ジュニア専門員とは
概要
ジュニア専門員制度は、開発途上国・地域等における開発援助の専門知識と一定の活動経験を有し、将来にわたり国際協力業務に従事することを志望する若手人材を対象に、主に国内においてJICA事業を実地に研修する機会(OJTによる実務研修)を提供するものです。
これにより、国際協力に関する実践的な計画策定、運営管理といった協力手法等についての能力の向上を図り、JICA事業実施においてニーズがありながら人材が不足する分野の人材を養成することを目的とします。
研修は、JICA本部における国内研修を中心に行い(海外出張有)、期間は最長1年6ヵ月とします。ただし、研修期間は、双方の合意に基づき、同一のポストについて契約期間2年6か月を上限として更新される可能性があります。
研修終了後は、長期専門家等として海外へ派遣されることを原則とします。ただし、JICAが長期専門家等として派遣するには不適当若しくは十分な能力を有していないと判断する場合、又は派遣先予定ポストが現地の政変や安全管理上、派遣困難となった場合、専門家派遣は行いません。
また、研修後の海外派遣を約束するものではありませんので、予めご承知おきください。
求められる資質と能力
求められる資質と能力は個々の案件により異なりますが、一般的にジュニア専門員において必要とされるレベルは以下のとおりです。
(「国際協力人材に求められる6つの資質と能力」も併せてご参照下さい。)
分野・課題専門力
ジュニア専門員は、本部研修において実務を通し、案件の計画から実施、評価に至る一連のサイクルを学ぶことで、自身のもつ特定分野・課題の専門知識・経験をJICA事業の中で活かす方法を身につけます。
また、現地出張や国内での様々な研修事業への参加から、特定分野・課題の専門性を研鑽します。
これらにより、技術協力専門家もしくは企画調査員として派遣されること、また専門家もしくは企画調査員としてより効果的な事業実施ができるようになることを目的としています。
このため、特定分野・課題などの専門知識・経験について、開発途上国での支援に貢献できる技術・専門性を有することを必須としています。
地域関連知識・経験/援助関連知識・経験
研修終了後、技術協力専門家もしくは企画調査員としての派遣を想定していることから、地域関連知識・経験、そして援助関連知識・経験が一程度必要となります。
また、本部研修中、特に派遣先予定ポストに関連するこれらの知識・経験を更に高めます。
このため、原則1年以上、海外における開発援助に関する勤務経験(JICA海外協力隊、NGO職員、国連JPO、開発コンサルタント等)を必須としています。
総合マネジメント力
それぞれの専門分野・地域での知識や経験を、海外での実際の現場で活かすためには、総合マネジメント力が必要です。
問題解決の方向性を提示し、相手国政府や関係機関、JICA在外事務所などの多くの関係者を巻き込みながら解決していく力、技術協力プロジェクトなどの案件を日本国内で運営・管理する能力が求められます。
加えて、案件の立ち上げや調査・研究事項を、多くの関係者を巻き込みながら効率的に実施していく能力が必要となります。これらを本部研修にて向上させます。
コミュニケーション力
本部研修では、案件の計画・実施・評価、現地出張や国内研修事業と、多くの場面で英語力が必須となります。
また、研修終了後、技術協力専門家等として現地で業務を遂行するための語学力も必要です。
語学のみならず自分の考えを伝えるためのプレゼンテーション能力、交渉能力も必要となります。また、相手国の社会・文化的な背景を理解する幅広い知識、情報、それらを実際のコミュニケーションに活かす社会性、協調性、共感力も、コミュニケーション力として求められます。
キャリア紹介
※所属や職制等はインタビュー当時のものです。
村田 良太さん
- 所属:人間開発部
- 職制:ジュニア専門員
キャリアパス
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現在の業務内容:
南アフリカ共和国やザンビア、ガーナなど、アフリカ地域での理数科教育やコミュニティ協働型プロジェクトの案件形成や進捗管理を主に担当しています。これらは、JICAの事業戦略である「JICAグローバルアジェンダ」における教育分野のクラスター戦略「1. 教科書や教材を開発し、学びを改善」と「2. 地域のコミュニティと学校との協働」に関連しています。クラスター戦略を意識しつつも、その国特有のコンテクストを考慮しながら行うプロジェクトの進捗管理は、大変複雑で難しさも感じますが、やりがいを感じるものです。
また、複数のタスク活動にも参加しています。中でも算数タスクでは、UNESCOなどが策定した、初等・中等教育における各学年の生徒に期待される「読み書き」「計算」能力レベルの指標(GPF: Global Proficiency Framework)を基に、全世界で活躍するJICA海外協力隊員が赴任先で使用できるためのテストを作成・実施しています。
業務で感じるやりがい:
プロジェクト実施国のカウンターパート機関やその先にある現場を含めて、JICAという組織を通じて多くのスタッフや関係者と協力して、一国の教育事業に携わることにやりがいを感じています。
特に出張の際に、直接の裨益者である学校の校長や教員、生徒へのインタビューや授業視察などを通して、支援の成果や有効性を確認できることはやりがいとなっています。
また、JICA本部での業務では、直接現地の業務進捗を確認することができないことに、大変難しさを感じています。
そういう意味では、現地の専門家やコンサルタント、在外事務所の担当者などと連絡を取り、情報収集すること、月報や報告書の確認を行うことの重要性を感じています。
■村田さんのより詳しいインタビュー記事はこちら
石井 潤さん
- 所属:経済開発部 農業・農村開発第1グループ
- 職制:ジュニア専門員
キャリアパス
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現在の業務内容:
主に水産分野のプロジェクト管理を担当しています。担当地域は中西部アフリカを中心に、バングラデシュや大洋州など様々です。
委託先であるコンサルタント企業と連携しながらプロジェクトの進捗管理を行ったり、在外事務所と連携した新規協力事業の立案など、プロジェクトの始めから終わりまで幅広く携わっています。
また、JICAグローバル・アジェンダというJICAの課題別事業構想のうち、水産分野の協力方針の策定も担当しています。
水産セクターだけでなく、ジェンダーや民間セクターなど他分野との意見交換を重ねながら、協力方針を策定しています。
業務で感じるやりがい:
世界各国のプロジェクト管理を担当しており、地域・国ごとに異なる水産分野の課題を知り、コンサルタント企業や先方政府と共に事業に取り組めることにやりがいを感じています。
特に、事業の新規形成を目的とした海外出張にて、漁業コミュニティの声を事業に反映し、先方政府と合意が得られた時には大きな達成感を感じました。
また、半年に一度、メンターの国際協力専門員及び上長との面談があり今後のキャリアを考える良い機会となっています。
私のポストは約1年半の本部業務経験後、専門家としての派遣が想定されています。これらの本部での経験は今後の専門家としてのキャリアに大きくプラスになると考えています。
法橋 華子さん
- 所属:地球環境部 防災グループ
- 職制:ジュニア専門員
キャリアパス
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現在の業務内容:
主にインドネシア、トルコ、中南米における防災・復興分野の技術プロジェクトを担当しています。JICA内外の関係機関と連携しながら、災害リスク削減、Build Back Betterの実現を目指しています。
具体的には地震観測・情報発信の改善、能力強化、災害情報管理、情報活用のプロジェクトを担当し、その実施管理等に携わっています。
また、トルコで2023年2月に発生した地震からの復興に関するプロジェクトも担当し、実際に現地に出張し復興の様子を視察したり、関係者と一緒に議論しながらトルコのよりよい復興に貢献できるよう取り組んでいます。
業務で感じるやりがい:
日本はこれまで様々な災害が起きる中でその度に様々な課題と向き合い、災害に強い社会へと復興をとげ、防災、復興に関する知見が蓄積されています。
今世界では、気候変動や都市化に伴い災害リスクが増大している地域が多くあり、そういった国々に対し、これまで日本が培ってきた知見を活かしながら災害リスク削減に貢献できるこの仕事にやりがいを感じています。
また、プロジェクトの実施にあたっては日本の防災・復興分野の専門家や、相手国関係機関、その他様々な関係者とコミュニケーションを取りながら一丸となって業務を行えることも大きな魅力のひとつです。