コラム 海外を目指す学生たちのリアル
トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムに参加した高校生
ガーナにトビタテ!児童労働の現実を自分の目で確かめたい。
「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム(以下、トビタテ)」は、文部科学省が2014年より推進している留学支援制度です。世界で活躍できる人材の育成を目指し、返済不要の奨学金、充実した研修などの手厚いサポートを行い、意欲ある高校生・大学生を世界各国へ送り出しています。今回ご紹介するのは、トビタテ第4期生として、2018年にアフリカ・ガーナ共和国へ渡った坪井詩綺(つぼい・しき)さん。小学生の頃から児童労働問題に強い関心を抱き、「いつかガーナに行きたい」という夢を持っていたそうです。
坪井さんが歩んだ山あり、谷ありの留学ストーリーを、全3回のシリーズでお届けします!
チャレンジしたきっかけは、幼いころからあった海外への関心。
- 「トビタテ」は、どんな制度なの?
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坪井さん
文部科学省が企業や団体と共に展開している、高校生、大学生向けの留学支援制度です。合格すれば、留学先への渡航費、滞在費を援助してもらうことができます。トビタテの大きな特長は、自分自身で渡航先を決めて、留学計画を立てること。私は、アフリカのガーナ共和国に行き、チャイルドケアボランティアに参加しました。期間は夏休み中の24日間。現地の小学校で先生のサポートをしたり、子どもたちに本を読み聞かせたり、一緒に遊んだりすることがミッションでした。
- トビタテのことは、いつどうやって知ったの?
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坪井さん
この制度を初めて知ったのは、中学1年生のとき。担任の先生から「“トビタテ!留学JAPAN”という制度が始まるけど、坪井さんに合っているんじゃない?」とすすめられました。私の母が国際協力に関係する仕事をしていたので、私も海外に強い興味を持っていたんです。 -
坪井さんのお母さん
私は昔JICAのスタッフで、家でもたまに仕事の話をすることがありました。その影響は少なからずあると思います。幼いころから自然と、途上国が抱える問題などに関心を持つようになっていきました。
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坪井さん
私の通う高校は中高一貫で、課外活動や国際交流にとても力を入れています。そのため、トビタテで留学を希望する生徒を積極的に応援していました。学内の先輩にも、トビタテ経験者がいます。私のように、途上国でのチャイルドケアや医療のボランティアに行った人もいますし、陸上競技で自分のタイムを伸ばすために、アメリカに留学をした人などさまざまですね。 - 多数の国がある中で、なぜガーナを留学先に選んだの?
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坪井さん
昔、母がよくJICAの広報誌を家に持ち帰っていたんです。私は読書が好きだったので、それを自然と手に取っていて、世界の現状や国際協力の仕事に興味を持つようになりました。でも、最も大きなきっかけは、小学校5年生のときの調べ学習ですね。4人のグループで、一つの国の歴史や特徴を徹底的に調べる学習です。私たちの班はガーナを選んだのですが、そのときに初めてガーナの「児童労働問題」について触れました。
ガーナでは約127万人の子どもたちが、児童労働を強いられている。
- なぜガーナでは児童労働が行なわれているの?
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坪井さん
ガーナは海に面している国なので、昔は奴隷貿易が盛んでした。その名残で、今でも児童労働の文化が残っているとのこと。私たちと同年代の子や、それよりも小さい子が、学校に行かず重労働を強いられているという事実を知り、大きな衝撃を受けました。その一方で、「それって本当のことなのかな?」という疑問もわいてきたんです。調べ学習はインターネットでの情報収集がメインでしたが、いつしか「ガーナへ行き、自分の目で見て確かめたい」という想いを持つようになりました。
- ガーナへ行くことについて、家族の反応はどうだったのかな?
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坪井さんのお母さん
正直、最初に「ガーナに行きたい」と聞いたときは「どうしよう…」という戸惑いが大きかったです。私の仕事をきっかけに興味が広がったのはうれしいことですが、教科書レベルの英語力しかない女の子が一人でアフリカに行くなんて…危険はないだろうか、治安は大丈夫だろうか、といった感じでとにかく不安で。最初は夫と二人で「どうやって止めようか」と話していたくらいでしたね。
深夜までかかって、夢中で留学計画を書き上げた。
- 不安を感じていた坪井さんのお母さん。応援しようと決めたのはどうして?
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坪井さんのお母さん
彼女のノートを見たときに、気持ちが変わりました。ガーナに行ったら知りたいこと、やりたいことをマインドマップにしてびっしりと書き出していたんですね。「ああ、これは本気だな」と。それほどまでに行きたいなら、行かせてあげたいな、と思うようになりました。また、私の職場にアフリカに詳しい方もいたので相談したところ、「ガーナならまず大丈夫だよ」と言ってもらえたんですね。アフリカでも比較的治安が安定している地域だと分かったので、それなら行かせてみようか、と前向きになりました。
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坪井さん
ガーナに滞在している間は、国際ボランティア・インターンの派遣で実績のある団体のチャイルドケアプログラムに参加することにしました。 -
坪井さんのお母さん
そういった団体のプログラムを利用することも、安心材料の一つでした。サポート体制がしっかりしていたし、渡航前にも連絡をいただけました。実は、彼女が出発した後、もうとっくにガーナに到着しているはずなのに、2時間以上も電話が通じなかったときがあったんです。通信環境がなかったことが理由だったのですが、そのときは心配でいてもたってもいられなくて。プロジェクトアブロードさんに連絡をしたら、すぐに無事を確認してくれたので、ホッとしましたね。 - トビタテの選考は、どんな感じで進んだの?
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坪井さん
トビタテの選考では、「留学計画書」による書類審査と面接が行われます。計画書には、留学プログラムの概要、留学を志す理由などを書き込みます。自己PRの欄にはフォーマットがないので、写真を貼ったり、絵を描いたりなど、自分らしさを自由に表現できます。熱意をアピールしたかったので、自己PRには特に力を入れました。提出期限の最後まで粘り、深夜までかかって完成させましたね。書類を作るうえで大切なのは、自分の「軸」をしっかり持つことだと思います。私にとっての「軸」は、ガーナの児童労働の現状を知り、新しい支援の形を考えたいということ。母にも書類を見せて、たくさんアドバイスをもらいました。 - 面接では、どんなことを聞かれたの?
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坪井さん
面接は、3分間のプレゼンテーションから始まります。その後に、面接官から質問を受けました。私はガーナの治安について聞かれましたね。トビタテの先輩から事前に情報収集をして心の準備をしていたので、わりとスムーズに答えることができたと思います。 -
坪井さんのお母さん
面接では、「がんばります」「気をつけます」という言葉だけではなくて、具体的な内容や対応策を説明した方がいいよ、とアドバイスしました。合格を目指して、すごくがんばっていたと思います。
プロフィール
文部科学省 トビタテ!留学JAPAN
文部科学省 トビタテ!留学JAPAN
世界で活躍できるグローバル人材を育成するため、大学生・高校生の海外留学者倍増を目指す留学促進キャンペーン。フラッグシップとして2014年よりスタートしたのが、文部科学省と独立行政法人日本学生支援機構による海外留学支援制度「日本代表プログラム」。留学内容や渡航先は、学生が自ら計画する。100%民間寄附を原資とする返済不要の奨学金、充実した事前事後研修の実施など、手厚いサポートを官民協働で実施し、若者の海外チャレンジを後押ししている。