円滑な事業実施の肝は、コミュニケーションと柔軟性のある行動力。

佐々木 慶子さん

国際協力機構(JICA) 独立行政法人 国際協力機構(JICA) 40代

  • JICA 技術協力プロジェクト専門家(業務調整)
  • 教育
  • キャリア年表

    埼玉大学

    1995~1999年

    教育学部小学校教員養成課程

    アリゾナ大学修士課程

    2004~2006年

    教育心理学

    理化学研究所

    2006~2010年

    大森素形材工学研究室アシスタント

    JICA海外協力隊

    2011~2013年

    マーシャル諸島共和国アルノ諸島ウリエンにて教諭ボランティア(小学校~中学校)

    JICA人間開発部

    2014~2019年

    専門嘱託として高等教育チームにて大型留学生案件、技術教育プロジェクト、無償案件を担当

    技術協力プロジェクト専門家(業務調整)

    2019年~現在

    「カンボジア産業開発のための工学教育研究強化プロジェクト」業務調整

    無制限の活動が無限の可能性を生むと信じて。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    恥ずかしいことに社会人まで”国際協力”を意識したことがなかったのですが、幼少期に見たアフリカなど開発途上国での飢餓や貧困の様子はずっと心に残っており、「全ての子たちが安心で安全な教育を受けられる世界を作る」ことがいつしか夢の一つになっていました。2000年代にカンボジアへ旅行した際、「日本は看板やPRにお金をかけず、その分本当に支援を必要としている現地の国民に支援を届ける。これこそが本当の支援だ」と同行したアメリカ人の友人から言われ衝撃を受け、さらに自国である日本が行っている国際協力を全く知らずにいたことを恥じた経験が、強く国際協力を意識するきっかけでした。しかし実際に行動に移すまでにはそれから10年かかりました。

    国際協力の最初のステップと、JICA専門家(業務調整)を目指したきっかけは何でしたか?

    ふと目に留まった「海外協力隊募集」の電車中吊り広告がきっかけです。長い間、「全世界の子どもたちへの教育普及はどうすればいいのか」を自問すると共に、経験値0の自分にできることはないと思い込んでいましたが、「ボランティア」という選択肢があることに気づいた瞬間でした。そして、協力隊の経験を通して、改めて教育の大切さを実感したため、帰国後にJICAの専門嘱託となりました。実は、以前は教員教育の支援に興味があり、「教員教育=高等教育」という勘違いからJICA人間開発部高等教育チームに応募・着任しましたが、同チームでの業務を経験する中で、「国の発展には高等教育の発展が不可欠だ」ということに気づかされ、高等教育支援の奥深さと重要性に魅了され続けたことから、現場で業務に携わりたい思いが強くなり、業務調整を目指すことになりました。

    JICA専門家(業務調整)の業務と経験について教えてください。

    現プロジェクトが初のJICA専門家経験です。さらに、現地の日本人専門家が私一人(チーフはシャトル型派遣)という、技術協力プロジェクトでは比較的まれな体制のため、「私の業務のやり方は正しいのか、もっと何かできるのではないか」と日々葛藤していますが、「JICA専門家の業務に正解はない」と考えています。一人では限界がありますが、本部諸先輩方からの教えもあって、「できることはなんでもやる」精神で邁進しています。チーフ、現地スタッフ、JICA本部、JICA現地事務所のサポートが不可欠であるため、常に関係者とのタイムリーな情報共有および共通理解を持つことを意識しています。
    また、現地に日本人専門家がいないことを逆手に取り(笑)、CP(カウンターパート)との時間を充分に取り信頼関係を醸成することが、各種活動をスムーズにすると実感しています。

    JICA専門家(業務調整)のやりがいや魅力についてお聞かせください。

    やりがいや魅力は一言ではお伝えできませんが、現地着任後は、それまで持っていた潜在意識や固定概念を日々覆されながら「真に望ましいプロジェクト活動・支援」を、現場にてCPと共に模索し、軌道修正しながら成果を出していくことが、プロジェクトの醍醐味の一つだと思っています。そしてプロジェクト成功の要素である信頼関係構築は、現場で業務を行なうJICA専門家であるからこそなし得るものです。また、専門家はJICA(日本)と相手国との橋渡し役であり、全関係者の足並みを揃え、皆が同じ方向を見て目標に進んでいく活動を仕掛けていくことができるという、大変やりがいのある職種です。

    ご自身の経験も踏まえ、JICA専門家(業務調整)に求められることは何でしょうか?

    必要なのは、「表から見えないものを見る・知る探究心、行動力、柔軟性、高いコミュニケーション能力」です。TOR(タームズ・オブ・レファレンス)に書かれている業務調整として重要な業務である「円滑なプロジェクト遂行のための確実な会計管理と関係者間の調整」は「最低限の業務」です。言い換えれば、業務調整含めJICA専門家の業務に限界はなく、TOR、PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)に明記されている活動は確実に行いつつ、いかに枠外の活動を広げ、プロジェクトに紐付けていくかが、サステイナブルで高インパクトな成果を実現すると信じています。日本側の意図および相手国が真に必要としている支援を理解した上で、「枠(PDM)にとらわれない活動」を行うことが重要だと考えます。

    現在の業務では、どのようなことを担当されていますか? またこれまでのご経験で活かされている面などお聞かせください。

    社会・産業発展の最重要課題である人材育成を担う高等教育分野のプロジェクトにて、日本型工学研究教育の導入、産学連携促進、大学間連携促進を柱とした産業人材育成プロジェクトの業務調整を行なっています。チーフや関係者と日々連携しながら「担当業務」に縛られることなく、CPの発展や産業人材育成に貢献できる可能性のある活動はどんなことでも行うよう心がけています。また、本部での経験によりJICAの立場や期待されていることなどを理解できたことは大きく、JICA経験が少ない専門家の皆さんに私の経験や理解をお伝えすることを自分の裏ミッションと位置づけ、他プロジェクトとの連携に繋げるようにしています。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    自分の可能性を自分で決めず、思い切ってやりたいことを始めてみてください。国際協力の活動は、めまぐるしく変化する世界を前にして立ち止まることをせず、いつも前を向いて皆で希望を実現していく分野です。壁にぶつかることは当たり前、さらに自分の経験や知識がことごとく役に立たないこともありますが、逆を言うと、常に新たな世界を知り、勉強し挑戦することで、いつまでも現状に「満足」することなく自分が成長し続けられると思います。そして、活動の中で自分に向けられる現地の方の「笑顔」は、最上級の糧です。世界に一人でも多くの方の笑顔を増やすことを目指し、一緒に活動しませんか!

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