「コロナと日系社会」

世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルス。感染者が300万人を超えたブラジル(8月17日時点)など、最近は中南米での感染拡大が目立っています 。

先日、中南米に住む日系人の方によるコロナ禍の現地レポート( ニッケイ・ネットワーク45号/海外日系人協会発行 )を読みました。

中南米などの日系社会では、日本文化を伝える祭りやバザーなどのイベントが現地と日本とのつながりを深めるものであると同時に、日系団体の重要な運営維持費収入源でもあります。しかし、コロナ禍でこのようなイベントが中止や延期を余儀なくされています。大きな痛手を被る中、ブラジルで最多の日系人が住むサンパウロ州では、5月に予定していた「文化まつり」をネット配信に変更して開催しました。普段なら直接日本文化に触れる機会となることで、日本文化と現地の人々を結びつける絆の役割を果たす「まつり」ですが、今回は「この困難を一緒に乗り越えていこう」という連帯感をメッセージとして発信したそうです。

いつイベント開催を再開できるのか、先が見通せない不安が募る中、ネット配信を行ったことでリモート対応による新たな可能性や利点にも気付きがあったと言います。全国の日系団体はもとより日本や国外の日系団体とももっと交流できて、新しいアイデアが生まれるのではないか。アルゼンチンでも、日系団体が初めて開催したオンライン会議に、首都近郊だけでなく地方の日本人会や大使館、JICAも参加し、日本語教師研修のオンライン形式での試行など前向きな話し合いがされたようです。

現地では医療関係に従事している日系人の方も多く、コロナの最前線で闘っていらっしゃる方も少なくありません。 また日系団体による現地の医療関係者や生活困窮者へのマスクや現金、支援物資などの寄贈、食事の提供活動などの支援活動も行われています。そして、若い日系人も活躍しています。アルゼンチンでは、3Dプリンターでフェイスシールドを作ることができると知って、友人や知人に材料の寄付を依頼し、家族の助けを借りて700個以上を作成し病院に寄付した方がいます。また、外出するのが難しい高齢者のために、自身が住んでいるアパートのエレベーターのドアに「買い物代行します」という張り紙を掲示した方も。それをインスタグラムにアップしたことで友人たちが彼にならい、多くの反響を集め大手新聞にも取り上げられたそうです。

アルゼンチンの医療従事者
フェイスシールドを寄贈した日系人の若者にお礼のメッセージを送るアルゼンチンの医療従事者
マスクをするアルゼンチン人
マスクをするアルゼンチンの人々
(首都ブエノスアイレス)

(写真はいずれも小木曽モニカさん提供)

日本国内の日系社会はどうでしょうか。在日ブラジル人を支援するNPOには、日本で生活するブラジル国籍の高校生や大学生から複数の相談が寄せられているそうです。コロナの影響で両親が仕事を失ったり、アルバイト収入が途絶えたりして学費の支払いができない…。在日日系人は多くが派遣などの非正規雇用で働いており、コロナのこのような影響を最も受けやすい立場にあることから、同NPOは他のNPOや日系団体など、また総領事館と協力し、生活困窮者に食材の提供を募る支援活動などを行っているそうです。

物理的な人の行き来が制限されるコロナ禍で、オンラインなどによる世界との新たな「つながり」の方法や可能性が模索されています。同時に、多文化社会など日本国内における「つながり」についても、考える時ではないでしょうか。

JICA人事部
開発協力人材室
砂子知香

【参考】
コロナ感染者数参考

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