現場の動きを止めない!バックオフィスを通じた国際協力。

及川 美穂さん

国際協力NGO/NPO 一般財団法人ササカワ・アフリカ財団 40代

  • NPO/NGO スタッフ
  • 農業開発/農村開発
  • キャリア年表

    大学学部生

    1996~2000年

    文学部で哲学・思想を専攻。

    民間企業

    2000~2004年

    文具メーカーでマーケティングに従事。

    海外協力隊

    2005~2007年

    エチオピア(長期)とフィジー(短期)で市場調査隊員として活動。

    大学院生

    2008~2010年

    国内大学院で国際開発学を専攻(JICA国内長期研修)。ケニアのUNIDOでインターンを経験。

    JICAジュニア専門員

    2010~2013年

    産業開発部およびエチオピア事務所(企画調査員)で民間セクター開発に従事。

    JICA特別嘱託

    2013~2014年

    産業開発・公共政策部で民間セクター開発に従事。

    JICA技術協力専門家

    2015~2016年

    産業開発分野の技術協力プロジェクト(キルギスおよびインド)で業務調整/マーケティングを担当。

    NGO職員

    2017年~現在

    アフリカの農業開発を行うNGOで、多岐にわたる業務に従事。

    出会いの中から導かれたキャリア。次世代へのバトンを繋ぐ。

    国際協力に興味をもったきっかけは何ですか?

    振り返ってみると、小学生時代に父の仕事でベルギーに住んでいた時の出来事の数々が、国際協力に関心を抱くきっかけになったように思います。例えば、現地のガールスカウトでは、フランス語が全く分からない唯一の外国人である私にも、皆さんがとてもよくして下さいました。また、ベルギー人のご夫婦が肌の色の異なる外国人の養子を連れて歩く様子をしばしば見る機会がありました。幼いながらに、私も国籍や肌の色に関係なく、誰かの役に立てるようになりたいと思うようになりました。さらに、当時の日本人学校の先生が、自身の海外協力隊での経験をしばしばお話ししてくださったことも、途上国や国際協力に関心を抱いたきっかけの一つです。

    これまでにどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

    大学時代にはタイの農村開発のボランティアに参加し、国際協力への興味を強めていきました。しかし語学力も専門性もなかったため、国際協力分野での就職は諦め、日本のメーカーに就職し、マーケティング部で約5年働きました。仕事は面白く、やりがいもあったのですが、やはり国際協力への夢を諦めきれず、思い切って退職し、海外協力隊に参加しました。そこでは、現地の人々と「共に成長する」という喜びを感じました。その経験を経て、将来的に国際協力(特に地域振興、農村開発)に関わりたいという意志を固め、大学院で国際開発学を学びました。その後、JICAのジュニア専門員、特別嘱託、プロジェクト専門家を経て、現職に就きました。

    現在の業務について、具体的にどのようなことを担当されていますか?

    私が勤務するササカワ・アフリカ財団は、アフリカの農業開発を行うNGOで、アフリカ4か国に事務所があり、約160名の現地スタッフがいます。その現地スタッフが中心となり、農業普及員や農家さんに技術指導を行っています。コロナ禍において外国人のアフリカ渡航が難しかった時期も、動きを止めずに活動を続けることができました。私は東京本部に所属し、組織全体の総務、人事、広報をチームで担当しています。業務は、組織運営、他組織とのパートナーシップ構築、人事制度構築、安全情報収集、国際会議でのサイドイベント実施など多岐にわたります。年2~3回はアフリカに出張し、現地スタッフとの意見交換やプロジェクトの進捗確認も行っています。

    現在の業務でのやりがいや仕事の魅力は何でしょうか?

    途上国では、計画が想定通りに進まないことは珍しくありません。JICAのプロジェクトに携わっていた際に実感したのですが、円滑なプロジェクト実施のためには、技術分野の専門家と共に、活動環境をファシリテートする存在も不可欠です。私の現職での仕事はまさに、現場のスタッフが活動しやすく、より良い成果を生み出すことができる環境を、総務・人事・広報の立場から作り出すことです。そのためには事業への理解も不可欠ですので、プロジェクト情報のキャッチアップにも努めています。現場への関わりは間接的で、地味なバックオフィス業務ですが、「現場がスムーズに動くこと」をやりがいに、「縁の下の力持ち」を目指して取り組んでいます。

    今後の目標やキャリアプランをお聞かせください。

    私はベルギー時代を含め、キャリアの各ステップで、素晴らしい方々との出会いに恵まれ、沢山のことを教えていただきました。また、JICAなどの若手育成スキームもフル活用させていただきました。これからは私がしてもらったように、次の世代の誰かに、人生のきっかけや未来への種を届けられたらと思っています。現職では、広報に力を入れると共に、国際協力に関わるきっかけを提供したいと思い、若手の積極採用を行っています。今後はインターン制度や国際交流の場も提供していきたいと思います。また、もともと私は地域振興や農村開発に興味があり国際協力に進みましたので、現職もしくは個人として、同分野に関わっていくことが目標です。

    国際協力の道を目指す方に向けてのメッセージをお願いします。

    多くの学生や社会人の方々から「国際協力に興味はあるけれど、専門性がないから足を踏み出せない」という相談を頂きます。私もそう思って諦めていたのですが、日本企業での職場経験を頼りに海外協力隊に参加し、大学院進学、ジュニア専門員、プロジェクト専門家と、その歩みは決して早くはないものの、一歩一歩進んできました。その過程で、バックオフィスが向いていると気づき、現職に至りました。学生時代から明確なビジョンや目標を持つことができればベストですが、漠然としていたとしても、勇気をもって踏み出してみると、人々との出会いや経験を通じて、国際協力の業務の幅広さに気づくと共に、自分の強みも見えてくるかもしれません!

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