国際協力のリアルに迫る3つのストーリー~カンボジアOJT体験記(第1弾)~

4月にJICAに入構した国際協力人材部の浅川裕子です。

この体験記では、新人職員海外研修中にカンボジアで出会った、
日本によるカンボジアへの国際協力のリアルを伝える3つのストーリーをご紹介します。

この連載を読んでくださった皆さんに、
「へぇ、国際協力って、こういうこともしているんだ!意外!」「もう少し知りたい!」
そんな感想を持っていただけると幸いです。

さて、第1弾は、クイズから始めてみましょう。

この写真は、カンボジアで撮影したものです。何の写真だと思いますか?

たくさんのボタンがあって、ゲーム機のコントローラーのようにも見えますね。
モニターの左端には、日本の国旗も貼ってあるようです。
実はこの写真、ある 乗り物の一部 を撮影したものです

では、2枚目の写真です。

何やら、船の操舵室のようですね。
よく見ると、日本語のパネルの上に、英語のラベルが貼ってあるようです。
一体、どうしてなのでしょう。

それでは、最後の1枚です。

これは、船のタラップから撮影した、船の側面の写真です。
「CAMBODIA CUSTOMS」の文字が見えるでしょうか。何やら、税関と関係があるようですね。
あれ、カンボジアの船? さっき船内に日本語が書いてあったはず。

―― 真相はいかに ――

この船は、1990年代後半から2017年まで、神戸と大阪の税関で20年以上に渡って日本近海を巡回し、不正薬物などの密輸を阻止するために活躍していた「だいせん」と「なみはや」という税関監視艇でした。

(写真出典: 財務省

カンボジアでは、経済発展に伴い貿易取引量が増加する一方で、近海では小型船舶による密輸が横行しており、取締り体制を強化することが大きな課題となっていました。
そのような中で、カンボジア税関の取締り能力を向上するために、これらの2隻が譲与されました。

船体は整備され、「シードラゴン1」「シードラゴン2」として生まれ変わった2隻は、2019年1月から
カンボジアの港湾で活躍しています。

2019年1月25日にシハヌークビル港で行われた監視艇の就航セレモニーでは、
カンボジア関税消費税総局長が、今回の日本政府からの監視艇の譲与や専門家派遣など、日本税関による日頃の技術支援に対する謝意を述べるとともに、
「日本政府から譲与された監視艇2隻は日本税関で長年活躍してきたものと聞いていますが、そうとは思えない
ほど綺麗に整備されています。我々は監視艇を贈られただけでなく、大切に整備して長く使うという日本人の
マインドも受け取った。カンボジア税関もそのマインドを受け継いでしっかり整備して運用していきたい。」
といった趣旨のスピーチをされました。

日本の物流を守り続けていた税関の監視艇が、今度はカンボジアにおいて密輸を防ぐことで合法的な物流を促進し、経済活動の活性化に貢献しています。
そして、船という形あるものだけでなく、ものを修理・整備しながら、できる限り長く使うという、日本に長く息づく目に見えない文化もまた、カンボジアの人々に受け継がれているのです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

この記事の内容について、詳しくはこちら
・ODAメールマガジン第394号 「第2話 カンボジアで活躍する日本の税関監視艇」 (2019/3/27)
・Khmer Times “Japan donates anti-smuggling watercraft” (2018/7/3)

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