第4号 PARTNER便り JICA海外協力隊と私のキャリア 開発コンサルタント編(下)
国際協力の現場(協力隊経験を活かして)
三祐コンサルタンツ・梛野 愛さん
―帰国後は開発コンサルタントを目指して就職活動。いかがでしたか? 就職活動では、どのように協力隊経験をアピールできますか?
採用試験の書類を提出した後、大学院の春休みを利用して日本に一時帰国し、面接を受けました。開発コンサルタントのうち気になっていた会社がありましたので、そちらを受験し、結果三祐コンサルタンツから内定を頂きました。他にも国際協力業界ではない日本の民間企業の新卒採用にエントリーシートを送ったりしていました。
開発コンサルタントの仕事では、協力隊経験はボランティアとしてではなく、業務経歴として見なされますので、実際に協力隊の時にやってきたことを具体的にアピールし、途上国の農家さんと一緒に働きたいという思いを伝えました。
就職活動に対して不安を抱くことはありませんでした。日本の農業や畜産の現場で栽培や飼育技術を身につけることに対して憧れを抱いていたので、農業法人等に就職をすることも検討していました。その後、国際協力の道に戻ることも一つのプランとして考えていました。特に新卒にも開かれた開発コンサルタント以外のNGO職員やJICA長期専門家では、JICA海外協力隊経験に加えてさらに実務経験を求められることが多いため、着実にキャリアを形成する道も考えていました。
―現在のお仕事「開発コンサルタント」について教えてください。
常に途上国にいらっしゃるのでしょうか? ワークライフバランスは…?
1年のうち半分以上は、いろいろな国で仕事をします。そのほかは国内での業務もあります。こちらが海外業務の1日の例です。
最近はミャンマーでの民間連携案件の現地調査を終えたところで、報告書の作成を行っています。この案件では日本の保険会社とミャンマーの銀行が現地の農家や中小企業向けの“保険が付帯されたローン商品”を開発しており、そのために現地にそういったニーズがあるのかを調査し、商品設計に必要な情報を集めました。“保険が付帯されたローン商品”というのは、例えば農家がサイクロンの被害にあった時、農作物が収穫できなかったり、家を失ったりしてローンの返済が一時的に非常に難しくなります。そこで予め保険料を払っておけばサイクロンが通過したら保険金が下りて、例えばローンの金利や元本の一部が免除になったり、返済期間が延長されたりします。ミャンマーのエーヤワディ地域全域を1ヵ月かけて回り、農家や漁業者、中小企業、政府職員の方からお話を聞いてきました。
また来月から従事するザンビアでのプロジェクトですが、なんと協力隊時代の同僚がザンビアカウンターパート側のプロジェクトマネージャーとのことで、10年以上ぶりに一緒に働けることを楽しみにしています。
そしてこちらが、国内業務の1日の例。
国内業務では、プロジェクトの会議に出席したり、報告書や企画書を作成したりします。文書作成の機会は多いですね。出産のため一度退職したのですが、社内のジョブリターン制度を利用し、復職しました。今は日本にいる時は時短勤務です。
開発コンサルタントの仕事は海外に出ることでお給料をもらえますので、家族の協力なしでは続けることはできません。私が海外にいる時は夫だけで娘を育てていますので、夫と彼の職場の理解と協力があって日々仕事ができていると感じています。海外出張中は時短家電や家事サービスを利用したりして、夫の負担を軽減するために工夫をしています。
復職前には会社と海外出張の条件をよく話し合いました。また他の会社のママさんコンサルタントとしてこれまで第一線で働かれてきた方にも色々と相談をしたこともあります。育児と仕事の両立についての答えは全く出ず、悩みっぱなしです。
―協力隊の経験は、お仕事で、人生で、どのように活きていますか?
協力隊経験のおかげで、住環境が厳しい国での仕事もそれほどストレスなく馴染むことができます。また開発途上国の人々ののんびりとした、日本人からみたら少し雑な対応に対してもあまり気にならず、できることを着実に丁寧にやろうと仕事に前向きになれます。人生の面では、姉からはザンビアに行ってから昔よりも優しくなったと言われました。
―今振り返ってみて、帰国後のキャリアのために派遣前・活動中にしておくと良いこと、就活へのアドバイスをお願いします!
協力隊派遣前や活動前半は、将来の進路や就職の心配はあまりしないで、とにかく協力隊の活動に力を注いで生活を楽しんだらよいかと思います。考え方はどんどんと変わってきます。もしくは将来就きたいと考えている職業の方の本やブログを読んで情報収集をすることもできます。
帰国が近づいてきたら、徐々に進路に向けて動き出すとよいと思います。ただし進学を考える方は、国によって大学の入学スケジュールは決まっていますので、予め確認されておくことをお勧めします。また活動中の夜や休日を使って、語学や資格、専門分野の勉強をすることもできます。私の場合、大学の講義を英語でしなくてはいけなかったため、英語の勉強は継続しました。勉強は将来の仕事に必ず役に立つ日が来ると思います。
―ありがとうございました!
いかがでしたか? 目の前のことを楽しんで力を注げば、次につながる。「やってみたい」。その想いが、すでに国際協力への第一歩かもしれません。その一歩を踏み出す勇気となりますように。
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