第16号 PARTNER便り 国際協力キャリアに向かって ~2つのインターンで学んだこと~(中)

こんにちは。JICA国際協力人材部でインターンシップをしています、首都大学東京3年の久留島愛です。

前回に続き、今回は2019年6~8月の2か月間参加した、ケニアにある日系ソーシャルベンチャー企業
「アルファジリ」でのインターンシップについてシェアします。

お世話になった家族と同僚。最後にナイロビでスマホをすられたため、
フィルムカメラで撮った写真しか残っていません…。

「アルファジリ」は、海外協力隊としてケニアのミゴリ県に赴任した薬師川智子さんが、任期終了と同時に同地域で起業した日系ソーシャルビジネスカンパニーです。

貧困農家の生活を包括的に向上させることをミッションとし、「アルファチャマ」という10人ほどのご近所農家グループを形成して、農法指導や農業資材のローン提供などを行っています。会員農家から買い取った作物の
卸売によってマネタイズするというビジネスモデルです。

そこで私は、農家のまとめ役となる「フィールドオフィサー」という社員の指導と、卸売オペレーションの改善に、他の日本人インターンやケニア人社員とチームを組んで取り組みました。

チームの中での私の役割は、「現場の目になること」。オフィスからバイクで1時間以上離れた農村に泊まり
込み、現場の問題提起、施策議論、実施、フォローアップのサイクルをオフィスメンバーと連携しながら行いました。

インターンでありながら一つの事業の現場を任せて頂き、ケニア人社員を巻き込みながら成果を出すことが期待される環境。インターン経験もリーダー経験もない私にできるかと開始前は非常に不安でしたが、いざやって
みると、自分の提案が現場の改善に直結することにやりがいと楽しさを強く感じました。

「人を動かす」難しさ

一方で難しかったことも多くありました。その一つが「人を動かす」こと。「事業を前に進めたい!」と意気
込んだ私は、新しい施策を次々と試そうとしたのですが、どうやら盛り上がっていたのは私と一部の社員だけ…。卸売用野菜のパッキング担当の日雇いスタッフからは、「新しいことをさせるならまずは給料を上げてくれ」と、煙たがられてしまいました。

施策実行には携わるスタッフ全員の協力が必要だけど、コストはかけられない…人を動かす経験がなかった私にはとても難題でした。

そこで、それまで現場全体の監督や指示に徹していたのを改め、まずは自分が一番必死で手を動かそうと思いました。一緒に野菜をパッキングしたり、200㎏ある荷物のトラックへの積み込みに、非力ながら手を添えてみたり…こうして自分も一緒に動きながら指示を出すのと、スマホ片手に他の業務をしながら指示するのとでは、
当然ながら彼らの反応も違いました。

この姿勢は、アルファジリの社長薬師川さんと、副社長西田さんの姿から学んだものです。お2人の「アフリカの貧困削減に人生を懸ける」という覚悟と、朝から晩まで必死で働く仕事ぶり。そしてその姿に社員たちが
モチベートされている様子を見て、「リーダーが誰よりも必死で行動するからこそ、メンバーが付いてくるのだな」と学びました。

農村の風景。ここを毎日歩き回りました。

そして、「ビジネス」である以上、必要資金は基本的に自分で生み出すため、 理念に沿った意思決定を
スピーディーにできる。
これがソーシャルビジネスの魅力の一つだと感じました。私がいた2か月の間にも、
新規事業が立ちあがったり、方針転換がたくさんありましたが、すべては理念達成のための試行錯誤の過程
であり、そのスピード感を体感できたのはとても良い経験だったと思います。

一方で、そのインパクトを底上げし、他地域への展開スピードを上げるには、資材の機械化や灌漑施設などの
インフラ整備といった、一中小企業では担えない課題もあり、ODAによる大規模な協力の重要性を実感しました。よく耳にする「国際協力におけるパートナーシップの重要性」の意味が腹に落ちた気がします。

農村での生活で考えたこと

2か月間主に滞在していたのは、農家兼アルファジリの社員の家です。

「電気もガスも水道もない」
そんな生活に衝撃を受けたのは最初の2日まで。慣れてしまえば家の裏の原っぱで浴びる雨水のお風呂は爽快でしたし、夜ソーラー充電式の小さなライトに家族みんなが密集し、歌ったりお祈りしたりする時間は大好きでした。

しかし、「電気もガスも水道もない」ことは「時間がない」というのと同義でした。料理は火起こしから始めると2品作るのに1時間半もかかったり、雨が降らない日々には生活用水確保のため、毎日3時間以上、川と家を
往復したり…。大人や年長の子供はとにかく1日中働いているのです。進学受験を数か月後に控えた小学8年生の娘さんには、勉強する時間など1日30分でさえ残されていないようでした。

一見「日本人よりもよっぽど生き生きとしているし、このままでいいじゃない」と思えてしまいますが、
“貧困”が一体何を意味するのか? その一部を、共同生活の中で目の当たりにしたように思います。

土に穴を掘ったボットントイレ
お風呂

“善い動機”を持って行動し続ける

業務のほかでは、村の若者を集めて「性の多様性」について授業を行ったり、ケニアではマイノリティである
イスラム教徒にインタビュー調査をしたりと、疑問に感じたり、関心を持ったりしたことについてはとにかく
行動するようにしていました。

しかし、何かするたびに「自分のやっていることは間違っているのではないか」と悩む連続で、次の行動を起こすのが怖くなるときもありました。国際協力に携わり続ける限り、こうした悩みは尽きない気がしますが、そんなときは、アルファジリの社長薬師川さんに頂いた言葉を思い出そうと思っています。

「何が“正解”かなんて、自分の小さな頭の中で考えていてもわからない。行動し続けて、何年も経って、初めてわかること。だから、とにかく“善い動機”をもって、がむしゃらに行動し続けることが大事。」

シンプルですが、この言葉の意味を心から理解できたことが、2か月間のインターン生活で得た最も大きな学びの一つかもしれません。これからも思考することは大切に、だけどそこで立ち止まらず、思考した先にたどり着いた結論には信念を持って、とにかく前に進んでいこうと思います。

最終回では、JICA本部でのインターンでの学びと、今後のキャリアについて考えていることを、お話ししたいと思います!

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