インタビュー・対談企画
国際協力を志してインターンに参加する人、
インターンを通じて国際協力への道を模索する人---
インターン参加者の参加動機も、その後の進路も多岐にわたります。

  ---インターンの魅力とは。インターンが進路選択に与えた影響とは。

インターンを通じて
「本当に望ましい発展」と「自分にできること」を考える、
ある開発コンサルタントの場合

JICAインターンシップ・プログラムには、JICA本部や在外事務所、技術協力プロジェクト等で行うインターンの他に、JICA事業を請け負う開発コンサルティング企業が実施するプロジェクトで行うインターン(以下、「開発コンサルタント型」)があります。

今回は、その「開発コンサルタント型」のインターンに参加し、今年度から開発コンサルタントとしての道を歩き始めた和田﨑 泰明さんにお話を伺いました。



■プロフィール
和田﨑 泰明(わださき・やすあき)さん
2015年、大学院(修士課程)在学中にJICAインターンシップ・プログラム
(開発コンサルタント型)を通じて、日本工営株式会社が参画する
バングラデシュ国ダッカ都市交通整備事業に参加。
2017年より、同社(日本工営株式会社)コンサルタント海外事業本部・鉄道事業部。


―初めに、国際協力、あるいは開発途上国に関心を持つようになったきっかけをお聞かせください。

大学4年生の時に、旅行でインドネシアに行ったのですが、都市部は高層ビルの建設ラッシュで、急速な経済発展が進んでいました。 その一方で、大渋滞が起こっている道路や、道路の高架下に広がるスラム街という対照的な光景も目の当たりにし、 開発途上国が抱える課題というものを垣間見ました。
また、郊外に足を向けてみると、牧歌的な農村の景観や豊かな自然環境が多く残されていたのですが、 都市部で目にした急速に作り替えられていく様子を思い、これらの美しい光景までが、開発の名のもとに損なわれてしまうのではないか、ということに危機感を覚えました。 そしてこの経験から、開発途上国にとって本当に望ましい発展とは何か、自分にできることはないか、ということを考えるようになりました。


―進路の選択肢の一つとして国際協力を考えるようになったのも、その時だったのでしょうか。

そうですね。私は大学で土木工学を専攻していましたので、“自然や社会環境に配慮したインフラ整備”という 自分の専攻を活かす形で開発途上国の人々に貢献できるのではないか、また、そのことが人類社会全体にとっても利益となり得るのではないかと思いました。 そして、インフラ整備という形で国際協力に携わることを将来のキャリアとして意識するようになりました。


―JICAインターンシップ・プログラムに応募されたのは、その後のことですね。

先にお話しした背景から、国際協力に携わるキャリアの中でも、技術力を活かすことのできる仕事に関心を抱きました。 そこで、そのようなキャリアにはどのようなものがあるのか、また、その仕事で求められるスキルや資質がどのようなものかを知りたい、 そのうえで自身の適性を見極めたい、と考えました。
しかしながら、学内では国際協力業界への就職に関する情報を入手することは難しく、まして開発途上国の現場を経験した方の「生の声」を聞くことはほぼ不可能でした。 そこで、学生が海外での現場を体験できるプログラムがないかとインターネット上で探していたところ、JICAのインターンシップ・プログラムを見つけました。 「開発コンサルタント」という名前を知ったのもこの時です。これだ!と思いましたね。
私が専門とする都市・交通分野の業務を行うプロジェクトがあったことも応募の決め手となりました。


―実際にインターンに参加されてからの活動内容は、どのようなものでしたか。

JICAが有償資金協力を行うバングラデシュ国ダッカ都市交通整備事業において、共同企業体に参画している
日本工営株式会社 が私の受け入れ先でした。 概要としては、交通渋滞が深刻化するダッカ市内において、その改善を目的に鉄道(Mass Rapid Transit)の建設をすすめるプロジェクトです。 インターンの期間は3週間で、その間は現地カウンターパートとの会議への参加、報告書の作成支援、その他作業補助を行いました。 コンサルタントの方が、実際の鉄道建設予定地へ足を運び人や車の動きを把握しようと努める姿や、会議において発注者の意向を汲み取りながら 経験や技術力を発揮する姿を間近に見て、開発の現場でのコンサルタントの役割について知ることができました。

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(インターン参加時に撮影:カウンターパートとコンサルタントとの協議会の様子)

また、鉄道建設に伴って交差点改良の実施が予定されており、その設計業務の補助にも参加しました。 バングラデシュには信号交差点がほとんど存在していなかったため、交差点設計についての詳細な国としての規定が存在していませんでした。 そこで、設計段階で他国の規定を参考にしながらバングラデシュに最適な規定を一から決めていく、という作業にも立ち会いました。 その体験を通じて、開発途上国における仕事は、その後の国のインフラ整備における一つのひな形となるということ、 国が今後成長をしていくうえでの基盤づくりに関わっているということを強く実感しました。


―インターンの活動において、特に印象に残っているエピソードを一つ、伺えますか。

鉄道の建設予定地に寺院があったのですが、その移設を決めるプロセスが印象的でした。 その寺院はとても小さな建物で、正直なところ私には、歴史的に重要なもの、あるいは価値があるもの、という風には見えなかったのですが、 コンサルタントの方は、寺院を移設する場合と残す場合、それぞれのコストや工事方法の違いを整理・比較し、現地カウンターパートの政府職員に丁寧に説明されていました。
プロジェクトを進めるうえで、地域社会に配慮したプロセスを取ることはもちろん重要かと思いますが、 それを真摯に実践されているということに感銘を受けました。同時に、建設するインフラ施設がどれだけ良いものであっても、その整備プロセスが適切でなければ、 プロジェクトが必ずしも現地住民にとって良いものとはならない、ということを改めて考えさせられました。


―現地にとって良い開発、考えさせられますね。反対に、インターンの活動において、苦労された点はありますか。

インターン期間中はやはり、自分自身のスキル不足を痛感することが多かったです。 海外の現場では一人ひとりに肩書きがあり、各自が専門性を発揮することで“チーム”として仕事をしています。 逆に言えば、「専門性がない」ということはすなわち、チームの中に「居場所がない」ということを意味する訳です。 どのようなものであれ、「自分は○○ができます」と言える武器を持つ重要性を感じました。
また、英語でのコミュニケーションも思うように出来ないことがあり、もどかしく感じることがありました。 ただ、インターンで過ごしていくうちに「英語が流暢に話せること」と「英語で意思疎通ができること」は別物である、ということが分かってきたので、 徐々に創意工夫をしながらコミュニケーションをとれるようになりました。


―和田﨑さんは開発コンサルタントのキャリアを選択されています。やはり、インターンの経験はキャリア選択に影響がありましたか。

インターンを経験した結果、開発コンサルタントという仕事を将来のキャリアとして、より強く意識するようになったのは確かです。
私が行ったバングラデシュは、渋滞が多発するなど交通事情が良くなく、また、貧困など様々な問題を抱えています。 その一方で、豊富な労働力に支えられて着実に経済は成長しつつあります。インフラ整備や様々な不均衡の是正が喫緊の課題であることは、当時の私の目にも明らかでした。 インターンを通して、インドネシア旅行をきっかけに考えていた、「インフラ整備が国の発展の礎となる可能性」を肌で感じることができ、 自分の専攻が国際協力に貢献できるという確信にもつながりました。だからこそ、自信を持って開発コンサルタント業界を目指して就職活動をすることができました。


―それでは、現在のお仕事についてと、そこでインターンでの経験が活きたと思う点があればお聞かせください。

私が所属する部署では、開発途上国での鉄道プロジェクトに対して、計画や設計、施工監理といったコンサルティングサービスを実施しています。 現在私はプロジェクトの業務調整と言って、プロジェクト遂行に必要な書類の準備やスタッフの渡航管理などの業務を行っています。 今後は、交通調査や都市計画など、鉄道整備時に必要となる計画関連の業務に携わりたいと思っています。
インターン経験が、具体的に実務で役に立つという機会は、あまりないかもしれません。しかし、やはり開発途上国での業務・生活を体験しているため、 事務処理を行う際もその作業がプロジェクトにとってどういう意味を持つのかなど、具体的なイメージを持ちやすかったように思います。 また、JICAのインターンシップ・プログラムでは、成果報告会などでほかのインターン生と交流する機会があり、 国際協力という世界を目指す多様なバックグラウンドを持つ方々と話すことで、視野を広げることができました。 このことは、自分の業務や会社を客観的・多面的に評価するうえで役に立っていると思います。


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(入社後OJTにて撮影:カンボジアの都市鉄道建設予定地の現地調査の様子)

―最後になりますが、今後、国際協力のキャリアを志している学生や若手社会人の方へ、メッセージをお願いします。



国際協力と一口に言っても、私のようにインフラ施設を整備する開発コンサルタントもいれば、医療や教育の支援をするNGO、JICAや世界銀行のようなドナーなど、 様々なアクターがあります。また、近年は様々な民間企業の経済活動が、開発途上国の発展の原動力となっています。
国際協力のキャリアを志向される方は、自分がどの分野に行きたいか、どの分野に向いているのか、思案されていることと思いますが、 そこで考えるだけではなく、何らかの行動に移してみることを強くお勧めします。
私の場合はインターンへの応募という形でしたが、とにかく、ひとつ行動を起こすことで、必ず貴重な経験ができますし、 それを糸口に様々な可能性にめぐり会うことができるかと思います。
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(入社後OJTにて撮影:プノンペンの交通量調査の様子)


―ありがとうございました!

インターンを通じて
国際協力のあり方と自分なりの関わり方を考える、
ある民間企業内定者の場合

昨今、国際協力業界のアクターはJICAや国際機関だけではなく、民間企業や大学、地方自治体等、実に多様化しています。

今回は、2017年度JICAインターンシップ・プログラムに参加し、現在は民間企業に勤務する佐藤 知美さんにお話を伺いました。



■プロフィール
佐藤 知美(さとう・ともみ)さん
2017年度、JICAインターンシップ・プログラムに参加し、
JICAパラグアイ事務所での3カ月間のインターンを経験。
テーマは(1)個別専門家「障害者の社会参加促進アドバイザー」の業務補助、
及び(2)ボランティア事業の業務補助。2017年10月より、国内の大手メーカー企業勤務。


―初めに、国際協力、あるいは開発途上国に関心を持つようになったきっかけをお聞かせください。

そもそものきっかけは、米国の大学で様々な国からの留学生に出会ったことです。
高校生の頃から比較社会学や国際関係学に関心を持ち、多文化社会の一つである米国であればより実践的な学びが得られるのでは、と期待して米国の大学への進学を選択しました。そこで、留学生団体の代表を務める機会を得、いろんな国籍・バックグラウンドを持つ人と関わった経験から、文化の異なる相手と対人関係を構築する難しさと、面白さを知りました。そんな彼らの国と日本の架け橋になる、その一つの手段として“国際協力”という選択肢が浮かんできたのです。
また、UNESCO CENTER FOR PEACEという国際NGOにおいて模擬国連のインターンを経験し、国家レベルでの国際協力というものに対する興味を深めました。


―JICAインターンシップ・プログラムに応募されたのは、大学卒業後の進路が決まった後のことだそうですね。

はい、大学での経験から国際協力に関心を持つようになったものの、就職活動の結果、国際協力とは直接的に関わりのない民間企業への就職を決めていました。将来的に国際協力を志す中で敢えて一般企業を希望したのは、国際協力に対してビジネス的な視点や感覚を持ちたいと考えたからです。それらを身につけることによって、事業・プロジェクトの持続性・採算性・有効性などをアナリスティックに捉えることができるようになるのでは、という期待がありました。
就職先は「公共性があること」を決め手として重機械等を扱う総合メーカーを選択しました。技術系の知識を身に着けて、特定の分野における専門知識を持った「スペシャリスト」になりたい、という気持ちもありました。これは実際にJICAインターンに参加していた中でも、国際協力に従事されている方々から自身の専門分野を見つけ磨くことの重要性を教えて頂き、大切なこととして再認識した点です。

もう1点、あくまでも個人的な見解ではありますが、非営利の国際協力活動においてはどうしても「被益国」「援助国」という関係性が生じてしまう可能性が否めないのでは、と感じていました。そして、ビジネスであれば、国同士が対等な立場で向き合える可能性が増すのではないかと考えました。
これらのことが、就職先を民間企業に選んだ理由です。

一方で、将来的には国際協力を本業としている組織に関わりたいという思いも自分の中にありましたので、実際に国際協力を本業とし最前線で働く方々や現場をこの目で見て、自分自身の将来像を掴むきっかけになればと、インターンへの応募を決めました。比較的長い期間、かつ、学生というキャリア形成のスタート時点で現場を経験できるのは、インターンの魅力だと思います。


―実際にインターンに参加されてからの活動内容は、どのようなものでしたか。

私はJICAパラグアイ事務所に配属され、3カ月間をそこで過ごしました。
その期間で、「障害者の社会参加促進アドバイザー」の専門家の方の業務補助、JICAボランティアの派遣隊員の活動視察、教師海外研修への同行、社会インフラ案件のサイト視察同行、JICAパラグアイ事務所広報班の業務補助等、非常に様々な経験をしました。

個別専門家の業務補助では、SENADIS(障害者人権庁)において、2002年以降更新が止まっている「国別障害者関連情報」の改定案の編集作業に携わったり、ワークショップのモニタリング及び研修に参加・同行したりしました。この経験からは、自分に知識がないために身を引きがちだった日本の障害者支援に対する新たな気づきも得ることができました。
また、インターン期間中にはパラグアイに派遣されている7名のJICAボランティアの方の活動を視察する機会もありました。その中では、先住民族コミュニティの文化の“保護”と“開発”との関係性について考えるきっかけを与えられました。

結果として、技術協力・有償資金協力・無償資金協力・ボランティア(市民参加協力)といった多岐にわたるJICA事業について知る機会を得、それぞれについて自分なりの考えを巡らせることができたことは、何物にも代えがたい経験だったと思います。


―インターンの活動において、特に印象に残っているエピソードを一つ、伺えますか。

社会インフラ案件のサイト視察に同行した中の一つに道路整備事業の案件があったのですが、「交通量の増加」や「移動にかかる時間の短縮」によって地域が活性化されているという話を伺いました。日本の活動が途上国の経済的発展の一助となっている、その実例を実際に見られたことは大変有益な経験でした。
そしてその案件に、現在働いている(当時内定していた)会社の製品が使われていたのです。それを目にした時、国際協力には本当に色々な形があり、直接的な関わり方をしなくても、間接的に繋がって、何らかの形で国際協力に関与することができるのだな、という実感を得ました。


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(インターン参加時に撮影:道路整備事業案件視察に同行した際の様子)

―インターンへの参加を決めた理由として、「自分自身の将来像を掴むきっかけにしたかった」というお話を伺いました。インターンを通じて、将来に対する考えに変化はありましたか。

実のところ、インターンを通じて夢や目標の具体化までには至りませんでした。しかしながら、JICAなのか開発コンサルタントなのか専門家なのか、それとも国際機関なのか、どのような形になるかはまだわかりませんが、何らかの形で直接的に国際協力に携わる人材へと成長したい、そのために早く自分の専門分野を磨き、有用な人材へと成長したい、と強く思うようになりました。

特に、先ほどお話ししたインフラ案件のサイト視察での経験は、将来像が掴めていなかった私にとってプラスの影響をもたらしてくれたと感じています。将来的に、国際協力とビジネスをどう繋げていくのが理想なのか考える良いモチベーションになりました。インターン期間中にJICAによる民間連携事業の存在を初めて知り、持続可能な開発(SDGs)を実現するために民間企業から国際協力に携わることもできる、という発見もできました。

インターン開始直後に、JICAの方から受けた説明で「相互依存」という言葉があったのですが、それが国際協力の在り方として非常にしっくりときたのです。「支援」「援助」という一方的な関係ではなく対等な関係性。それは私にとっても理想の形です。まず今は、ビジネスを通じて、他国の発展に貢献する可能性を模索していきたいと考えています。
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(インターン参加時に撮影:パラグアイの風景)

―最後になりますが、今後、国際協力のキャリアを志している学生や若手社会人の方へ、メッセージをお願いします。

国際協力は、直接的でなくとも、間接的に様々な方法で関わることができます。(仮に当人が国際協力を志していなくとも、自身の取組が間接的に国際協力につながっている場合もあります。)世界情勢の変化や時代の流れに合わせて、関わり方はさらに多様化していくものと思います。だからこそ、次世代の私達が、新しい国際協力の形・方法・役割を追求していかなければいけないと考えています。

このことも含め、国際協力のいわば“最前線”で活躍されている様々な方々と3ヶ月一緒に机を並べ学ばせていただいた経験は私にとって大きな収穫でした。JICAパラグアイ事務所の自由で生き生きとした環境に身をおくことで、国際協力への理解を深められただけではなく、今後自分はどんな人生を送りたいのか様々なヒントをいただきました。

インターンは、将来のキャリア構築のヒントを手に入れることができる絶好の機会だと思います。応募を迷っている方には、是非参加することをお奨めしたいです。

―ありがとうございました!