【捨てる教科書×国際協力】大学生が挑む“無理なく続く”新しいボランティアの形
「大学の教科書って高い……」学生なら誰もが一度は抱く等身大の悩みが、実は海の向こうの子どもたちの笑顔に繋がっているとしたら?
単なる「寄付」ではなく「中古教科書の販売利益」を途上国支援の原動力に変える学生団体「STUDY FOR TWO」。
その活動は全国30以上の大学へと拡大。国際協力を「日常の延長線上」から始めるリアルな仕組みと、その裏側にある学生たちの熱意に迫ります。
STUDY FOR TWO 茨城大学支部に所属。
社会学を幅広く学ぶ中で、特に国際開発や開発経済を専攻し、現在はアフリカのブルンジとルワンダについて研究中。その他、茨城大学の入試広報の活動にも携わっている。
STUDY FOR TWO 東京大学支部に所属。
来年から文化人類学を専攻予定。第二外国語としてイタリア語を履修し、春休みにはイタリアへの研修も予定している。その他、マンドリンサークルでの活動も行っている。
STUDY FOR TWO 東京女子大学に所属しながら、団体の広報も担当。
今回は取材サポートとして参加。
「お下がり」が世界を変える。大学生も子どもたちも地球も喜ぶ「三方よし」の仕組み
――使い終わった教科書を寄付してもらい、収益を支援のために使う。そしてSDGsにもつながるこの仕組みを初めて知ったとき、直感的にどう感じましたか?
大月さん:
それまでの私は、支援というのは「途上国の人だけにプラスの影響があるもの」という一方通行のイメージを持っていました。
でもこの仕組みは、日本の大学生にとっても教科書を安く買えるというメリットがありますし、同時に教科書の再利用によって廃棄物を減らせます。
支援する側とされる側の双方にメリットがあって、環境面にもポジティブな影響があるという点が、とても新しいと感じました。
白石さん:
私も「win-winなボランティア」という形に純粋にすごいなって。
途上国の支援どうしても自分から遠いことのように感じて身構えてしまいがちですよね。
しかし、この活動ならより身近な形で参加できるんだなと、イメージが変わりました。
――学生にとって、教科書を安く購入できることはどれほど助けになりますか?また、寄付する側にはどのようなメリットがありますか?
大月さん:
大体、定価の半額ほどの価格で販売しています。
私自身も利用したことがあるのですが、新学期は出費が重なるため、学生にとっては大きな助けになっています。
白石さん:
友達に「こうした活動をしていて、不要になった教科書を寄付してくれる人を探している」と伝えると、古い教科書の扱いに困っている学生から実際に寄付してもらえることもあります。
寄付してくれた相手から「助かったよ!」と言ってもらえることも多く、双方にとってメリットのある仕組みだと感じています。
東京大学支部での教科書販売の様子
――手放す・買う、どちらも当事者にとってメリットがある。簡単にボランティアに参加できる仕組みになっているのですね。
STUDY FOR TWOの仕組み
支援先も学生たちでリサーチ。勉強会からスタディツアーまで、教科書を売った先にある「国際協力」
――支援したお金がどのように役立っているか、自分たちで決めるプロセスもあると伺いました。
三浦さん:
私たちの団体は、全国の大学で回収や販売を行う「支部」と、それをまとめる「事務局」に分かれています。
事務局の中には「支援先調査チーム」という専門チームが編成されており、彼らが主導して支援先を厳密に選定しています。
大月さん:
支援するNPO団体や対象国、さらには「女子教育」や「識字教育」といったプログラムの内容まで、みんなで話し合って決めています。
単にお金を送って終わりではなく、どの国で、どんな教育の課題に力を届けるべきか。自分たちで調べ、いちばん良い形の支援方法を選んでいます。
小さくても“本来の国際協力の流れ”を学生自身が担っていることも、私たちの活動の大きな特徴です。
――組織としてしっかり役割分担されているのですね。実際に現地での手応えを感じる機会はありますか?
大月さん:
私はスタディツアーでスリランカの小学校を訪れ、授業の様子や図書館を見学しました。
一緒に「ドラえもん音頭」を踊って交流したのですが、子どもたちが本当に楽しそうに勉強している姿を直接見て、「私たちが日本で集めている教科書が、この笑顔に繋がっているんだな」と肌で感じることができました。
スタディツアーの様子
白石さん:
私はまだスタディツアーには参加できていませんが、支部のメンバーとともに途上国の現状を学ぶ勉強会を企画・実施しています。
日本にいながらも、どのように支援の実感を共有できるか、自分たちなりに工夫しながら取り組んでいます。
ボランティアの学生団体であっても、フレームワークを駆使する組織運営
――お話を伺っていると、まるで小さな会社を運営しているかのような、丁寧で先を見据えた取り組みだと感じました。全国に支部があるそうですが、それぞれが行っている活動を知る機会はあるのでしょうか?
大月さん:
年に2回、全国のメンバーが集まる合宿があります。
合宿係担当が議論のための「フレームワーク」を準備し、次の販売や回収に向けた戦略の大枠を考え、各支部に落とし込んでいきます。
2025年全国夏合宿での集合写真
三浦さん:
合宿では、抱えている課題感を共有しながら、「他の支部はどうやっているの?」というアイデアを聞き合い、「自分の支部ではどんなアプローチができるんだろう」と戦略を練る重要な場になっています。
――実際にそれぞれの支部で行った教科書回収を促す工夫や取り組みについて教えてください。
大月さん:
その時々で効果検証しながら、最適なやり方考えています。
東京女子大学で設置した回収BOX
白石さん:
私たち東大支部では、試験がどの教室で行われるかを細かく調べて、学生が一番通る時間帯や場所を狙って露店を出すようにしています(笑)
大月さん:
茨城大学支部では、近隣の企業と連携して回収ボックスを共同制作したこともあります。
その際は、企業の方が協賛という形で制作費を出してくださいました。
――地元企業との協力にマーケティング…。かなり本格的ですね!
白石さん:
でもだからといって、「参加のハードルが高いかも?」などと身構える必要はないと思っています。
「教科書を安く買いたい」「処分したい」という身近なきっかけだけで、誰でも国際協力の一翼を担えるのがこの活動の良さです。
本気で取り組む裏側には、学生らしい「サークル」のような軽やかさと、誰もが自分に合った距離感で参加できる「間口の広さ」が常にありますね。
編集者より
取材を通じて印象的だったのは、学生たちが国際協力を「特別な誰かが行う難しいもの」ではなく、自分の環境を活かした「日常の延長」として楽しんでいる姿でした。
「教科書が高い」という学生共通の悩みが解決することが、海の向こうの子どもたちへの支援に繋がっている。
“国際協力に関わってみたいけれど、一歩目が分からない”。
そんな学生にとって、学業やサークルと両立しながら無理なく社会貢献できるこの仕組みは、将来のキャリアを考えるきっかけにもつながっているのではないでしょうか。
後編は、「STUDY FOR TWO」に参加したきっかけや大学生活について深掘りします。