第11号 連載コラム JICA Innovation Quest ~国際協力の新しい形を創る~「ジャイクエ、はじめます」(第2回)

「ああ、彼はパフォーマンスが悪かったからクビになったよ。スラムに逆戻りだね。」

中学2年の春、滋賀県代表としてブラジルにサッカー遠征した際に、試合終了後にグランドにへたり込んでいる相手FWについて、通訳の方はそう語りました。

自分にとっては「シュミ」であり、彼にとっては「イキルスベ」だったサッカー。地球の逆側で同じ時期に生まれた僕たちの、この違いはなんだ???という困惑が自分の中にしこりのように残っていました。

そうして大学等で途上国のことについて勉強する中、彼らのような人々が、サッカー以外の選択肢も持つことができ、その中でやりたいことを選択できるような世界を、プロとして一緒に作りたいと思い、国際協力の世界、
JICAに飛び込みました。

入構して南米地域を所管する部署に入り、新人研修でブラジルに派遣されました。かつて現地の人たちとビーチサッカーをした、リオデジャネイロの浜辺に立ち、「戻ってきたんだな。」と国際協力への思いを再確認しました。

担当していた南米地域は、国民一人当たりGNI等、経済発展度合いを示す指数で言えばアフリカやアジアといった他の地域よりも非常に高く、従来の政府開発援助(ODA)による支援から卒業しようとしている国も多いです。

しかし、こういった国々は依然として国内格差や環境問題等深刻な開発課題を抱えているのが現状です。

その問題を解決するためには、民間企業や大学等、外部の力や資金を借りて、新しい形での国際協力を行う必要がある、ということに気づき、最初の2年間は南米を切り口にいろいろな方とお会いし、アイディアや意見を交換してきました。

そんな中2018年5月に、広島県にある今の部署に異動し、東京だけでなく地方にも多くの面白いアイディアを持つ人がいて、国際協力の種がいっぱい転がっていることを知りました。ただ、そういった人にとって「国際協力」は縁遠いものであり、SDGsは知っているけれども、どういう形で貢献できるかわからない...といった声をよく聞きます。

OJT中に訪れた
ブラジルリオオリンピックサッカー会場
JICA中国での市民参加協力業務

「東京にいるだけでは出会えない人々、そしてそんな人々と一緒に新しい国際協力を作り上げることができれば、どんなに面白くて、本当に開発途上国に意義のある事業ができるだろう。」という思いのもと、今回のジャイクエを構想し、走り始めました。

隣に住んでいる人と地球の裏側に住んでいる人をつなぎ、世界のみんながやりたいと思ったことをあきらめなくてよい世界を作る、そんな可能性をジャイクエという新しいピッチで探求していきたいと思います。

JICA Innovation Quest チーム、中国センター
八里 直生

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