果、国境を越えていた。
後から振り返った時に、それが「国際協力」と呼ばれるなら、それはとても自然なことのように感じます。
誰かの文化に惹かれ、関係を続けようとする気持ち。それもまた、一つの「第一歩」なのではないでしょうか。


杉並区阿佐ヶ谷駅前で開催したアフリカンファッションショー

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ゆっくりと話が出来る交流会/ピクニックの企画 

ゆっくりと話が出来る交流会/ピクニックの企画 


一般社団法人あなたとアフリカをつなぐ応援団シェ・アダマ 代表理事
杵淵 ちひろ

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