コラム 地球規模で生きる人

銅冶 勇人(どうや・ゆうと)さん(株式会社DOYA)

外資系キャリアを捨て、アフリカで始めたのは「人を笑顔にする」仕事

人を笑顔にすることが好きで、スポーツや音楽の世界で活躍するアフリカ系の人たちのパフォーマンスに憧れていた少年は、大学の卒業旅行で訪れたアフリカのスラム街で、人生をかけてやりたいことを見つける。小さいころから貫いてきた“人とは違う視点”で、アフリカでの起業の道を切り開いていくリアルなストーリーを全3回でお届け。
今回は、就職活動から、外資系金融会社での社会人生活、そしてアフリカでの起業への道のりを紹介します。

就職活動では両親と話す時間が重要

銅冶さんはどんなふうに就職先を選んだのだろう? 就職活動や仕事選びに関してもアドバイスをもらったよ。

銅冶さんはどんなふうに就職先を決めたの?

小さいころから人を笑顔にすることが好きだったから、バラエティ番組を作りたくて、テレビ局から就職活動を始めたんだ。ほかの就職先は考えていなかったけど、周りが外資系金融会社に憧れているようだったから、そんなにスゴイのならと受けてみることにした。
面接に進みたくさんの社員と話したら、“全員が全速力で走っている”組織だということがわかった。それが僕にとって衝撃的だったんだ。「ここで揉(も)まれて、耐えられたら成長できるぞ!」と思い、外資系金融会社で社会人生活をスタートすることにしたんだ。

人懐っこい笑顔が印象的な銅冶さん
自分に合う仕事はどうやったら見つかるの?

自分に何の仕事が向いているかなんて、実際に会社に入ってみないとわからないし最後までわからない人も多いんじゃないかな? 僕だって卒業旅行がきっかけで今の仕事にたどり着いたわけだから。
ひとつ言いたいのは「自分の可能性を狭めないほうがいい」ということ。どんな仕事であったとしても、いろんなことを吸収したり経験したりチャレンジを続けてぶつかっていくことが、合う仕事を選ぶことにつながっていくと思う。

過去の経験が未来につながっていく
就職活動のとき、したほうがいいことってある?

0歳から現在までの自分の年表を書いてみるといいと思う。そうすると、自分のターニングポイントはどこかがわかってくる。自分が本当にやりたいことを知るきっかけはそこにあるよ。
僕が就職活動のときに大事にしていたのは、家族と過ごす時間を持つこと。みんなも、「どういうふうに育ててきてくれたか、どんなところに一番困ったか、君のことをどういう人間だと思っているか」など話してみてほしい。家族は本当の君の長所、短所を誰より知っているからね。自分のことを理解する時間を作ることは、かけがえのないことだと思うよ。

就活ではマニュアル本を読むより、家族の方との会話のほうが大事

外資系金融会社での経験があるから今の僕がある

銅冶さんが社会人生活をスタートさせた外資系金融会社。そこでの経験はどんなふうに今に生きているのだろう? 苦労したことも聞いてみたよ。

外資系金融会社での仕事はどうだった?

あの会社に入っていなかったら、今の自分はない。どんな仕事にも通ずる基本的な部分をハイレベルで学べた。何かを解決・達成・構築するスピード感、人の動かし方などだよ。
なかにはつらいこともあった。仕事がハードなことを覚悟して入社したつもりだったけど、途中で参ってしまって会社を辞めようと思った。でもそのときにがんばれたのは、卒業旅行で見たアフリカのスラム街の光景を思い出したから。「僕なんか飯も食えているし、家族も友だちもいるし、仕事もあるのに、悩んでいるなんてダサいぞ」って。そこから意識が変わり、仕事でも結果が出せるようになっていったよ。アフリカを思い出すことが自分の中でいい方向に働いたんだ。

外資系金融会社時代の銅冶さん。苦労も多かったが、そこで学んだことがビジネスの基礎となっている

アフリカへの思い。個人的な支援から公的なサポートへ

社会人になってアフリカに対してどうアクションを起こしたのか、そして、会社に勤めながらビジネスをどうやって切り開いていったのか、その道のりも教えてもらったよ。

仕事をしながら、アフリカに対して何か行動をしたの?

アフリカへの卒業旅行から帰ってすぐに始めたのが、スラム街の駆け込み寺である施設への送金。その後、組織として公式にサポートしたいという気持ちが強くなり、社会人3年目にNPO法人*「Doooooooo」をつくった。
東日本大震災が起こったときには、NPO法人の活動のひとつとして、毎週末被災地でいろいろなプロジェクトを行ったんだ。そのとき、「やっぱり自分は笑いをつくっていくことが好き。人に喜んでもらうことを仕事にしたい」という思いが明確になった。
徐々にやりたいことが具体化してきて、とうとう7年間働いた会社を辞めたんだ。アフリカの人を継続して雇用できるビジネスを立ち上げ、アパレルブランド「CLOUDY」(曇りの日という意味)をつくったんだ。この名前には、ネガティブなイメージの「曇りの日」を、「晴れの日」に変えられる製品を作っていこう、という願いを込めているんだよ。

*NPO法人…非営利団体のこと。

被災地で行ったプロジェクトを通し、「人に喜んでもらうことが好き」だと実感

次回は世界で活躍するために必要なものって何なのか、学生のうちにしておいたほうがいいことって何かを教えてもらうよ。

プロフィール

銅冶 勇人(どうや・ゆうと)さん

株式会社DOYA代表取締役社長
東京生まれ。2008年、慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。2010年特定非営利活動法人Doooooooo創立。2014年同証券会社を退職し、翌年株式会社DOYA創立。同年9月アパレルブランドCLOUDY創設。

WEB http://cloudy-tokyo.com/