モザンビークでの生活、これからのこと
──若手駐在員が語る魅力、苦労、そしてライフプランを聞いてみた!

国際協力業界でのキャリア形成を考える中で、途上国での生活やライフイベントとの両立に不安を感じる人もいるかもしれません。
途上国で働くって、実際どんな感じなの?どんな魅力、苦労がある?そんなリアルを、モザンビークで活躍する2人の若手駐在員、平良さんと塩崎さんにインタビュー。
前回(Vol.1)は、仕事内容やモザンビークで働くことになったきっかけ、仕事への熱い想いを紹介しましたが、Vol.2となる今回は、モザンビークでの日々の暮らしや、ライフプラン、そして将来の展望について深掘りしていきます。
2人のリアルな経験談を通して、モザンビークの暮らしや国際協力のやりがいと難しさ、そして海外で働くことの喜びと苦労を探ります。
(こちらもオススメ!)2人のこれまでの経歴やモザンビークでの活動内容、仕事への想いを紹介した記事: 『アフリカで奮闘する若手駐在員に聞いた!なぜモザンビークに?国際協力現場のリアルとは?』
海外駐在の醍醐味!モザンビークで感じる魅力とは?
――モザンビークの生活で楽しいと感じることは何ですか?

平良さん:
週末にいろんなことを楽しめるのはすごく魅力だと思います。
モザンビークは南半球なので、今(取材時は1月)は真夏のシーズン。最近もビーチに行ってシュノーケリングを満喫してきました。

モザンビークのビーチでの1枚
あと、ご飯も本当に美味しいんです。
モザンビークは、元々ポルトガル領だった影響でポルトガル料理のお店が多いですし、同じポルトガル語圏のブラジル料理を出すお店もあります。ジャンルが豊富で、友達との外食が楽しみの一つです。

塩崎さん:
確かに。様々な国の料理が食べられるのは魅力の1つかもしれないですね。海に面しているので、海鮮料理も美味しいですよ。
国内にも国立公園やビーチがあるので観光は十分楽しめるんですが、周辺国にも簡単に行きやすいんです。
また、隣国との距離感が近いのも魅力の1つ。国外にもかかわらず、車を使って1〜2時間で行けてしまう距離感なんです。
週末には南アフリカやエスワティニでサファリを楽しんだりすることもありますよ。

ゴロンゴーザ国立公園での1枚
驚きのギャップ。時間も文化も“ゆるい”!?
――モザンビークの文化や習慣で驚いたことはありますか?

塩崎さん:
時間にルーズだと感じることはあります。例えば家や家電の修理のために時間を指定して依頼しても、その通りに物事が進まなかったり、修理に必要な機材を持ってこないことがあったりします。
日本人的には「なんで!?」と思うこともあるのですが、割り切ってしまえばストレスは減りますし、「郷に入っては郷に従え」という気持ちが大事だなと感じますね。モザンビークは、モザンビークなりのルールで物事が動いているように思います。

平良さん:
私も最初は戸惑いました。
日本だと「時間厳守、効率的!」っていうのが当たり前ですけど、こっちでは厳守ではないですね。
柔軟で臨機応変さには助けられる場面もあります。かと思えば、時間に合わせた挨拶には厳しい方が多く、面白いです。
時間に合わせて挨拶の言葉を使い分けていて、お昼の12時までは「Bom dia.(おはよう)」、12~18時は「Boa tarde.(こんにちは)」と挨拶をします。
まだ午前中の時間帯にもうすぐ12時だからと思い、「Boa tarde.(こんにちは)」と言うと、「Ainda “Bom dia”.(まだ“おはよう”だよ。)」と言われます。
――挨拶の言葉には厳しいのですね(笑)。日本とは異なる文化も多いと思いますが、どのように適応したのでしょうか?

平良さん:
一にも二にも「コミュニケーション」ですね。現地の人たちと直接たくさん話すことで、彼らの考え方を知るようにしています。

平良さんと仕事仲間の集合写真。文化の違いを受け入れながら、責任ある立場で働いている

塩崎さん:
私も同じで、コミュニケーションを通じて現地の人たちの考え方や文化を理解するように努めています。
それと同時に、自分たちの仕事における感覚や規則などはやはり守らなければならないので、自分たちの考え方や感じ方について積極的に伝えるようにしています。
インフラや治安、物価…。生活するなかで困った&大変なこと
――モザンビークで生活する上で、困ったことや大変なことはありますか?

平良さん:
困ったことと言われると、ぱっと思いつかないですが、日本食や食材は手に入りにくいので、帰国したときに大量に買い込んで持って帰ってきます(笑)。

海鮮料理が豊富なモザンビークでのご飯はこんな感じ

塩崎さん:
昨年(2024年)に行われた総選挙の直後、政権に不満を持った国民が抗議活動を行い、治安が急激に悪化するということがありました。
首都であるマプトは普段安全な場所として知られていますし、自分もそのように感じていたのですが、南アフリカとの国境が一時封鎖される等、想定していなかったことが次々と起こりました。
普段はあまり感じることがないのですが、その時は自分が政治や経済がダイナミックに動く国にいるのだと改めて痛感した出来事でした。
――治安の悪化は生活への影響も心配ですね…物価なども気になるのですが、日本と比べてどうでしょうか?

塩崎さん:
レストランだと、日本よりちょっと高いか、同じくらいの金額感かな。ディナーで飲み物込みだと1人4000円くらいですね。
反面、ローカルのお店に行けば1食250円ぐらいでも食べられますから、幅がかなり広いです。

平良さん:
私が住んでいる首都マプトの家は、寝室とバスルームが2つずつあって、リビングも広いんですよ。
そう考えると「コスパがいいな」と感じます。ただ、食費はちょっと高いと感じることもありますね。
あと、私は北部のカーボデルガード州でのプロジェクトを担当していて、州都のペンバ市に事務所兼自宅があります。
カーボデルガード州は北部地域を中心に、テロが発生していますが、ペンバ市は落ち着いているので、身の危険は感じることはありません。

塩崎さん:
僕が住んでいる場所もマプトですが、家はもう少し狭いです。同じ「首都」といっても、場所や契約の事情によって住宅事情に差があるみたいですね。
アパートは、日本より良い設備もあったりするくらいです。
健康・治安・医療…気を付けていることは?
――引き続き、生活に関するお話を伺います。健康面で気を付けていることはありますか?また、医療事情はどうでしょうか?

平良さん:
外食に偏ると野菜不足になりがちなので、自炊の時に野菜を意識して摂るようにしています(笑)。

塩崎さん:
暑い地域だからか、塩辛い料理が多いので、塩分を摂りすぎないよう気を付けていますね。
また、感染症予防のために必要なワクチンをあらかじめ日本で打っておくなど、途上国だから気をつけるべきこともあります。
あとは、現地の水道水は生で飲まないように気をつけています!

平良さん:
医療に関しては、やはり日本ほど整っていません。万が一のときには南アフリカに治療を受けに行くというケースもあります。
医療費も高いですし、海外旅行保険は必須ですね。

塩崎さんのモザンビークでおいしかったもの
コミュニティと人間関係。日本の家族や友人とのつながり方
――海外駐在となると、当然ながら日本にいる家族や友人と、離れている時間が長いですよね。連絡はどのくらいの頻度で取っていますか?

塩崎さん:
家族には週1回は電話するようにしています。友人にはSNSやビデオ通話で近況報告したり。
日本にいた頃ほど頻繁ではないですが、意識してコンタクトを取っています。

塩崎さんと家族の集合写真。おそろいのシャツはモザンビークのお土産!

平良さん:
週に一度は多いですね…!塩崎さんは家族と仲良しなんだな…と新たな発見がありました(笑)。
私はめったに電話はしないです(笑)。年に1回は日本に帰国して、家族や友達に会いに行きます。普段はSNSなどで軽く近況を共有するくらいでしょうか。

平良さんとご家族。2023年は8週間日本に滞在。その間はテレワークで勤務
――現地での交友関係についても教えてください。モザンビークには日本人が130人ほどしかいないと伺いましたが、どのように知り合うのでしょう?

平良さん:
モザンビークに来る前から知り合いだった人がいて、その人経由でどんどん交友関係が広がっていきました。現地に日本人がそもそも少ないので、日本から来た、というだけで自然と仲良くなれます。
あとは仕事関係で出会った人や、趣味で繋がった人と一緒に飲んだり、ご飯を食べに行ったりもしますね。
また、プロジェクトの現地スタッフなんかともご飯に行くこともありますよ。

事業視察の際に、現地の人々からお酒をいただく平良さん

塩崎さん:
距離感は確かに近いです。仕事で関わった人づてに別の日本人と知り合うこともよくあるので、コミュニティは自然に広がっていきましたね。
日本では直接話す機会もないようなUN(国際連合)で働く人や他の大使館の人たちとも普通にご飯を食べるくらいの距離感になれたりして、いろいろな気付きに繋がるから面白いですよ。
現地のスポーツコミュニティや習いごとのグループに参加すると、ローカルの方とも交流できます。日本人コミュニティ同士の飲み会や週末旅行なんかもよくありますね。

現地の人々を交えた交流の1コマ
――情報交換の場としても大切ですか?

塩崎さん:
そうですね。例えば「このレストランで、食あたりが何人出たから気を付けて」という情報もあれば、「このロッジがおすすめだよ」といったおすすめの観光場所まで。
生活に直結するような情報を得る場として重要かもしれません。

平良さん:
お腹を壊したり、衛生面で当たり外れの激しいお店があったりするんですよね。
そういうちょっとした噂話・口コミがコミュニティ内でシェアされるので、本当に助かります。
モザンビーク暮らしで変わった人生観と、今の働き方
――モザンビークでの生活や仕事を通じて、人生観や価値観に変化や発見はありましたか?また、現在はどのような働き方・暮らし方を大切にしているかも教えてください。

塩崎さん:
モザンビークで働くなかで、自分が成長していると感じます。困難な状況でも前向きに受け止める現地の人たちの強さから、多くを学びました。
また、自分の人生をどう設計していくかをじっくり考える機会も増えましたね。私はオン・オフをしっかり切り替えるように意識していて、パートナーとお互いにサポートし合いつつ、2人の時間も大事にしています。

平良さん:
私が意識しているのは、現地の言葉をできるだけ覚えることです。
公用語のポルトガル語も勉強中なのですが、各地域にはローカル言語も存在するんですよね。
現地住民の方と実際にお話をする際に、「こんにちは」や「ありがとう」をローカル言語で伝えるだけでも、すごく喜んでくれるんです。そこから一気に打ち解けて話を聞けるようになるので、楽しいですよ。
また、私もオンとオフの切り替えを大切にしています。仕事に集中したあとはしっかり休みますし、週末は友達と食事したりビーチに行ったりして、リフレッシュしています。

ボウリングを楽しむ平良さん
国際協力×ライフプラン——結婚や出産、将来をどう考える?
――ライフプランやキャリア観について、率直にどう考えていますか? もし結婚・出産のタイミングがきたらどうしますか?

平良さん:
結婚は、いずれはしたいなと思っています。
モザンビークでの仕事が楽しくて、可能なら続けたいですが、ライフイベントが重なると難しい場合もありますよね。
ただ私は子どもが好きなので、もし出産することがあるのなら「その時はその時で子育てを優先してもいいかな」と思っています。
一時的にキャリアが中断する不安もありますが、やりたいことを全部同時にできないなら、柔軟に順番に取り組むという選択肢もアリだなと。
今後パートナーができたら「振り回しちゃうかも」と思うことはあるけど、最終的にはその時々で最善の道を探りたいですね。

日本で、友人の子どもと遊ぶ平良さん

塩崎さん:
実は、モザンビークでパートナーができて、今度はパートナーの赴任先に一緒に行くことが決まりました。
正直、ずっとモザンビークでキャリアを積むつもりだったので、悩む部分はありました。
でも「その時期は一度きりで、取り戻せない瞬間だ」と思うと、一緒に暮らしたいな、と。人生は一度きりなので「ひとまず飛び込んでみよう」という気持ちです。
ただ、「男性がパートナーについていく」という選択をすると、周囲の見方も含めていろいろな葛藤があります。
今は私が合わせるけれど、次はパートナーが合わせてくれるかもしれない。そんなふうに、その都度ベストな形を話し合っています。
結婚や子育ては今後いずれしたいとは思いますが、具体的な時期はまだ決めていません。
キャリアを諦める怖さや不安は性別を問わずあるはずなので、「なんとかなる」という楽観的な面も持ちつつ、話し合いながら進んでいきたいです。
――海外勤務での結婚や出産に関して、不安や課題はありますか? 将来的なキャリア目標もあれば教えてください。

塩崎さん:
インフラが脆弱な地域だと、出産や子育てに課題を抱えることもあると思います。
日本など別の国に一時帰国する選択肢もありますが、キャリアとの折り合いが難しいですよね。ただ、あまり計画を強く持ちすぎず、その都度考える、という気楽さも大事だと思います。
大切なのはパートナーとよく話し合って、それぞれが大切にすることを妥協することなく、都度選んでいく姿勢なのではないでしょうか。
将来的には、国際協力の分野でもっと活躍したいと思っていて、今はそのためにスキルアップをせねばと思っています。

平良さん:
「海外で働きたいけど本当に大丈夫?」という点でパートナーの理解は重要ですよね。
ここモザンビークで子育てをしながら働いている知り合いもいて、それを見ていると海外で仕事と子育てをしていくのは可能なんだなと感じます。
そのタイミングになったら改めて考えることになるかなと、今は思っています。
私も結婚や出産のあとも国際協力の仕事を続けたい気持ちは強くあって。仕事とプライベートを無理なく両立できる方法を、これから模索していきたいと思っています。
海外で働くなかで得た学び、大切なこと――海外で活躍することを目指す読者へメッセージ!
――最後に、モザンビークでの生活を振り返っての学びや、読者へのメッセージをお願いします。

塩崎さん:
モザンビークでの生活で強く感じるのは「文化や習慣の違いを理解することの大切さ」ですね。
最初は驚くことも多いですが、そういう違いを受け入れられるようになると視野がすごく広がります。そして、どんなに厳しい状況でも前を向いている現地の人たちには本当に勇気をもらいます。
海外で働くことは、楽なことばかりではありませんが、得られるものは大きいですし、トライしてみたら案外上手くいくことも多くあります。
少しでも興味があるならぜひチャレンジしてみてください。

平良さん:
こういった駐在員の仕事は、定期採用がほとんど無いですし、一度採用されても長期で補償されていない場合も多く、後先読めない点がもどかしいかもしれないですが、色んな文化に触れながらの仕事は刺激的で楽しいです。
結婚や出産のようなライフイベントとの両立は確かに課題がありますが、それを含めて柔軟に考えれば、国際協力の仕事は続けられる。
海外で働きたい気持ちがあるなら、一歩踏み出してみるのはすごく価値があることだと伝えたいですね。

お2人が送ってくれた、ビーチからの美しい夕日
(左:塩崎さん、右:平良さん)
――今回のインタビューを通して、お二人の柔軟な考え方が魅力的だなと感じました。貴重なお話をありがとうございました!
編集者より
全2回の連載を通して、モザンビークで国際協力の仕事に携わるお2人のお話をお届けしました。
日本とはまったく異なる環境や文化の中で仕事をするうえで感じる戸惑いと、それを上回るやりがいや成長を感じられるとおっしゃっていたことが印象的でした。
キャリアとライフイベントの両立は、誰でも悩んだり考えたりするものだと思いますが、「その時に柔軟に考える」というお2人の姿勢に心のしなやかさを感じました。
海外でのキャリアとライフイベントの両立を考えている方は、ぜひお2人の柔軟な姿勢をヒントにしてみてください。
- モザンビークで働く若手駐在員へのインタビューVol.1はこちら
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☆2人のこれまでの経歴やモザンビークでの活動内容、仕事への想いを取材した記事はこちら♪
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