• 国際協力夫婦 Vol.2

国際協力業界で働く夫婦の「ワークインライフ」
―自分らしいキャリアを考える

二人の写真


夫婦ともども、出張が多い国際協力業界で働くとなると不安はつきもの。
特に子育てをしながら働くとなると、「夫婦間でどちらかに負担が偏ったときはどう工夫するのか」「喧嘩をせずに日常を回すには?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
前回(Vol.1) では、同じ開発コンサルティング会社で働く高梨さんと小林さん夫婦の生活について伺いました。

Vol.2では、夫婦間で衝突を避ける工夫や第二子を迎えるこれからの家族像を探ります。


高梨さん

株式会社かいはつマネジメント・コンサルティング
国際ビジネス支援部

高梨 直季さん

大学院卒業後、JICA海外協力隊 パプアニューギニア村落開発普及員(現在のコミュニティ開発)として赴任。その後、株式会社かいはつマネジメント・コンサルティングに入社。現在は国際ビジネス支援部の部長として、日本企業の途上国・新興国展開支援に取り組んでいる。

小林さん

株式会社かいはつマネジメント・コンサルティング
国際ビジネス支援部

小林 三恵さん

大学卒業後、日系アパレル企業に就職。その後、JICA海外協力隊としてマダガスカルで青少年活動に2年間従事。帰国後、株式会社かいはつマネジメント・コンサルティングに入社。現在は国際ビジネス支援部にて、日本企業の途上国・新興国展開をサポートしている。

(こちらもオススメ!)2人の出会いから第一子出産、お二人の生活を紹介した記事: 『結婚・子育て・キャリア…国際協力業界で共に働く2人に聞いてみた!』


家事と子育てをめぐる「すり合わせ」

――お二人ともフルタイムで働いていて、高梨さんは出張もあるとお聞きしました。家事や子育ての分担について、どのように取り組んでいますか?

小林さん

小林さん:

結婚して3年ほど経ちますが、今のところ大きな衝突はありません。
家事は基本的に、生活の流れの中でその時にできる方がやるようにしていて、きっちり分担はしていないですね。
私はリモートワークが中心なこともあり、家事や育児を担う割合は多めですが、特段負担だとは感じていないです。

――分担というより、生活の流れに合わせた「すり合わせ」なのですね。

高梨さん

高梨さん:

そうですね、平日はあまり家事ができない分、休日は料理など率先してやるようにしています。

インタビューを受ける高梨さん

小林さん:

私は専業主婦だった母を見て育ったので、家事や育児はどちらかというと「やることが苦ではない」タイプだと思っています。
ただ、もちろん自分がキャパオーバーになることも…。
なので、高梨さんが積極的に家事をやってくれることは、助かるなと感じています。

違いを尊重するから喧嘩にならない

――家事のやり方ひとつとっても、人それぞれ違いがありますよね。

インタビューを受ける二人

高梨さん:

たしかに。例えば「シンクに洗い物がどのくらい溜まったら洗うか」でも違いがあります(笑)
僕はお皿1枚だけでもついつい洗ってしまうんですけど、小林さんはある程度溜めてからまとめて洗う。

食後にまとめて洗った方が実は効率的だし、水道の使い過ぎも防げるし。
そういうことをきっと小林さんは考えているのかな、と思っています。

小林さん:

……あまり深く考えたことはなかったです(笑)

――一緒に生活するうえで、些細な不満が喧嘩につながることもありますよね。お二人はお互いの違いを、どのように認めて受け止めているのですか?

高梨さん

高梨さん:

「相手なりの考え方があるんだ」と受け止めるようにしています。
小さなことで「あれ?」と思うことがあっても、「家族のことを思ってくれているんだな」と発想を転換できる。

言い返したところで得るものはないし、家庭の雰囲気を悪くするよりは、気になるのであれば自分でやった方がいい。
プライドが邪魔をするようなことはないですね。
でも実際は、小林さんが僕の至らない部分を許容してくれているから成り立っていると思います。


 お出かけ先でお絵描きを楽しんでいる様子

お出かけ先でお絵描きを楽しんでいる様子


小林さん

小林さん:

私は、職場が一緒だからこそ気をつけていますね。
家庭で大きな衝突が起きれば仕事にも響いてしまうので、お互いが心地よく過ごせるように意識しています。

パートナーが出張中に頼る工夫

――高梨さんの出張中、いわゆる「ワンオペ」状態になりますよね。大変だと思いますが、外部のサポートはありますか?

小林さん

小林さん:

そうですね。高梨さんが出張中はお迎えから寝かしつけまで、すべてをひとりでやるので、本当に時間との戦いです。

基本的には「自分でやろう」というスタンスですが、第二子の妊娠初期はつわりが酷かったので、母に2〜3日通ってもらいました。

必要な時に人の手を借りることも大事だと思うので、今後は地域のサポートやベビーシッターを活用したり、頼れるものは積極的に頼っていこうと思っています。

小林さん

――高梨さんは、仕事と家庭のバランスを取るために気をつけていることはありますか?

高梨さん

高梨さん:

僕が不在の間は小林さんに任せる形になるので、スケジュールはなるべく事前に共有するようにしています。ただ実際には遅れることも多くあって…。

職場が一緒なので言わなくても分かることは多いですが、それでも「今日はこういうことがあったよ」とか「業務の割り振り」など、普段から相談はしていますね。

出張については、僕より先に小林さんが気づいて動いてくれることが多いので(笑)、その安心感があるからこそ仕事に集中できています。

二人の写真
小林さん

小林さん:

高梨さんの出張は、なんとなく「このあたりに来るかな?」というのは察知できます(笑)

また、国際協力業界に入る前から結婚や出産を経験した人はどうやって仕事と家庭を両立しているのか、情報収集をしたり、友人から子育てのやりくりについて話を聞いたりしていました。
いろんな事例を知ることで「自分も工夫次第で続けられる」と思えたんです。

第二子を迎えるこれから

――第二子を迎えるにあたって準備していること、不安などはありますか?

小林さん

小林さん:

まだ具体的なイメージは湧いていなくて…。
きっとこれまでと同じように、走りながら試行錯誤していくのだろうと思っています。

不安があるとすれば、上の子の心のケアですね。2人目が生まれると新しく手がかかる分、どうしても上の子にかけられる時間が減ってしまいます。

そこに対して夫婦でどうバランスを取るのか、あるいはワンオペになった時に私だけでどう精神面を支えられるのかは、今から気になるところです。

高梨さん

高梨さん:

僕は部長職ですが、現場でも仕事をさせてもらっています。今後もそのスタイルは続きそうで…。

ただ、僕は運が良くて、子どもが生まれてからは出張が長くても2週間までの業務に調整できています。
そのおかげで成長を見逃さずに済んでいる。これは本当にありがたいことだと思います。

一方で、来年は今より忙しくなる可能性もあって、その分小林さんの負担を増やしてしまうかもしれない。そこは正直、申し訳なく思っています。

高梨さんのパプアニューギニア出張時の写真

パプアニューギニア出張時の様子

仕事はいつでもできるけれど、子どもの成長は今しかない。
気持ちの上では、子育てにかける時間を何よりも大切にしたいと感じています。

これからも理解しあいながら、国際協力業界で働いていく

――最後に、「働き方」そのものをどのように考えているか教えてください。

高梨さん:

僕は、ライフとワークをきっちり分けて考えていません。
就業時間に区切る働き方もありますが、僕の場合は「働ける時に働き、早めに帰れる時は帰る」というように、生活と仕事の境目はあいまいになることもあります。

普段から家庭で仕事の話ができているので、同じ価値観を持っていると感じています。

高梨さんの大阪関西万博での仕事の様子

大阪関西万博での仕事の様子

小林さん:

そうですね。私も保育園のお迎えの時間にあわせて勤務時間を調整しているので、夜に仕事をしていることもあります。
会社としてもそういった柔軟な働き方を認めてくれています。


――小林さんは以前アパレル業界で働かれていましたよね。なぜこの業界に進まれたのでしょうか?

小林さん:

もともと国際協力業界に行きたい気持ちがあったので、最初は海外展開に強い日系アパレル企業に就職したんです。
その後、協力隊としてマダガスカルに2年間派遣され、今の会社に転職しました。

マダガスカルでの海外協力隊活動時の様子

マダガスカルでの海外協力隊活動時の様子

前職では昇進ステップがはっきりしていて、次に何を目指せばいいかが見えていました。
でも、この業界では、“昇進”よりも“専門性”を深めていくことが大事なんだなって感じています。
育休などで一時的に仕事を離れても、これまで積み重ねてきたスキルや知識はちゃんと残る。
だからこそ、ライフイベントとも両立しやすいのかもしれません。

私も今は子どもと過ごす時間を大切にしたいので、仕事は少し抑えめ。無理せず細く長く続けるスタンスです。
将来また本格的に走り出せるよう、いまはライフイベントとキャリア、どちらも大切にできるようにバランスを意識して過ごしています。


――高梨さんはこの業界で長く働かれていますが、どのような特徴があると感じますか?

高梨さん

高梨さん:

開発コンサルタントは「これまでやってきた業務」で評価されるので、キャリアを中断したとしても、それまでの経験は消えません。
たとえ数年離れても、戻ってまた再スタートできるのがこの業界の特徴ですし、35歳でも「若手」と言われるくらい、長いスパンでキャリアを築いていく世界なんです。

また、国際協力の仕事は本当に幅広い。
一般的にイメージされる開発コンサルタントやJICAだけではなく、NGOやNPOもあります。
小規模生産者から原料を買い取る商社なども、国際協力の一つの形だと思っています。
そんな風に視野を広げると本当に様々な角度から国際協力に関われるんだと思います。

たとえライフイベントとキャリアのどちらかを選ばなければいけない時期があっても、悲観する必要はないと思います。
選んだ道で得られるものもきっとあるし、キャリアの形はひとつだけじゃないから。
そんなふうに自分の歩幅で進むキャリアも、きっと素敵なんだと思います。

インタビューに答える二人

編集者より

後編では日々の暮らしの中でのちょっとした工夫やこれからの家族像、そして働き方に対する考え方に焦点を当てました。

家庭とキャリアの両立にひとつの「正解」があるわけではなく、その時々に応じて見直しながら続けていけばいい。
国際協力の分野を目指している人や、すでに現場で働いている人にとっても、「自分のやり方で、走りながら考えていけばいい」という言葉は、大きな安心につながるのではないでしょうか。
おふたりの言葉から、「完璧」にとらわれず、自分らしいペースで進んでいいのだと、前向きな気持ちになりました。


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