社会人2年目・広報職員の体験談 「世界の民族衣装展」の裏側とは!?


皆さんが思い浮かべる国際協力とは少し違う、「ちょっと変わった国際協力」の裏側を知るべく、JICAの広報担当、笹川さんにインタビュー!どんなきっかけで「肌で感じる、世界の民族衣装展」を実施したのか?そもそも笹川さんはどのようにして国際協力の世界に入ったのか?ということまで、イベントの裏側にある、笹川さんの思いに迫ります。


(前回の記事)「肌で感じる、世界の民族衣装展」に潜入!『着て、知って、国際協力!「世界の民族衣装展」から見える世界』はこちら


JICA広報部 地球ひろば推進課
笹川 千晶さん

  • 5歳の時、タイで物乞いの子どもに出会ったことをきっかけに、開発途上国の子どもの問題に関心を持つ。
  • 高校時代には、フィリピンでボランティアを経験。ストレートチルドレンとの交流や開発途上国の現実を知り、国際協力を志す。上智大学・大学院では国際教育開発学を専攻し、難民の教育について研究を行う。在学中もフィリピン留学、国連や開発コンサルタント、NGOでのインターンシップを経験する。
  • 大学院卒業後はJICAに入構し、広報部に配属。イベントや展示などの組織広報から、将来の国際協力人材育成のための教育支援事業まで、幅広い業務に携わっている。

民族衣装が国際協力に繋がるの?展示を実施したきっかけ

展示をご紹介してくださる笹川さん

――本日はよろしくお願いいたします!まず、笹川さんが普段どのように働いているのか教えてください。

普段は市ヶ谷にあるJICAのオフィスビルで働いています。そこには、開発途上国の現状や国際協力の実情など、「見て・聞いて・さわって」学べる体験型施設「JICA地球ひろば」があり、JICA地球ひろばに関連したイベントの企画運営や情報発信などの業務も行っています。




――笹川さんは、「JICA 地球ひろば」で働くこともあるのですか?

いえ、実は「地球ひろば」には、「地球案内人」というJICA海外協力隊を経験したスタッフが常駐していて、来館者への展示案内などは地球案内人さんが対応しています。 地球ひろばのメインターゲットは主に小学生から大学生で、社会科見学など学校単位で来館される方が多いです。そこで、引率の先生から事前・事後学習などについての相談を受けることもあります。

今回のイベントは、より多くの人たちに世界の課題や国際協力について楽しみながら学んでもらうため、市ヶ谷から飛び出した、“地球ひろばの出張展示”でもあるんです。



――「肌で感じる、世界の民族衣装展ー着て、撮って、世界を学ぶ写真館ー」を実施するきっかけは何だったのですか?

昨年秋開催の「グローバルフェスタJAPAN 2023」という、大規模な国際協力イベントでブースを出展しました。実はその展示が、今回の展示の前身です。
民族衣装を着て写真が撮れるというコンセプトは同じでしたが、用意した衣装も30着程度とコンパクトなものでした。でも予想以上に大盛況で、来場者の皆様からも好評で。今回、より広い会場を借りて大々的に実施することになりました。

「国際協力」や「世界の課題」と聞くと、敷居が高そう、どうやって参加したらいいのかわからないと思われる方も多いかと思います。そういったご意見は、特に学生さんからよく頂きます。
そこで、私たちの身近な衣食住をテーマに、国際協力のきっかけとなれるような展示を企画しました。普段馴染みのない世界の民芸品や民族衣装を、ただ見るだけでなく、実際に触れていただくことで世界に興味を持ってもらい、ひいては国際協力に興味をもってもらえたら、という思いが込められています。

色彩豊かで楽しい展示に、学びのヒントが満載!

――改めまして、今回のイベントはどのような構成になっていますか。

会場は大きく3つのエリアから構成されています。入ってすぐにあるのは「知るエリア」。アジア、中東、中南米、アフリカの4つの地域の文化や概況、衣装の特徴などを紹介しています。
衣装や楽器などの展示物はJICAの職員が現地で買ったものや、いただいたものなど、全て海外から来ています。 現地の伝統食の食品模型やアフリカ伝統の家のジオラマなども置いて、さまざまな角度から世界のことを知ってもらえるように工夫しました。


――「知るエリア」の先には撮影ブースと絵本のエリアがあるのですね。

はい、それぞれの地域のことを知ってもらったあとは、「着るエリア」で民族衣装を着て、写真を撮るもよし、「課題を学ぶ」エリアで、開発途上国に住んでいる子どもや若者の目線からその地域の課題を描いたストーリーブックを読むのもよしと、複数の楽しみ方を用意しました。

民族衣装には細かな刺繍や飾りがほどこされていてとても魅力的ですし、現地で食べられている食事もどれも美味しそうに感じると思います。しかし、世界には楽しくて良いところがたくさんある一方で、大変な状況の子どもたちがいるということも、また事実です。 実際に世界で存在している課題にも目を向け、自分には何ができるかを考えてほしいと強く思い、「課題を学ぶ」エリアを作りました。


課題を学ぶエリアの様子

課題を学ぶエリアの様子



――鋭い切り口の絵本だなと思いました…!どのように作られたのですか?

貧困や気候変動の影響に苦しむ人や、難民のエピソードなど…フィクションではありますが、すべて実際に存在している課題や事実に基づいたストーリーを制作しました。私の原体験に基づいているものもあります。どうしたら、これを手に取ってくれた人たちが、世界の課題をジブンゴトとして捉えられるのか…。色々な年齢層の方に共感していただけるよう、主人公の年齢設定なども工夫しました。
展示を通して感じたことや考えたことが、その次のアクションにつながり、そしてそれが持続していくような仕掛け作りを心がけました。


並べられた絵本たち

並べられた絵本たち

国際協力の道に進んだ原点は、わずか5歳の頃のギモンにあり

――ストーリーブックは笹川さんの原体験に基づいているものもあるとのことでした。笹川さんが国際協力の道に進んだきっかけについて、詳しく伺えますか?

5歳の時にタイで物乞いの子どもたちに出会ったことが最初のきっかけでした。旅行好きの両親に連れて行ってもらった旅行の最中、当時の自分と同い年くらいの姉弟が、「お金をちょうだい」と手を差し出してきて。裸足でボロボロの服を着た彼らの姿は自分とは対照的で、子どもながらにすごく驚いたことを今でも鮮明に覚えています。

「なんで、こんなことをしているのだろう?」「この子たちの親はどこにいるのだろう?」といった純粋な疑問で頭の中が一杯になりました。その時に浮かんだ疑問の答えを見つけたくて、国際協力への道を歩み始めたのです。そして、それが今の自分に繋がっているのだと思います。

――具体的に、国際協力への道に進もうと心を決めたのはいつ頃だったのですか?

高校生の頃です。大学のオープンキャンパスで、後にお世話になる教育学の教授の公開講座を聴講し『5歳のときに私が出会った、あの子どもたちを救うためには教育が最善だ!』と思ったのです。当時抱いた疑問の答えを見つけるヒントに出会った気がしました。

それともう一つ、海外ボランティアの経験も大きな出来事でした。初めて訪れたフィリピンの首都マニラでは、ストリートチルドレンの子どもたちと触れ合う機会がありました。その子どもたちも、私が5歳の時にタイで出会った子どもと、同じような境遇にいました。そしてその時に、これが自分の進むべき道なのだ、と直感的に感じました。とても不思議な感覚でしたが、何かが腑に落ちたように、自分の中で納得できたのです。

同時に、「私の名前、覚えている?」「次はいつ会えるの?」と懐いて寄ってきてくれた子どもたちに対して、笑顔で接する以外何もすることができない自分の無力さも痛感しました。その悔しさや無力感が、将来は国際協力の仕事について、自分にできることを探し続けたいという情熱と強い意志に繋がりました。


――大人になってから国際協力に興味を持つ人もいると思いますが、そういう人でも国際協力に参加できると思いますか?

もちろんです!大人になってから海外へ行った経験や、映画から受けた影響など、本当にさまざまなきっかけから国際協力業界に入る人がいます。必ずしも、現地に行って何かを体験しないといけないわけでもありません。

「思い」のほうが重要で、現地に対して自分が何をするか?何ができるか?というのはじっくり考えれば良いことだと思っています。もちろん、国際協力は綺麗なことばかりではなく、大変なこともあるのですが、それでもやりたい!という強い熱意を持っている人には、ぜひ飛び込んでもらいたい世界です。

笹川さんが大事にしている4つのこと

――お話をお聞かせいただきありがとうございます!最後に、これから国際協力の世界に挑戦したいと思っている皆さんに向けて、アドバイスをいただけないでしょうか?

学生さんとお話をするときに、必ず伝えている4つのメッセージがあります。

1つ目は、「自分の興味・関心に向かう」こと。何か一つでもこれだ!というものが見つかれば良いと思います。ただ、すぐには見つからないこともあるでしょう。そんな時は、色々なことに好奇心を持って挑戦してみてください。

2つ目は、「疑問に思うことに対して、敏感になる」こと。「なんでだろう、知りたいな」という頭と心の声に耳を傾けてみてください。同じ状況にいたとしても、何に対して疑問を抱くかは人それぞれです。しかし、それこそが、自分らしさであり、将来自分がやりたいことに繋がっていきます。疑問に思ったら、答えを探す行動をしてみてください。

3つ目は「自分に投資をする」こと。きっと日々色々なことに追われて忙しいと思います。それでも、時間やお金を自分のために使ってみてください。旅行やボランティアに参加したり、勉強会などに参加するのでも良いです。将来振り返った時に、自分の力や糧になってくれます。

4つ目は「想像力を持つ」こと。皆さんは、世界で起きていることは自分には関係ないと感じるでしょうか。今この瞬間にも、世界では数えきれない程たくさんのことが起きています。そこに住む人々がどのような生活をしているのか、どのような想いで生きているのか、他の国や日本にはどのような影響があるのかなど、想像力をもって考えてみてほしいのです。自分以外の人々に想いを馳せることができる想像力は、国際協力をする上でとても大切です。 そうやって得た力は、いつか遠い世界の誰かを救う力になるかもしれないのです。

まとめ

これからも国際協力の世界で働いていきたい!と断言してくれた笹川さん。今後は「教育×平和構築」をテーマに、紛争影響国や紛争後の社会で生きる子どもたちの教育に焦点を当てたキャリアを築いていきたいそうです。

世界の文化に触れ、知るというイベントの中に、こんなにも国際協力に関する学びが詰まっていたとは…!調べる、想像する、イベントに参加する、全てが国際協力に繋がっているのですね。 笹川さんのアドバイスも参考に、これからもさまざまなイベントに足を運んで、国際協力へのモチベーションを持ち続けていきたいと思います!

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