第3号 PARTNER便り JICA海外協力隊と私のキャリア 開発コンサルタント編(上)
国際協力の道へ
三祐コンサルタンツ・梛野 愛さん
今回から2回にわたり、JICA海外協力隊の経験を経て現在、国際協力の最前線で活躍する「開発コンサルタント」の方のキャリアパスを紹介します。参加前、派遣中、帰国後、それぞれどんな思いを抱き、キャリアを描いてきたのでしょうか。
―梛野さんが、 国際協力に関心を持ったきっかけは何ですか?
国際協力という業界があることは知らずに、高校生の頃から海外協力隊として海外で働くことに漠然とした憧れがありました。もっと遡れば、中学生の時に「アパルトヘイトの子どもたち」という本を読んだことが一番初めのきっかけだったのではないかと振り返ります。
―なぜ協力隊に参加しようと思ったのですか? きっかけや思いを教えてください。
高校生の頃から、大学を卒業したら海外協力隊に参加する、という一つの目標がありました。大学の頃は、他に就職活動もせずに、協力隊の受験しか考えていなかったので、協力隊に落ちたら大学院に進むか別の道を考えようと不安も全く感じず進路を選びました。また一度日本で就職したら、アフリカで働くような機会も一生ないだろうと漠然と思っていたことも、新卒で協力隊に参加した理由です。
大学で畜産学を専攻しており、家畜飼育という職種があることを知り応募しました。農業系短期大学での講師のポジションがザンビアで要請されていたので、大学で学んだことをすぐに講師として授業や実習で実践できるなと思い、そちらを第一希望としました。
大学では指導教官の先生に協力隊に参加することを伝えており、週に1回は先生から大学付属牧場で乳牛や肉牛飼育の指導を受けていました。また毎朝、鶏、山羊、ウズラの世話を担当しており、授業だけではなく実践として学べるように努めました。指導教官の先生がJICAの短期専門家として働かれた経験を持ち、国際協力に理解がある方だったので、大変恵まれていました。
―協力隊ではどのような活動をしましたか? それまでのキャリアで活きた経験、また活動のために「これをしておけば良かった」ということは?
協力隊ではザンビアの首都、ルサカの国際空港から車で20分程度の場所にある農業系短期大学で、講師として畜産学の授業と実習を受け持つことが主な活動でした。さらに、講義の一環としてのスタディツアーの実施や卒業論文指導も行いました。
前述の通り在学中、大学の圃場で指導教官から畜産技術を教えてもらえたことや、夏休みに1ヵ月間の畜産農家に住み込んで働いたことは、実習の授業に活かすことができました。理論の授業では大学の頃の授業内容を直接活用できたので、真面目に授業を受けておいてよかったと思います。一方、今振り返ると協力隊参加前に、派遣後すぐ活動できるよう、現地の畜産に関する情報収集を行えばよかったと思いました。
―協力隊としての活動中、帰国後のキャリアについてどう考えていましたか?
活動を通して、参加前から意識に変化はありましたか? また、キャリアについて不安だったことがあれば教えてください。
協力隊参加前や活動開始1年後頃は終わった後のキャリアをそこまで本気に考えておらず、教員免許を取得していたので、教員採用試験を受験しようかと漠然と思っていました。しかし、活動を進めるにつれて、担当の授業を放棄する同僚講師の穴埋めなどマンパワーとしての役割しか果たせず、むしろ私がいることで同僚講師が職務を放棄する口実になってはいないかと悩む日々を過ごしました。
このように協力隊の活動に100%満足できなかったからこそ、帰国後も国際協力の仕事を続けたいと思うようになりました。その時のボランティア調整員 * に国際協力分野における進路を相談したところ、イギリスの大学院を勧められ、協力隊終了後は農業農村開発で有名な英国レディング大学大学院に進みました。
開発コンサルタントの仕事を知ったのは大学院で就職活動をしていた時です。大学院の同級生に長期研修中のJICA職員の方がいて、開発コンサルタントの仕事について教えてもらいました。農業農村開発を行っている開発コンサルタントの採用ページを見て何社か検討しましたが、最終的には面接の時に「コンサルタントも協力隊と同じように途上国の村に入って働く」と言われ現場主義であることを感じた三祐コンサルタンツに就職を決めました。実際に入社してからプロジェクトを実施したエチオピアでは協力隊の頃よりも厳しい生活環境の中で、村に毎日通う生活を送りました。
プロフィール
34歳。農業農村開発コンサルタント、技術士(農業部門)、一児の母。
こうして、JICA海外協力隊から国際協力の道に踏み出した梛野さん。次回は現在のお仕事、ワークライフバランス、またキャリア形成へのアドバイスを伺います。
※ボランティア調整員…企画調査員(ボランティア)JICAの在外事務所等で、JICA海外協力隊の活動全般をサポート。開発課題に沿ったJICA海外協力隊派遣計画策定や、隊員の配属機関との交渉をはじめ、隊員の活動支援にかかる安全管理や経理・事務処理など広範な業務を担う。
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