国際協力のリアルに迫る3つのストーリー~カンボジアOJT体験記(第3弾)「私たちじゃなきゃできないことが、きっとある」~

4月にJICAに入構した国際協力人材部の浅川 裕子です。

この体験記では、新人職員海外研修中にカンボジアで出会った、
日本によるカンボジアへの国際協力のリアルを伝える3つのストーリーをご紹介しています。

第2弾では、日本が長らく行ってきた「技術協力」という方法は、技術や知識だけでなく、日本の国づくりの
根幹にある価値観を伝達するという点でかけがえのない意義があるという記事を書かせていただきました。

▷第2弾: 日本の「技術協力」は新渡戸稲造の『武士道』に通じる

最終回となる第3回では、課題先進国ともいわれる日本が、堅調な経済発展を続けるカンボジアにおいて、果たし続けるべき役割とはいかなるものか、どこまで協力を続けるべきなのかを考えてみたいと思います。

最終回は、一枚の写真から始めます。

プノンペンの夜景
カンボジアの首都プノンペンの夜景。
手前にはセントラルマーケットがあり、奥の最も煌びやかな場所にはカジノがある。
光に満ち溢れている。

煌びやかに光り輝くネオンに、高層ビル群。
カンボジアの首都、プノンペンの夜です。
カンボジアでは、リーマンショックの影響から回復をみせてきた2010年頃から、外国企業の直接投資や縫製業の好調な輸出、観光客の増加などにより、堅調な経済成長を遂げてきました。プノンペンでは、韓国や中国、
インドネシア、日本企業による不動産開発が急速に進んでいます。

この写真だけを見ると、「経済的に発展した」場所のように思われ、このような急成長を見せる国に対して、「どこまで日本は協力を続けるのか」「日本だからこそできる国際協力とは何か」という印象を持つのではないでしょうか。

OJTにおける、私のもう一つのテーマは、 「『日本だからこそできる』国際協力がきっとあるはずである。ではそれは何か」 というものでした。

途上国の国づくりの担い手と共に、途上国の課題解決を目指す存在であるJICAは、途上国自身による社会課題への対応能力向上を目指しています。「どこまで日本は協力を続けるのか」という声に対して、私は、途上国の人たちが「自分の国の未来を、社会の在り方を、『自分たち』で決めることができる」ようになるまでだと考えています。

スピードと資金力、普及力を持つ民間資金の途上国への近年の流入増は、経済成長の恩恵や各種社会課題の解決にも大きく寄与する一方で、環境や社会への望ましくない影響を生じさせる可能性にもつながります。かかる影響に配慮するためにも、司法・立法・行政には、法や規制、監督という形で、その方向づけ・舵取りをする役割があると考えます。途上国の国づくりの担い手が、その役割を果たすことができるようになるまで、協力を続けるべきであると考えます。

では、「日本だからこそできる」国際協力とは、一体どういったものなのでしょうか。日本は、非西洋から先進国となった最初の例であり、伝統と近代を両立させ、自由で平和で豊かな民主的な国を作り上げた、途上国の発展のベストモデルの一つだといえます。特に、司法・立法・行政の能力強化の点から相手国の国づくりの担い手に寄り添いながら途上国自身の社会課題解決能力の向上を支援していくのが、時には「お雇い外国人」の力を借りながら数々の社会課題を解決し、経済成長してきた日本人ならではの役割だと考えます。

その役割は、カンボジアにおける水道行政の管理能力向上を目指した協力に見てとることができます。
カンボジアでは、公営水道事業者に加えて、民営水道事業者によって水道事業が支えられています。カンボジアの民営水道事業者は、家族経営の小規模のものが多く、運営能力に課題を抱えています。

OJT期間中に、 「カンボジア水道行政管理能力向上プロジェクト」 の活動に参加し、カンボジア工業手工芸省
水道総局職員とJICAのプロジェクト専門家とともに、シェムリアップ州にある民営水道事業者の現場検査に同行しました。
現場検査では、浄水場の設備点検や水質検査、浄水場から一番遠い顧客の家で水圧測定等を行いました。そして、検査結果を踏まえて改善点を示し、事業者への運営指導を行いました。人々の暮らしを支える水の質を保証するために、JICAは水道総局職員が現場検査や運営指導を適切に行うことができるよう、研修や実地でのアドバイスを行っています。

現地検査の様子(末端の利用者の水道の水圧測定)
現地検査の様子(末端の利用者の水道の水圧測定)
現場検査の様子(専門家による水質検査)
現場検査の様子(専門家による水質検査)
現場検査の様子(浄水場の設備点検)
現場検査の様子(浄水場の設備点検)

最後に、「日本人だからこそできる」国際協力のもう一つのあり方は、一人ひとりの自発的な意志で参加し、
自身のこれまでの知見や現地で自分が築いた人間関係を活かした市民参加協力です。カンボジアでは、JICA海外協力隊やJICAやNGOのインターンとして活動する、若き日本人に数多く出会いました。

例えば、小学校で日本式の運動会を普及するボランティアの方、貴重なタンパク源として食されるコオロギを
テーマにしたツアーを企画しているボランティアの方、障害をもつ当事者が、障害者の雇用創出のために設立したベーカリーで製造されたお菓子をPRする動画を制作している、学生インターンの方、試行錯誤を繰り返しながら、「自分にできることは何か」と向き合い続けています。

協力隊の活動
コンポントム州で、観光隊員として活動するJICA海外協力隊隊員(写真中央)。
コオロギの養殖場と、天然のコオロギの収穫を見学するツアーを実施している。

私にも、この記事を読んでくださった皆さんにも、「日本人だからこそできることが、きっとある」はずです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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