第19号 PARTNER便り サラーム~ヨルダンOJT便り(下) 国際協力は「好き」から始まる?
السلام عايكم(アッサラームアライクム/こんにちは)!
ヨルダン事務所で新人研修(OJT)を行った稻田です。第3弾、最終回となる今回は、3ヵ月間の研修を経て、
ヨルダンにおけるJICAの開発協力について感じたことをお伝えしたいと思います。
JICA職員=国際協力のプロデューサー?
皆さん、JICA職員の仕事についてどのようなイメージを持っていますか?「国際協力」というと、JICA海外
協力隊のように、現地の方々と共に最前線で働くイメージが強いかもしれません。しかし、そういったいわゆる「最前線」での仕事だけが国際協力ではありません。
JICA職員は「国際協力のプロデューサー」である、と表現されることがあります。JICA職員は、JICA事業を
演劇の舞台とするのであれば、劇の台本を書き、開発コンサルタントやJICA専門家(※1)などの“舞台俳優”の
確保、必要機材の購入をして舞台を整え、劇をプロデュースする役割を担っているという見方です。
例えば、技術協力プロジェクト。研修の一環として様々な事業の現場を訪問しましたが、一朝一夕に全てが
上手く進むわけではありません。ヨルダン側実施機関の実施体制が不十分であったり、日本側の専門家人材が
不足していたり…こうした問題に対し、職員が直接現場に赴き、様々な関係者から話を聞いて対応策を考え、
実行に移そうとする姿は印象的でした。
ヨルダン・日本・イスラエル三角協力:ヨルダン先進農業技術の導入計画プロジェクト
フェーズ3
JICA専門家がヨルダンの農業研究員を通じて淡水魚ティラピアの養殖技術、熱帯果樹の栽培技術をパイロット
農家に移転し、最終的に同技術が農家に普及されることを目的とする。
今回はティラピアの養殖チームの活動を視察。
(左)200gまで育ったティラピアをヨルダン南部Ghour Al Safiの農村で試験販売。
(右)専門家が制作を指導した生け簀。ヨルダンで入手可能な材料が使用されている。
技術協力だけではありません。低金利で資金を長期間融資するJICAの協力形態の1つである有償資金協力
(※2)。そのうちの「開発政策借款」(※3)では、融資実行の前提条件として、ヨルダン政府が達成すべき様々な改革項目に合意したものの、予定通りに諸施策が進まない、ヨルダン側から必要書類がなかなか提出されないといった問題がありました。そこでJICA職員が各省庁・機関の担当あるいは責任者の元へ足を運び、なぜ
進まないのか、対応策を提案しつつ、迅速な対応を促していました。それも、一度ならず何度も。昨今はメールや電話でコミュニケーションが完結することも多いかと思いますが、直接顔を会わせて、粘り強く働きかける
ことで誠意と真剣さが伝わるのだと実感しました。このような職員の姿勢は、今後目指したいロールモデル
として研修終了後も心に残っています。
ヨルダンを「好きになった」3ヵ月
研修の3ヵ月を通して、ヨルダンの抱える課題ばかりではなく、ヨルダンの魅力も沢山見つけてきました。観光
スポットとしておなじみの死海やペトラ遺跡では自然と歴史の雄大さを感じ、イスラムのおもてなしの心には
いつも癒されました。町でアラビア語が分からず困っていると、通りがかりの方が話しかけてくれ、助けて
いただいたことも多々ありました。
こうした地元の方々との触れ合いを通してヨルダンが好きになりましたし、出会った方々のためにも「ヨルダンの抱える課題を解決したい」「JICAはどのように協力すればよいのか」と考えるようになりました。
この経験を通して、国際協力の根底には「その国が好きである」という思いがあるのだと改めて実感しました。今後もヨルダンで出会った方々のことを忘れず、業務に励みたいと思います。
今回でヨルダンOJT便りは終了となりますが、ヨルダンの魅力はまだまだ伝え切れていませんので、ぜひ
ヨルダンに足を運んでいただき、好きになっていただければと思います。
それでは、مع السلامة(マッサラーマ/さようなら)!
※1:JICA専門家について、詳細はこちら
http://partner.jica.go.jp/Contents/StaticContents?htmlName=how_to_cooperation
※2:有償資金協力とは
https://www.jica.go.jp/about/report/2017/ku57pq000022ernq-att/J_34.pdf
※3:ヨルダンで実施されている開発政策借款について、詳細はこちら
https://www.jica.go.jp/press/2018/20181128_02.html
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