「私の国際協力ジャーニー ジュニア専門員経験者キャリアインタビュー②」

国際協力の現場への第一歩として JICA海外協力隊 という制度があることをご存じの方は多いかもしれません。しかし実際には、その魅力について具体的なイメージをお持ちの方は多くないかと思います。今回は私、JICAインターンの青山が 前回 に続き、海外協力隊 1 の経験を経て、現在 ジュニア専門員 としてJICA内で実務を積みながら専門家へのキャリアを歩まれている経済開発部 農業・農村開発第一グループ 第二チームの松原花さんに海外協力隊の魅力や今後のキャリアについてお話を伺いました。

憧れていた国際協力。自身の専門性で貢献したい。

Q:これまでどのようなキャリアを歩んでこられましたか?

大学・大学院を通じて水産資源学について学びました。卒業後は、「地域に入り込むグローカルな仕事」がしたいという思いから北海道国際交流センターに2年間勤務しました。函館市に愛着をもついろいろな組織や立場の皆さんと一緒に仕事をして、函館市の魅力にも触れることのできる楽しい仕事でした。その後、国際協力の世界に身を投じることを決め、ソロモンでの2年間の海外協力隊経験を経て、現在ジュニア専門員としてJICA本部にて実務研修にあたっています。

Q:国際協力を志すきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

小さい頃から漠然と国際協力という世界に興味がありました。また自分の身近に海外協力隊経験者がいて、その方々に対する憧れというものも非常に大きいものでした。大学進学後は、人の暮らしの「食」の部分に近い分野で活躍したいという思いを持ち、水産資源学について学びました。ある授業の中で、生牡蠣を観光客向けに提供できるよう衛生環境を整えたことで、地元漁師の収入が大幅に増えたという事例を知ったことがきっかけで、水産資源の有効活用によって実際に途上国の生活を豊かにすることができることを知り、自身の専門性によって国際社会に貢献できるということを知りました。このような国際協力に携わる人に対する憧れと、自身の能力を発揮したいという思いから、国際協力の世界の門戸を叩きました。

海外協力隊の活動で、村の小学校にて水産資源の大切さについての授業を実施。
海外協力隊の活動で、村の小学校にて水産資源の大切さについての授業を実施。

現地の人々と向き合い続けた日々

Q:海外協力隊での活動内容とその魅力について教えてください。

海外協力隊では、南太平洋にあるソロモンという国の漁業海洋資源省に派遣され、住民による水産資源管理に関する取り決めの制定に携わりました。その活動の中で、ソロモンの多くの漁村コミュニティを訪問し、それぞれの地域における海の存在意義の大きさと多様さに驚かされました。 一般に協力隊のような「草の根活動」というのは、井戸を掘ったり農業を手伝ったりするなど、村で活動するイメージが頭に思い浮かぶ方が多いと思います。しかし、草の根活動の本質とは、その場所にいる人と向き合うというところである、と私は考えます。私自身は都市部にある省庁に派遣されながらも、現地の人と向き合い続けた充足感に満ちた日々が、協力隊生活の最も大きな魅力であったと振り返ります。また、派遣先で、国際協力の現場に携わる専門家の方や国際機関の方と交流ができることも、協力隊の魅力の1つだと思います。

漁村を訪問し、水産資源管理計画策定の話し合いを補助。
漁村を訪問し、水産資源管理計画策定の話し合いを補助。

Q:ソロモンでの経験において、日本と海洋資源への考え方の違いを感じた出来事はありましたか。

SDGsのゴール14「海の豊かさを守ろう」でも掲げられている海洋資源の持続的な利用という考え方は、やはり国際的に通ずるものであると現地でも感じました。しかし、現地と日本では、水産資源の果たす役割に相違があると思います。現代の日本では、水産物の利用においては、水産業という一つの産業としての役割が大きいと思います。一方ソロモンでは、基本的には自給自足のために水産資源がより利用されていると感じました。また、文化的な海に対するつながりについても、国ごとに考え方が違うと思います。ソロモンでは、日常生活においては貨幣を用いるものの、結納や罰金では貨幣に代わってシェルマネーやイルカの歯を利用していました。海を自分たちのアイデンティティとして結び付けているソロモンの価値観は、同じ島国である我々日本人、特に若い世代が忘れつつある感覚であるのかもしれません。

「自分は何をするべきか」実感を持って

Q:ご自身の中で大切にしている考え方・価値観を教えてください。

実感を持って仕事をする、ということを大切にしています。実感があるということはプロジェクトを進める上で次に自身は何をするべきか、次は誰に何を働きかければいいのか、それらが自分の頭の中でステップバイステップでわかる状態こそ、実感を持って仕事ができていることだと考えます。専門家の方は、一つ一つの段取りを構想し周囲の人に伝えるのがとても上手であり、私自身も現在の職場において研修と実務を通じてそのようなスキルを高めている最中です。

海外協力隊の配属先だったソロモン漁業・海洋資源省の同僚との集合写真。プレゼントした課のオリジナルユニフォームを着用
海外協力隊の配属先だったソロモン漁業・海洋資源省の同僚との集合写真。プレゼントした課の
オリジナルユニフォームを着用

Q:現在の仕事内容とご自身のキャリアの将来的な展望を教えてください。

現在は、経済開発部において水産分野の案件の実施や立ち上げに関わらせていただいています。まだまだ分からないことだらけで毎分毎秒が勉強ですが、現地の方のニーズとその解決策について専門性を活かしながら考えることのできる、裁量の大きいやりがいのある仕事です。将来的にはいろいろな国の漁村コミュニティの人たちと一緒に仕事がしたいです。いつか、私が大きく影響を受けた学者の方が活躍されていたアフリカ地域でも、漁村コミュニティの方と仕事がしてみたいと思っています。

協力隊は「現場」を知る絶好の機会

Q:将来、国際協力を志す方に向けたメッセージをお願いします。

国際協力に興味のある方にとって、JICA海外協力隊は間違いなく価値ある経験になると思います。現場で活躍するプレーヤーであろうと、様々なアクターをまとめるマネジメントの立場であろうと、将来どの立場で携わるにしても、国際協力の現場を間近で見られるJICA海外協力隊の経験は絶好の機会であると思います。文化的な違いも大きく、インフラも十分に整備されていない環境の中で課題を乗り越えていく試行錯誤の経験を積むこと、様々な課題に対してクリエイティブに取り組んでいく経験そのものが大きな糧になります。この記事を読まれた
1人でも多くの方が、国際協力の世界に関心を持ち、ともに歩んでくだされば嬉しいかぎりです。

1: 現行制度では、JICA海外協力隊のうち一般案件で派遣される45歳までの方。

国際協力人材部 人材養成課
(現・人事部 開発協力人材室)
インターン 青山周平
(2020年3月執筆)

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