第479号 国際協力を通じて日本も知る

「日本ではどうなっているのか?」
「日本の制度について教えてほしい」

仕事で相手国政府の方と話していると、日本のことを尋ねられることがとても多い。日本について割と知っている相手だと、かなり具体的な技術や制度についてまで尋ねられる。 以前いた部署で、道路や橋梁の新しい案件を形成するために出張に行くと1度はこの手の質問が出された。日本人として、相手が日本の経験を知りたがっていることは率直に嬉しかったが、 質問に答えられない私はその度に冷や汗をかきながら、上司や調査に同行されているコンサルタントの方が答えているのを聞き、相手と共に日本の経験を学んでいた。

国際協力と聞くと、まずは相手の国のことをしっかり理解していなければならないと思われがちである。もちろんそれは正しく、相手の国の実情を知らずに独りよがりな支援をしただけでは、 とても国際協力とは言えない。しかし、相手の国のことと同じくらい、日本国内のことを知らなければ仕事にならないと私は思っている。

1945年の終戦から高度経済成長を経て、現在の成熟した社会になった日本の経験(良い面だけでなく悪い面も含めて)は、国際協力においてとても重要なモデルケースである。 この70年以上の間に日本が直面してきた様々な課題の中には今まさに相手国が直面しているものもあり、その時に日本がどのように対処してきたのか、 対処するためにどのような新しい技術や制度が生まれたのかは、その国の課題解決に向けてとても貴重な材料となる。もちろん、その技術や制度をそのまま相手国に持ち込んだだけではうまくはいかないし、 相手国の反発を招くだけであろう。これらの経験をもとにその国に合った方法で協力を進めていくことが必要であるし、これこそが日本らしい国際協力と言えるのではないだろうか。

これは見方を変えれば、これまでの日本国内での経験をもとに、誰でも国際協力に参加することが出来るということである。近年はJICAでも、中小企業の海外展開など、 これまで国内を中心に事業をされてきた方の海外展開を支援し始めているが、これに限らず、日本国内の経験や技術はまだまだ海外でも通用するものが多い。

私自身、これまでの業務を通じて日本の様々な経験を知る機会が得られたが、まさか国際協力でこれだけ日本のことを知る機会が得られるとは思ってもいなかった。 今後も、相手国と日本のこと双方を知り、より良い国際協力の担い手となれるよう日々精進していきたい。( パレスチナ事務所 K. S.)

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