第18号 PARTNER便り サラーム~ヨルダンOJT便り(中) アハランワサハラン!ようこそヨルダンへ~JICAの観光開発
السلام عايكم(アッサラームアライクム/こんにちは)!
ヨルダン事務所で新人研修中の稻田です。 前回 に引き続き、ヨルダンでの研修・生活についてお伝えします。
  第2弾の今回は、ヨルダンの目玉産業である「観光」に紐づけて、JICA事業を紹介したいと思います。今回の
  
  題名にもある「アハランワサハラン」とは、アラビア語で「ようこそ」を意味します。
 
ヨルダンの観光とJICA
ヨルダンの観光スポットといえば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
遊牧民族ベドウィンによるツアーを楽しめる。
  中東定番の砂漠やイスラム建築ももちろん楽しめますが、ヨルダンの見どころはそれだけではありません。
  
  モーゼがその生涯を終えたと伝えられるネボ山や、石で作られたモザイク「エルサレム地図」が残るマダバの街はキリスト教の聖地とされ、多くの観光客が訪れています。
 
アンマンから車で南へ30分のマダバ、聖ジョージ教会の床に保存されている。
マダバの街はローマ帝国、ビザンチン帝国のもとで繁栄した。
  また、首都アンマンの旧市街には遺跡が多く残っており、ローマ帝国やビザンチン帝国など古くからの歴史を
  
  感じることも出来ます。
 
アンマンの旧市街中心部の丘の上に位置する。
鉄器時代、ローマ・ビザンチン・ウマイヤ朝時代の建築物が残る。
  ヨルダンにおける観光業は外貨獲得のための主要産業となっています。また、ヨルダン国内の失業率は
  
  19.2%(2019年第1四半期)と高く、若年層(20-24歳)においては40%にまで達するため、雇用の
  
  受け皿として観光業の成長が期待されています。
 
  JICAもヨルダンの観光振興に力を入れています。今年4月に開館したペトラ博物館をはじめ、カラク博物館、
  
  ヨルダン博物館といった博物館の整備に協力し、観光客のみならず地元住民もヨルダンの歴史や文化・伝統に
  
  ついて学ぶことが出来るようになりました。
 
  首都アンマンから車で約50分のサルトでは、旧市街のまち全体を博物館(エコミュージアム)と考え、住民の
  
  暮らしを体感できるサービスが提供されています。地元住民がガイドする「まち歩きツアー」、伝統建築に住む家庭でアラブ文化を体験する「ホームビジット」などの魅力的な取り組みは、JICAの技術協力プロジェクト
  
  『サルト市における持続可能な観光開発プロジェクト』(2012-2016)によって整備されたものです。(※1)
 
伝統的なアラブの家庭料理を楽しむことが出来る。
写真は、野菜や鶏肉と米を様々なスパイスで炊き上げたマクルーバ。
  JICAの協力、また日本のTV番組や雑誌などで取り上げられることもあり、旅先としてのヨルダンの魅力は広まりつつあります。インスタグラムでも「#ヨルダン」と検索すると約1.9万件の投稿がヒットするようになりま
  
  した。
 
中東地域を「観光」で繋ぐ
  中東地域への観光客数は増加しており、2018年には前年比で5%増加となる約6000万人が中東を訪れて
  
  います。(※2)ヨルダン一国のみならず、中東諸国を周遊する観光客も増加しているようです。
 
  JICAによる観光振興も、中東地域で広く実施されています。ヨルダン事務所では先日、観光分野の合同
  
  ワークショップが開催されました。ヨルダン、トルコ、エジプト、パレスチナのJICA事務所で観光振興に
  
  取り組む現地職員が集まり、サルトやペトラなどJICAの事業地を訪問し意見交換を行いました。博物館の運営・管理方法や人材育成、展示方法、PR方法、現地コミュニティの巻き込み方、観光地の災害リスク・管理、各国の取り組みから得られた教訓を幅広く共有し、今後の事業に活かすことが目的です。このような「横」の繋がりによって中東地域の観光が全体的に盛り上がり、中東の魅力がより多くの方に伝わることを願います。
 
館内を歩きながら、歴史の流れを追うことが出来る。
  次回(最終回)は、ヨルダンでの日本の開発協力について、研修を通して感じたことをお伝えしたいと思い
  
  ます。
 
それでは、مع السلامة(マッサラーマ/さようなら)!
  ※1:ヨルダンの観光分野におけるJICAの協力について、概要はこちら
  
   観光セクター開発事業
  
   コミュニティ重視型のペトラ地域観光開発プロジェクト
  
   ペトラ博物館建設計画
  
  ※2:国連世界観光機関(UNWTO)が2019年1月21日に発表した報告書、“International Tourism Highlights 2019 Edition”による。
  
   https://www.e-unwto.org/doi/pdf/10.18111/9789284421152