コラム地球規模で生きる人

原畑 実央(はらはた・みお)さん(ソーシャルマッチ株式会社代表)

第3回「いつか、世界からすべての社会問題をなくしたい。」

ソーシャルマッチ株式会社は、日本と東南アジアの社会起業家をつなぎ、社会問題の解決を目指す企業です。代表の原畑 実央(ハラハタ・ミオ)さんは、学生時代のバックパック旅行で東南アジアの魅力に惹かれ、会社員を経てカンボジアへ移住。現地の企業で働きながら、貧困や教育問題など、さまざまな社会課題を目の当りにしました。そうした問題を解決するため、起業を決意。人と人、人と企業をつなげながら世界を飛び回っています。連載最終回は、今の仕事のやりがいや、ソーシャルマッチが最終的に目指していること、ルーキーズ世代へのアドバイスなどを伺いました。

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一歩ずつ確実に、社会問題の解決に近づいている実感

今、原畑さんがやりがいを感じるのはどんなとき?

一歩ずつだけど確実に、社会問題を解決していると実感できたときかな。カンボジアが抱える貧困や環境問題の現実を目の当りにして、何もできない自分に打ちのめされていたけど、以前の記事で紹介したサミスさんやパンナリーさんのような社会起業家をサポートすることで、解決に向けて動き出したという手ごたえを感じているよ。カンボジアには、教育や農業、インフラ、建築など幅広い分野で社会課題の解決に取り組んでいる人たちがいる。みんなカンボジアをより良い国にしたいと思って活動している、本当に尊敬できる人たちだ。そういう人たちと共に、問題解決に取り組めていることが大きなやりがいになっているよ。

カンボジアの社会起業家さんへ日本企業さんを紹介する時の様子

カンボジアの社会起業家さんへ日本企業さんを紹介する時の様子

もう一つ、好きな人と一緒に働けていることもうれしい。私と想いを共にしてくれるスタッフ、人生をかけて社会問題の解決に挑んでいる社会起業家、ソーシャルマッチに仕事を依頼してくれる日本企業、スタディツアーに参加してくれる学生さん…。こうした人たちと「社会問題を解決したい」という同じ想いのもとで、チームとして活動できていることにも日々喜びを感じているよ。

「ソーシャルマッチのおかげ」が原動力

仕事をしていて思い出に残っているエピソードや、うれしかったことはある?

やっぱり、いろいろな人から喜びの声をいただけるのは、一番うれしいことだよね。サミスさんからは、「ソーシャルマッチのネットワークのおかげで障がい者雇用事業が存続できた」と言ってもらえたし、ある日本企業の社長さんは、「自分たちのような海外ビジネスの経験がない中小企業が、カンボジアでプロジェクトを成功できたのは、ソーシャルマッチのおかげです」と言ってくださった。また、SDGsスタディツアーに参加した学生さんが、帰国後にSNSのDMなどで連絡をくれることもある。「このツアーに参加して、価値観が変わりました」とか「すばらしいプログラムを作ってくれてありがとうございます」と書いてくれていて、すごくうれしかった。また、スタディツアーに参加したことで自分のやりたいことを見つけて、自分に自信が持てるようになった学生さんもいる。「希望の会社から内定をもらえました」と、報告してくれた人もいた。私たちのスタディツアーが人生を変えるきっかけになったり、ステップアップにつながったりしていることが分かり、本当にこの仕事をやってきて良かったなと思うよ。

カンボジアの社会起業家さんと商談する様子

カンボジアの社会起業家さんと商談する様子

文化や価値観の違う人たちと一緒に仕事するのって、難しいときもあるんじゃない?

そうだね。生まれ育ってきた文化も、ビジネスの進め方も違うから、当然簡単にはいかないこともあるよ。例えば、日本と東南アジアでは、製品のクオリティの認識に差がある。日本企業が求める品質のレベルは高く、それに比べると、東南アジアの人たちが考える品質の基準はゆるいと思う。日本の技術は世界でトップクラスだから、そこに合わせて海外の人たちにものづくりをしてもらうのは本当に難しいことなんだ。また、スケジュールに対する感覚も違う。カンボジアはお休みをしっかり取る文化だから、工場が動かない日もある。納期を優先する日本企業の感覚とは、合わなくて当然だよね。

そういったところで、行き違いやギャップが生まれやすいから、私たちが間に入って調整したり、フィードバックしたりするんだ。日本企業の意向をしっかり現場に伝えていくことでトラブルを未然に防いで、事業を成功に導いている。価値観の違いを認め、行き違いが起こることも想定しながら進めていくことが大事だと感じているよ。

「世界の社会問題解決プラットフォーム」に

原畑さんが、最終的に目指しているものは?

私たちが目指しているのは、「人と人とをつなぐことで、世界にあるすべての社会問題を解決すること」。ソーシャルマッチの事業は、まだカンボジアをはじめとした東南アジアだけで展開しているけど、これから先は、世界中の社会起業家にネットワークを広げていくことが目標だ。世界で起きているあらゆる社会問題に対応できるようなつながりを、どんどん作っていきたいと思っているよ。

国際協力を目指す学生たちに、「これはやっておいた方がいいよ」というアドバイスがあれば教えて!

やっぱり、英語は勉強しておいて損をすることはない。場所によっては現地の言葉しか話さない方もいるけど、東南アジアでも都市部は比較的英語が通じるし、仕事をしていく上で英語でのコミュニケーションは本当に役に立つ。目の前の人たちが何に困っているのか、私たちに何ができるのかを知りたいときは、現地で声を聞くのが一番だ。言葉でコミュニケーションができれば、困りごとの状況がはっきり分かるし、自分がやるべきことも見えてくる。ソーシャルマッチの場合は、人や企業との協働がしやすくなるので、できることの幅が広がっていくよ。

教育事業で登壇する様子

教育事業で登壇する様子

もう一つアドバイスをするとしたら、「先のことは考えず、自分の気持ちに素直に行動してみよう」ということ。最初の方でも話したけど、私は「海外に行きたい」、「広い世界を見てみたい」という気持ちだけで行動したことが、今の仕事を始めるきっかけになった。でも、その当時はこれが将来の仕事につながるなんて、全然思ってもみなかった。自分の気持ちを大切にした先に、今の自分がある。「何の役に立つのかな…」とか「本当に将来のためになるのかな?」と、悩んでしまうかもしれないけど、そこはまだ考えなくても大丈夫。私もまわりに反対されることもあったし、不安を抱えたまま挑戦したこともあったけど、どんな出来事も糧になっているから。とりあえずやってみよう!


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※本記事の取材は、2023年11月にオンラインにて実施しています。


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【原畑さんが伝えたいメッセージ】

「少しでもやりたいと思ったことは、抵抗感があってもやろう」

新しい挑戦をするのは勇気がいることだけど、少しでもやりたいと思うことがあるなら、思い切ってやってみて。行動すれば、今までまわりにいなかったような新しい仲間と出会えたり、そこでしかできない経験をしたりできるから。そうすれば、その次にやりたいことや、将来の目標も、自然と見つかっていくと思う。人生で「挑戦してみよう」と思える機会って、実は意外と少ないし、高校生までの私のようにやりたいことがないという人もいるかもしれない。だからこそ、「やりたい」という気持ちは本当に大切で、貴重なんだ。だから、少しくらい抵抗感があっても、その気持ちが100%じゃなかったとしても、「エイヤー!」の気持ちで、いろいろ挑戦してほしい。ぜひ、一歩を踏み出して頑張って!

<プロフィール>

原畑 実央(はらはた・みお)さん(ソーシャルマッチ株式会社代表)

1992年、愛媛県松山市生まれ。 松山大学在学中に社会問題についてディスカッションする団体を立ち上げ、社会問題を解決しようとする人の講演会や、活動の現場を訪れるツアーを開催する。 新卒ではアリババジャパンに入社し、日本企業の海外販路開拓支援に携わる。その後カンボジア移住し、ソーシャルマッチ株式会社を立ち上げる。