第126号 PARTNERコラム
アフリカに導かれた道~教師から医師へのキャリアチェンジ~(後編)

前編に続き、後編では私の2度目のキャリアのターニングポイントについてお話ししたいと思います。

夕飯の食材を買いに行く途中には病院があり、いつ見てもそこはたくさんの人で溢れかえっていました。
話を聞いてみると、それは医師不足によりできた診療を待つ人の列でした。中には何時間もかけて病院に来たにも関わらず、1日並んでも診てもらえず、何時間もかけて家路につく人もいるとのことでした。
毎日、現地の人のたくさんの優しさや助けに支えられていることを実感していた私は、「もし自分が医師だったら、目の前の人の役に立てるのに…」そんな悔しさを感じました。
そして、病院の前を通るたびに芽生えるこの気持ちが、「医師としてここにまた戻って恩返しがしたい」という思いに変わっていったのです。

もちろん、教育も医療もどちらも国にとって欠かせないもので、鶏と卵の関係のように順番をつけることは出来ないと考えています。
しかし、教育をするために赴いたこの地で、人々が求めているものとのギャップや教育を揺るがす存在、自分の無力さ、現地の人の温かさ、様々な現実を知り、色々な要素が重なって芽生えた思いだったと感じています。


初めて覗く顕微鏡の世界に心を弾ませる生徒たち。

初めて覗く顕微鏡の世界に心を弾ませる生徒たち。健康だからこそ得られる学び、そして生まれる笑顔なのだと痛感させられる毎日でした。


任期を終え、日本の教育現場に戻った私は、忙しくとも楽しく充実した毎日を過ごしていました。アフリカでの経験が、教員としての自信に繋がったことも実感しました。
しかし、充実した日々の中でも、心の中でくすぶるものがありました。それが、「医師としてまたアフリカに戻りたい」という思いでした。
刹那的かもしれない、そう思って閉じ込めていた思いは、日本で消えるどころか少しずつ大きくなり続けていたのです。

そして、協力隊の参加を決めた時と同様に、「ワクワクする!」という直感を信じ、担任をしていた生徒たちの卒業と同時に私も教員人生を卒業しました。
その後、必死に勉強に励み、掴んだ医師への第一歩。私は、2度目の大学生活で、医学の道を歩み始めました。

医学生である現在、アフリカに医師として戻ることを夢見つつ、医学を学べる幸せと感謝を感じながら日々勉学に励んでいます。
そして、今後医師としてどのような関わり方ができるかを模索するため、アフリカでの医療ボランティアに参加したり、NPO法人の現地スタッフとして活動させていただいたり、様々な可能性を探るために動き続けています。


NPO法人の活動として、ケニアのコロゴッチョスラムで行った小学生への授業の様子。

NPO法人の活動として、ケニアのコロゴッチョスラムで行った小学生への授業の様子。


これからも、「迷ったらワクワクする方を選ぶ!」そんな気持ちと感性を大切にしながら、人生100年時代、一度きりの人生を挑戦し続けて駆け抜けたいと思っています。
アフリカが導いてくれたこの道に恥じることのないよう、そして、「この選択をして良かった!」と胸を張れるよう、前向きに行動し続けていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


夏休みを利用し、医学生としてケニアの病院ボランティアに参加。

夏休みを利用し、医学生としてケニアの病院ボランティアに参加。



群馬大学 医学部医学科
富田 明澄

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