国際キャリアフォーラム (オンライン開催)
イベントレポート
2023年度は「SDGsへの貢献」という観点でキャリア形成を目指す方に向けて、全3回の国際キャリアフォーラムを開催します。第1回の今回は、「NGOの取り組みとキャリアパス」編として、開発途上国を含む国内外の社会問題解決に取り組むNGOで活躍されるお二人にご登壇いただき、活動の内容やキャリアパス、NGOで働く魅力についてお話いただきました。
登壇者
・NPO法人アラジ 代表理事 下里 夢美 氏(JANICワーキング・グループ「NGO2030」※)
西アフリカのシエラレオネ共和国で活動する国際協力NGO。2014年の団体創設以来、2,004名の最貧困家庭の子どもたちに復学の機会を提供してきた。
※今後のNGO像を議論、実行に移す日本国際協力NGOセンター(JANIC)のワーキンググループ。
・認定NPO法人ジャパンハート 管理部長 杉山 智哉 氏
東南アジアを中心に国内外で活動する日本発祥の国際医療NGO。2004年の設立以来、途上国での治療総数は30万件以上。
冒頭の概説では下里氏より【NGOによるSDGsの取り組み】について、続いて事例・キャリアパス紹介として杉山氏より【NGO の具体的な活動内容やキャリアパス】を講演いただきました。
◆概説:NGOによるSDGsの取り組み◆
- 下里氏:
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「『国際協力を仕事にする』といっても、今はいろいろな手段があります。国際機関やODAだけでなく、ソーシャルビジネスの起業や民間企業でCSR活動に携わる、といったケースもあるでしょう。そして、社会課題に非営利で取り組む市民団体のことをNGOやNPOといいます。
NGOで働く魅力、その一つ目は、『その分野の専門家になれること』だと考えます。というのも、草の根で活動しているNGOは現場に入り込み、一人一人に寄り添った支援ができるからです。そうやってNGOが現地で蓄積したモニタリングのデータはとても貴重で、成果につながるものになっています。二つ目は、市民活動の場として、ボランティアさんやサポーターさんの声を聞きながら、顔の見える関係で課題解決ができることです。三つ目は、課題解決のためのノウハウ共有がNGO業界全体で進んでいることです。自分の団体だけですべてを担うことはできないので、さまざまな人たちと手を取り合って、課題解決に挑めることが大きな魅力だと感じています。
私が代表をしているNPO法人アラジは、『誰もが夢に向かって努力できる社会の実現』を目指し、西アフリカのシエラレオネ共和国で活動する国際協力NGOです。2014年の団体創設以来、2,004名の最貧困家庭の子どもたちに復学の機会を提供してきました。」
◆事例・キャリアパス 紹介:NGO の具体的な活動内容やキャリアパス◆
- 杉山氏:
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「私の所属するジャパンハートは、東南アジアを中心とする国内外で、20年超にわたり無償の医療サービス提供を行うNPO法人です。2021年12月には、第5回ジャパンSDGsアワード SDGs推進副本部長(外務大臣)賞を受賞しました。医療サービスの提供だけではなく、例えば、Dream Trainという事業では、親を亡くした子どもや貧困家庭の子ども、様々な理由で保護された子どもたちの生活と教育、就労をサポートする施設を2010年ヤンゴンに開設し、子どもたちの経済的自立までの長期間を、日本の里親と共に応援する事業を行っています。
私は、高校の英語教師になるため外国語大学に進学しましたが、父が障害を抱えていたため“あしなが育英会”の奨学金を受けました。その後、あしなが育英会の海外研修プログラムで、アフリカのウガンダ共和国に行く機会がありましたが、そこで価値観が一変。海外には『学校に行くことすらできない』状況があることを知り、そういった子どもたちが教育にアクセスできるための活動をしたい、と考えるようになりました。家庭の事情で、大学は途中退学することになりましたが、あしなが育英会の方から『一緒に活動しよう』と声をかけていただき、2015年の1月にあしなが育英会に入職。ウガンダで3年間、教育支援に携わりました。そこで、医療や健康に対する課題解決の重要性を認識し、国際医療NGOのジャパンハートへ転職することになりました。
私が考えるNGOで働く魅力は、『かゆいところに手が届く存在になれる』ことです。私たちは支援の場に直接的に携わり、広く、深くかかわることができます。また、経験や年齢、実績よりも『これからやること』に焦点を当ててチャンスをもらえるのもNGOの特長です。私自身も経験のない中、20代で管理部長を任せてもらい、医療資格がなくても医療活動に貢献できていることを誇りに思っています。」
◆質問コーナー◆
質問コーナーでは、参加者のみなさんから寄せられた質問に下里氏、杉山氏より回答頂きつつ、ご自身の体験談なども語っていただきました。
質問1 女性がNGOで働く上でのプライベートとの両立やキャリア形成について教えてほしい。
質問2 国際協力を仕事にする上で身に付けておいたほうがいいスキルや知識は何ですか。
質問3 SDGsの今後についてどう考えているか教えてほしい。
※以下、質問内容を一部抜粋して紹介します。
1 女性がNGOで働く上でのプライベートとの両立やキャリア形成について教えてほしい。
- 下里氏:
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「私自身、27歳のときに結婚し、今は3歳と4歳の年子を育てています。夫は、私と一緒にこの活動を続けていく覚悟をしてくれた人なので、本当にサポートをしてもらっています。NGOはジェンダー平等が確立されている職場であり、ハラスメントのようなことも少ないため、女性が働きやすい職場だと思います。」
- 杉山氏:
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「あくまでうちの団体の話になりますが、ジャパンハートの職員は8割が女性です。育休や産休は法律に則ってしっかり取れますし、在宅勤務もできますので、保育園のお迎えなど、みなさん上手く調整されています。」
2 国際協力を仕事にする上で身に付けておいたほうがいいスキルや知識は何ですか。
- 下里氏:
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「私は自分で団体を立ち上げたので、一番必要だったのは経営スキルです。その他、広報デザインを学び、ファンドレイジングの資格も取りました。ただ、すべてを自分一人でやる必要はなく、その分野のプロフェッショナルと一緒に仕事をするという道もあると思います。」
- 杉山氏:
-
「英語は最低限必要だと思いますが、あらかじめ取っておいた方がいい資格や、身に付けておくべきスキルというものは正直なく、『必要だから学ぶ』ことの方が多いように思います。」
3 SDGsの今後についてどう考えているか教えてほしい。
- 下里氏:
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「NGOは草の根的な取り組みの中で生きたデータを蓄積しているので、SDGs達成を目指していく上で、指標になるような活動をしていける存在であると思っています。」
- 杉山氏:
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「SDGsのテーマは最近出されたものですが、私たちもほかの団体さんも、ほとんどはその前から、社会課題の解決に向けた活動をしてきました。なので個人的には、今後も自分たちの団体が信じるものに向かって、自信と誇りを持って活動を続けていくことが大切だと考えています。」
※当日いただいた質問から一部抜粋して回答しております。
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▼今回登壇した下里夢美さんなど、国際協力業界で活躍している方の情報はこちら
・2021年国際キャリアフォーラム NPO法人アラジ 下里 夢美さん
https://partner.jica.go.jp/Contents/StaticContents?htmlName=career_forum_report_20210224_1
・下里 夢美さん ROOKIESコラム
https://partner.jica.go.jp/Contents/RookiesColumnDetail?htmlName=shimosato_01
・キャリア図鑑
https://partner.jica.go.jp/CareerPictureBookCareerPath