第152号 PARTNERコラム
フィリピンと高知の「現場」が教えてくれたこと

「このまま、何も世界を知らずに社会に出てもいいのだろうか」

ちょうど10年前。周りのみんなが「そろそろ就活をしなきゃ」と焦り始める中で、大学3年生だった私はそんなモヤモヤを抱えていました。
高知県で生まれ育った私にとって、海外はもちろん、隣の県ですら遠い存在。
国際協力も「ユニセフがやっているもの?」くらいのイメージしかありませんでした。

しかし、大学進学を機に上京し、想像をはるかに超えて広い世界があることを知りました。
自分がどれほど世界を知らなかったのかを痛感する中で、「このまま社会人になっていいのだろうか」という違和感が、少しずつ大きくなっていきました。

そして私は、就活という流れには乗らず、途上国の教育支援を行うNPO法人e-Educationのインターンとして、フィリピン・ミンダナオ島へ渡ることを決めました。
大学4年生の後半から1年間、現地に駐在し、国際協力の現場に携わることになったのです。
ミンダナオ島では、現地の教育局や日本の企業と一緒に大規模な教育支援プロジェクトを行った一方で、現地の先生方に協力いただき、フィリピンの高校生と私の地元の高知県の高校生をオンラインで繋ぐなど草の根的な活動も行いました。

渡航前、現地の課題についてはネットでたくさん調べ、理解したつもりになっていました。
でも、現場で感じるものはまったく違いました。そこには、一人ひとりの生活や文化、簡単には割り切れない複雑な文脈がありました。

ネット上では「フィリピン」という大きなカテゴリーでしかなかったものが、現場で活動することで「Aさん」「Bさん」という顔を持った存在として見えてきたのです。
世界が、地図の上の遠い場所ではなく、自分と地続きの場所になった瞬間でした。


お世話になったフィリピン カミギン島の先生たち。

お世話になったフィリピン カミギン島の先生たち
中川は一番左


この「現場に行かなければ感じられないリアリティ」は、その後、地元を離れて東京で働き、さらに地域おこし協力隊として地元・高知県に戻ったときにも、形を変えて経験することになります。
高知県では、人口1000人の村で中学生むけの公営塾の立ち上げ・運営を行いました。高知県ならではの魅力や課題、そして意外にも東京と共通している部分。
18歳まで住んでいた地元であるにもかかわらず、それまで気づけていなかったことが、初めてリアルな輪郭を持って見えてきたのです。

それはきっと、一度関東に出て、フィリピンにも身を置き、「よそ者」の視点を持つことができたからかもしれません。

現在、私は海外や地域の現場からは離れ、e-Educationの国内チームで広報担当として働いています。けれど、フィリピンや高知の教育の現場で養った感覚は、今の仕事の大きな土台になっています。
「どんな言葉を選ぶのか」「一人ひとりの人生を、ひとくくりにせずに伝えられるか」。
画面の向こう側の「一人ひとり」を想像しながら言葉を紡げるのは、それぞれの現場で出会った人たちの顔や温度を、身をもって知っているからです。
私たちが大切にしている「Gemba Driven」という行動指針は、日本でパソコンに向かう私にとっても、決してブレてはいけない大切なスタンスです。


広報担当としてスタートしたInstagramショート動画、THE 100シリーズ

広報担当としてスタートしたInstagramショート動画、THE 100シリーズ
一人一人の人生に焦点を当てることを意識している


今はAIを使えば、世界中のどんな情報でも一瞬できれいにまとめられる時代です。
ですが、どれだけ簡単に情報が手に入っても、現場に足を運んでみないと絶対にわからないことがあります。
そこでしか見えない景色があり、肌で感じる温度があり、そこでしか出会えない「問い」があります。

もし今、当時の私のようにモヤモヤしている人がいたら。思い切って、まずは「現場」に足を運んでみてください。
画面越しでは決して出会えない、あなただけのリアルな世界が、そこにはきっと待っています。



認定NPO法人 e-Education
中川 千絵美(ジェイミー)

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