国際キャリアフォーラム (オンライン開催)

イベントレポート

本イベントは「国際協力業界で考えるワークライフバランス~ライフイベントとキャリア形成の両立~」をテーマに、国際協力業界において、「海外赴任」と「結婚・妊娠・出産・育児」を両立してきた以下3名にご登壇いただきご経験を伺うことで国際協力のキャリア構築とワークライフバランスの両立について考えました。


■横浜国立大学都市科学部長・大学院都市イノベーション研究院教授 藤掛 洋子 氏


<略歴>

東京家政学院大学・大学院准教授を経て現在に至る。専門分野は、文化人類学、開発人類学、ジェンダーと開発、(博士:学術)。社会的弱者のエンパワーメントをテーマにパラグアイ農村女性や子ども、スラムの若者たちとともにアクション・リサーチを行っている。JICA草の根技術協力事業:パラグアイ農村女性生活改善プロジェクト他プロジェクトマネージャー。認定・特定非営利活動法人ミタイ・ミタクニャイ子ども基金理事長。


国際協力分野:JOCV青年海外協力隊パラグアイ農牧省農業普及局(家政隊員)、JICA専門家・調査団:パラグアイ・チュニジア・ペルー・グアテマラ他。民間企業と連携:バングラディシュ、外務省ODA有識者評価他。JICA/JOCV技術顧問(家政・生活改善)。


JICA理事長表彰、パラグアイ上院議員・下院議員表彰などパラグアイにおける国際協力活動に対する表彰多数。2021年度版Newsweek Japan特集『世界が尊敬する日本人100~国境を超えて世界を動かす逸材たち~』の一人に選出。長男と夫と横浜在住。

■特定非営利活動法人エイズ孤児支援NGO・PLAS 事務局長理事 小島 美緒 氏


<略歴>

2006年国際基督教大学教養学部卒業。大学在学中に設立間もないPLASに出会い、エイズ孤児のための学校運営プロジェクトに携わるため卒業後にボランティアとしてウガンダに3か月渡航。帰国後はJPモルガン証券株式会社で3年間勤務。社内での社会貢献活動に関わりながら、社外活動としてPLASのボランティア運営スタッフとして活動を続ける。2010年、第一子出産とともにPLASに入職。現在は事務局長理事として、代表とともに経営企画・財務・人事・国内事業など幅広く携わる。


米国フィッシュファミリー財団が日本社会に変える原動力となる日本人女性を選抜するプログラム「Japanese Women’s Leadership Initiative」2016年フェロー。プライベートでは11歳と6歳の2人の男の子を育てながら働く。

■JICAガーナ事務所/企画調査員(ボランティア事業)和田 仁智 氏


<略歴>

1985年生まれ。佐賀県佐賀市出身。佐賀大学文化教育学部(現:教育学部)卒業後、旅行会社営業部に勤務(2年5か月)。退職後、2012年から青年海外協力隊としてケニア共和国へ赴任(2年5か月)。帰国後、佐賀市の民間企業(衣類加工)に勤務(1年)するが、国際協力に関わる仕事がしたいという思いが強くなり退職。2016年に結婚。2017年から佐賀県の国際協力推進員(JICAデスク佐賀)として勤務(3年)。2018年に第1子誕生。夫婦共働きのため育児・家事を分担。推進員任期満了後は、主夫として育児・家事に従事する傍ら、フリーランスとして国際交流・国際協力関連活動を継続。2021年3月から現職、ガーナ共和国へ赴任し、結婚後初の単身赴任中。3歳男児の父。

◆講演:国際協力業界で考えるワークライフバランス◆

イベント冒頭では【国際協力業界で考えるワークライフバランス】をテーマに、国際協力業界の全体像をとらえ、その中でのワークライフバランスについて、藤掛氏にご講演いただきました。


藤掛氏

「『困っている、助けてください』と釣り堀に投げてみて呼びかけに答えてくれる人を待つ、人類学者の小川さやかさんはこれを『釣り堀型コミュニティ』と呼んでいます。経済効率や合理性ではなく、困っている人は声を上げ、応答できる人は手を差し伸べる。そうすることでコミュニティ、あるいは自分の生活が回っていくということをアフリカの事例から表現されました。これからの時代はそうした共同の精神、価値観が大切になってくると思います。

国際協力に携わると、競争原理や資本主義システムとは異なる関係性の中で色んな方に出会うことになります。子どもを職場に連れて来たりとか、家政婦の方が家に行って子育てをしていたりとか。日本とは違う異文化の中で『あ、こうやってコミュニティの中で支え合って生きているんだ』と学ぶことがたくさんあります。これは国際協力に携わる人間の特権なのではと感じます。独自のセーフティネットを作って、皆さんなりのワークライフバランスを築いていただければと思っています。」

◆テーマ別トークセッション◆

続いて【テーマ別トークセッション】では、ライフイベントとキャリア形成に関するいくつかのテーマに沿って、小島美緒氏、和田仁智氏を交えて、3名それぞれの視点や経験談についてトークセッションを行いました。


小島氏

「国際協力のキャリアを諦めざるを得なかった人たちの背景に、周囲の理解が得られなかったという話がありました。モチベーションも能力もあって、将来が期待できる人たちが離れていってしまうのはすごく残念だと思うんです。いくら制度やツールが整っていたとしても、周りの人たちがその人のライフステージを尊重できない組織が一番残念だと思うので、私たちの職場環境としてはライフステージやバックグラウンド、価値観などを尊重しあって、安心して働ける職場環境を築いていきたいですね。例えば、介護や自分自身の健康面などで様々な壁にぶつかる時期もあると思いますが、そんな時も不安にならずに、国際協力の仕事を続けていくことができる職場環境をこれからも作り続けていきたいと思っています。」


和田氏

(「海外赴任」と「結婚・妊娠・出産・育児」について) すべてがうまくいっているかどうかと聞かれたら、まだまだ課題が多いんじゃないかなと私は感じています。でも、より良い状況に変えていけるように、互いに思いながら仕事をするのは大事だと思いますし、結果が変わらなくても、『これだけやったのに変わらなかったらしょうがないか』といった納得感など、自分の考え方や捉え方を変えることで、『今、置かれている状況も悪いことばかりじゃない』とポジティブに捉えられるのではないかと思います。いろいろな人の話や働き方を聞いて、それを参考にして取り組んでいくことで、結果的に柔軟な考えを持った人が増えて、職場の環境が変わっていくのではないでしょうか。


藤掛氏

「途上国の方たちが過ごしているようなゆっくりとした時間の流れになるように、日本社会全体がトーンダウンしても良いのかなという気もします。私も働きながら子育てをしている時に、『飛行機が低空飛行してるみたいな感じで落ちない状態でいれば良いんだよ』ということを教えられたんですよね。仕事も同じだと思いますが、加速して飛んでいるジェット機のようにならなくても、子育てをしている時は飛行機が落ちないように低空飛行でやっていけばいいんですよね。ワークシェアリングしたり、時には就業時間を減らしたり、正規雇用に戻ったり…。そんな緩やかな仕組みを、この国際協力の業界で築いていくことによって未来が開けてくると思います。みんなでシェアして、より良い社会をつくる方向にシフトしていきたいですね。」


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