国際キャリアフォーラム (オンライン開催)

イベントレポート

本イベントは「国際協力におけるDXの取組と人材」をテーマに、DX分野で活躍しているアクター3名にご登壇いただき、現在に至るまでのキャリアパス、仕事の魅力、国際協力へのキャリアチェンジ、その後のキャリア構築や、JICAを含む国際協力業界のDXの現状、今後の方向性、事業参画などについてお話ししていただきました。

ファシリテーター
・国際協力機構 ガバナンス・平和構築部 STI・DX室 山中 敦之 国際協力専門員

登壇者
・国際電気通信連合(ITU) アジア太平洋地域事務所 地域事務所長 奥田 敦子 氏
・株式会社モンスターラボホールディングス 代表取締役CEO 鮄川 宏樹 氏

冒頭の概説では【国際協力におけるDXの取組と人材】についてこれまでの歴史や最新状況の解説を山中国際協力専門員に、続けて「私のキャリアパス」と題して奥田氏と鮄川氏からご講演いただきました。


◆概説:国際協力におけるDXの取組と人材◆

山中国際協力専門員:

「DX分野の国際協力の意義・概観として、情報通信技術の発展により新しい課題解決・価値創造が進み、特にこの2~3年は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を契機に、デジタル化がより急速に進展しています。過去ICTと開発の積極的な動きが世界中でありましたが、2005年前後を境に10年弱低迷しました。その後、民間企業による通信インフラ構築の加速や安価で高性能な通信・デジタル機器の普及により、それまで以上にデジタル技術の変革の可能性が高まってきています。現在では、開発セクターでもデジタル技術をどのように使って開発に導いていくのか機運が高まっています。

国際協力ではさまざまな職種がありますが、国際協力で必要とされるDX人材のひとつとして、デジタル技術の専門家・人材(ITアーキテクトやネットワークエンジニア、情報セキュリティ専門家など)の需要が非常に高いです。また、デジタル技術と社会・経済・統治の課題をつなげ課題解決につなげる橋渡しを行うコーディネーター(デジタル系上級コンサルタントやDXが分かる領域の専門家、プロジェクトコーディネーター)も今後ますます需要が高まっていくと思います。」

◆私のキャリアパス♦
国際機関でのキャリアパス、やりがい(奥田敦子氏)

奥田氏:

「私は1997年に国連開発機関(UNDP)開発政策局(ニューヨーク)に入局しました。しかし、実際に開発途上国で仕事がしたいと思い、2000年からアジア、アフリカ、アメリカなど世界各地で仕事をすることになりました。幸い、場所が変わっても仕事内容はあまり変わらず、ICT技術を開発に使い、貧困撲滅やSDGの解決にどう貢献できるかという仕事に携わっています。私の周りの国連職員には、明確なキャリアプランを持って入職した人は実は少ないです。フレキシブルに色々な入り口から業界に入ってみても良いと思います。国連には各国から人が集まるので、色々な考え方の人と仕事をします。私はその光景がとても素晴らしいと感じ、この仕事を続けています。ICT技術があれば、仕事がない人たちや女性、子どもにも機会を与えることができる、それが自分の信条となり、実現する場になりました。『他の国に興味がある』、『開発を通して何かをしてあげたい』という信条を持っている人には向いている仕事だと思います。」

◆私のキャリアパス♦
DX事業を通じて世界に貢献する(鮄川宏樹氏)

鮄川氏:

「私はもともと中学高校の数学教師になろうと思っていました。しかし、幅広い世界を知り社会経験を積んでからのほうが良いだろうと青年海外協力隊について調べたことがあります。その時、気持ちだけでなく、何かしら専門性がないと世界には貢献できないことを知りました。なので、まずは世界に通用するスキルを身につけようと新卒で大手コンサルティングファームに就職しました。その後、ベンチャー企業で経験を積み、2006年に株式会社モンスター・ラボ(現モンスターラボ)を立ち上げました。世の中には多様な才能・人材がいて、その人たちをエンパワーしていきたいという想いが根底にあったので、多様性を活かし、テクノロジーで世界を変えることを経営理念に事業を展開してきました。グローバルソーシング事業は、新興国に雇用を創出し、リモートで日本に生産力を提供するスキームです。ITの仕事は例え紛争地域であってもできます。世界のどこかで誰かのために役に立てる仕事、民間だからできることでよりよい世界にしたいと思っています。」

◆パネルディスカッション第一部◆

続いてパネルディスカッション第一部では、【途上国でDXに取り組むやりがい】をテーマに山中国際協力専門員(ファシリテーター)、奥田氏、鮄川氏よりそれぞれの視点や経験談についてお話いただきました。

奥田氏:

「世界中の人々と仕事をする中で、お互いの文化を尊重し合うこと、異文化に興味があることが大切だと思っています。国連には国連の文化がありますが、配属になる地域によって国連職員(スタッフ)や組織文化に特色があります。例えばアフリカならハキハキとモノが言えたり、中東であれば口調が強くハラハラすることがあっても実は普通の会話だったりします。それに慣れること、他の地域から来た人がそれを良いと思うのか、客観視することが大切だと思います。言語は日本人職員にとってハードルだと思います。特にヨーロッパ(ジュネーブやローマ)ではフランス語も求められるので、英語に加えてスペイン語やフランス語ができた方が有利ですね。途上国で仕事をしていても、その本質は変わりません。ただ、仕事をするにあたって、家族の身の安全を考えないといけないことがあります。そういった部分も理解してくれる家族を持つことは大切だと思います。」

鮄川氏:

「多様な価値観を持つ人たちを理解することは大切ですが、国籍やバックグラウンドが違うといっても同じ人間ですし、同じ日本人であっても、例えば営業と開発で意見が違う時もあります。そうした意味で、どのような関係性でも実際に顔を付き合せる人間臭いコミュニケーションの機会は大切だと思っています。語学力については、私は留学の経験もなければ海外に住んだこともなかったので、得意ではありませんでした。しかし、ビジネスで場数を踏んで習得してきました。恐れず、話さないといけない環境に身を置けば自然と話せるようになると思います。何かをやりながら壁を壊して成長していく、それに終わりはないと考えています。途上国で事業を始めるにあたって、どういうスキームを作ればビジネスとして成り立つのか、会社や人材に必要以上にリスクを負わせずにできるのか、ということは考えます。成し遂げたいことを決め、他にできる人がいるのであれば巻き込んで一緒にやることも大切だと思います。」

この後、山中国際協力専門員、奥田氏、鮄川氏に加えて、JICA ガバナンス・平和構築部STI・DX室 宮田真弓副室長 を加えたパネルディスカッション第二部を実施しました。参加者様からのご質問にお答えし、「国際協力とDX」についてお話ししていただきました。


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