協力隊終了後起業したのは、ベナンの人たちの笑顔を守るため。

川口 莉穂さん

民間企業 株式会社シェリーココ 20代

  • 民間企業
  • 援助アプローチ/戦略/手法
  • キャリア年表

    大学学部生

    2009~2013年

    総合政策学部でソーシャルイノベーション、子どもの心理学を学ぶ。

    海外協力隊

    2014~2016年

    青少年活動の隊員としてベナンの小学校や幼稚園で、保健衛生問題解決に向けた活動を行う。

    株式会社シェリーココ

    2015年~現在

    ベナンの仕事がない人たちと共にアフリカ布を使ったものづくりを行う。

    インタビュー

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    高校2年生のとき、タイの田舎町に交換留学に行ったことです。当時の私には特に将来の夢はなく、タイ留学も家族の勧めがあったため決めただけでした。しかし、当時16歳の私にはすべての環境が衝撃的で、現地の友人の質素な暮らしぶりや、私と同世代の女の子たちが客引きをする姿をみて、途上国の抱える社会問題に目が向くようになりました。

    帰国後は途上国問題の中でも、ある映画をきっかけに「児童売春」についてより関心が強まり、大学入試の面接でも「児童売春を解決したい」という話をしました。大学在学中に東日本大震災があり、何度も東北にボランティアで足を運びましたが、それでも私は途上国に対する関心の方が強いままでした。

    現在の業務を、どのように選ばれましたか? これまでのキャリアの積み方、キャリア選択における軸や考え方をお聞かせください。

    大学在学中の就職活動では、興味関心が「国際協力・途上国支援」からぶれることはなく、希望していた就職先はJICAでした。しかしJICAは不採用になり、他の会社で妥協したくなかった私はその時点で就職活動を辞めました。

    就職という道ではなく違う道で夢を追い続けることを決め、大学卒業後はフリーターをしながら費用を貯め留学をする予定でした。そんな中ふと海外協力隊の存在を思い出し受験をしたのです。2年間現場経験を積むことができる海外協力隊はとても魅力的でした。決まった派遣先はベナン。青少年活動という職種で、学校保健活動に従事していました。そして、そのベナンのあるシングルマザーとの出会いがアフリカ布のものづくりをするきっかけとなりました。

    実はもともと起業することは考えていませんでした。生活に困っていたシングルマザーの手助けのために協力隊の任期中に始めた事業でしたが、任期終了後、一緒に始めた事業を放って帰るわけにはいかず起業を決意しました。経営のことなど右も左も分からない状態で、売上のことも含め今も不安は尽きませんが、彼女たちの笑顔を見守り続けたい一心で前に進んでいます。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    私たちは、ベナンの職人がアフリカ布を使ったアイテムを製作し日本で販売しています。私自身は年に3回ほど、期間でいうと半年弱ベナンに居るのですが、現地では布の選定、商品開発、複数あるアトリエに所属する職人たちのマネジメント、出来上がった商品の検品などをしています。日本では営業、販売をしています。社員は一人しかいないので、基本的には全て自身で担っています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    共に前に進んでいく仲間の存在が、私にとっての仕事のモチベーションであり魅力です。前の私は「途上国の問題を解決したい」といった大きな夢がありました。けれど、ベナンに来て現地に入り込めば入り込むほど、その思いは形を変えていきました。私が出会った現地の人々は、日々の生活を懸命に送っています。経済的に裕福ではない人も、困った人がいればすぐ手を差し伸べる。赤の他人でもお金に困っている人がいれば、自分が借金をしてまで用立ててあげる。私はこうしたベナンの人々の姿勢が大好きで、ベナンのパートナーや職人との関係を大切にしたいと思っています。彼女たちがいるからこそ、シェリーココも前を向いて進んでいけるのです。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    今後は雇用する職人の数を少しでも増やし、そして日本での認知度ももっとあげていきたいと考えています。ただ、いきなり急いで会社を大きくするつもりはありません。

    実は一度、実店舗を持つことを目指して生産量を増やしたことがあります。ところが、待っていたのは非常に忙しい毎日で、気がつくと私もパートナーも仕事量のキャパシティを超え、精神的余裕を失ってしまいました。職人たちにも、長時間の作業をさせてしまうことになり…そのとき、「これは自分が目指していたものとは違う」と感じて一旦計画を白紙に戻したのです。シェリーココの事業はベナンにいる人たちの日々の生活や、自立を支援するためのものであって、無理に会社を大きくすることが目的ではない。だから、店舗を持つのはもう少し先でいいと決めました。

    現在は、布製品以外のものを製作しようと、シェリーココオリジナルの柄を作っています。既存のアフリカ布では作ることのできなかった商品を増やしお客様の間口を広げることで、幅広い客層にアプローチしていきたいと考えています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    もともとJICA職員を目指していた私が今こうやって泥臭い活動をしています。もし職員になっていたら…続いていなかったかもしれません。「JICAは遠い先を見通して大きな事業を行なっているけど、シェリーココは近い未来を見ながら毎日を積み重ねている。見ているところは違うけど、結果としては同じ場所につながっているんだよ」とJICA職員の友人が言ってくれたことがあります。JICAのような大きな組織が入り込めない部分を私たちのような小さな企業が担っていけるのだと思います。
    もしこれを読んでいる方が私のように泥臭い活動の方が合うのでしたら、とことん現地に入り込み、現地に寄り添った国際協力をしてほしいなと思います。

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