コラム 海外を目指す学生たちのリアル
手島 明日香さん(てじま・あすか)さん(高校生国際協力体験プログラム参加者)
第3回「はじめて出会う人たちと語り合い、ぶつかりあい、心を通わせた3日間。」
「高校生国際協力体験プログラム」は、JICA中国が主催する高校生向けのプログラムです。「世界を知り、自分を見つめる2泊3日の異文化体験」をテーマに、世界の課題や現状に関する講義やワークショップなどを通して世界への理解を深め、自分たちに何ができるかを考えていきます。今回の連載では、2023年7月のプログラムに参加した3人の高校生へのインタビューを紹介します。第3回目は、鳥取県立米子西高等学校3年生、手島 明日香さんです。今回のプログラムに参加して、初めてJICAや国際協力の仕事について知ったという手島さん。応募のきっかけや参加して感じたこと、後輩たちへの応援メッセージなどを伺いました。
友達から背中を押されて参加した、国際協力体験プログラム
- 手島さんは漫画家・水木しげるの出身地で知られる、鳥取県境港市生まれ。現在は高校3年生で、隣市にある米子西高等学校に通っているよ。なぜ、高校生国際協力体験プログラムに参加しようと思ったのかな?
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きっかけは、仲の良い友達に誘ってもらったことでした。正直言うと、私はもともと、国際協力の仕事に興味があったわけではないんです。英語の得意な友達が、「こういうプログラムがあるから、応募して一緒に行こうよ!」って誘ってくれて、「2人で行けるなら楽しそう!」と本当に軽い気持ちで申し込みました。でもその後、プログラムに参加できる生徒は、各学校から1人だけだったということが分かって・・・。その友達は、英語の弁論大会に出場するなど、いろいろな経験や活動をしている子で、「参加しなよ!」って私に参加資格を譲ってくれたんです。私は、「ええっ、1人で参加するのかぁ…」とちょっと怖気づいたのですが、結局「やってみよう!」という好奇心のほうが勝りました。
私、英語はちょっと苦手なんですが、人と話をしたり、コミュニケーションを取ったりするのは好きなんです。市外の高校に進んだのも、自分が生まれ育った場所から出て、新しい文化や新しい人たちと出会いたかったから。体験プログラムのパンフレットに載っていた先輩たちの楽しそうな集合写真を見て、「県外の人と仲良くなれるかもしれない!」と思ったら、わくわくしてきました。

- 参加する前は、プログラムに対してどんなイメージを持っていたの?
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何かのテーマについて、みんなで話し合ったり、発表したりするんだろうなと思っていました。でも実は、それが参加前の不安要素の一つにもなっていて。というのも、高校2年生のときにグループディスカッションの授業があったんですけど、すごく苦手だったんです。いいアイデアは出ないし、みんなの意見はまとまらないし、話し合いのたびに憂鬱で・・・。だから今回のプログラムも、すごく楽しみな一方、「大丈夫かな?できるかな?」という心配もありました。出発当日は、父に車で駅まで送ってもらったんですけど、「私、やっぱり無理かも!行きたくない!」と言ったりして、父は「早く降りなさい!」って。そんなやり取りもありましたね(笑)。でも、行ってみたらすごく楽しくて、いい経験になりました。私を誘って背中を押してくれた友達に、感謝しています。
苦手だったグループディスカッションにも自信がついた
- それは良かったね!どんなところが楽しかったの?
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たった3日間だったけど、いろいろな人と仲良くなれたことですね。私と違ってもともと国際協力に興味があって参加している子も多く、国際系の学科に通っている人や、将来海外で働くために英語をしっかり学んでいる人たちに刺激を受けました。「英語は苦手だけど、私も頑張ろう!」って思いましたね。プログラムの活動以外でも、ご飯を一緒に食べたり、体育館でドッジボールをしたり、SNSのアカウントを教えてもらったりしながら、楽しい時間を過ごすことができました。

- グループで話し合って進めるアクションプランの作成があったと思うけど、心配していたディスカッションはどうだった?
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それは、やっぱり大変でした!5人1グループだったんですけど、みんな意見がバラバラで、なかなか1つにまとめることができなくて…。私も含めてみんな我が強く、譲らなかったんですよ(笑)。ほかのグループはとっくに意見をまとめて、発表のための下書きを始めているのに、私たちの意見は平行線のまま。「何とか1つにまとめないと…」と焦っていたら、JICAの方が、「1つにまとめなくてもいいんじゃない?2つの意見を同時発表してみたら?」とアドバイスをくれたんです。「そうか、それでもいいのか!」と、霧が晴れるようでした。
- そのとき、どんなことで意見が割れたの?
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「ユース版JICA海外協力隊員」として、「アトリ村」という架空の村の課題解決に向けたアクションプランをグループで考えるんです。意見が割れたのは、「村が抱える問題を解決するために、何をするのが一番いいか」ということ。私を含む3人は、「一番必要なのは“道路整備”」だと主張しました。アトリ村は土壌が悪く、雨が降ると道がぐちゃぐちゃになってしまうんです。だから隣村から物資が運べず、学校の先生も時間通りに来られない。道路事情が、村の貧困の原因になっていると考えました。でも、ほかの2人は「道路整備よりも先に、“医療”に力を入れるべき」という意見。アトリ村には病院がないので、村民に医療が行き届いていないんです。これも無視できない問題でした。どちらも大事だし、どっちも引かず・・・。ということで、JICAの方のアドバイスもあり、私たちのグループは2つの意見をそのまま、それぞれまとめたんです。いざ発表してみるとかなり好評で、自分たちも「すごくいいプランできたよね!」と大満足。この経験を通して、「グループの話し合いも悪くない。面白いじゃん!」と思えるようになりました。本当に良かったです。
国際協力は、人と深い関係を築いて、そこでしかできない経験ができる仕事
- 今回のプログラムに参加してみて「国際協力」という仕事について、どう思った?
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JICAの方から、協力隊の派遣先でのお話を聞く時間があり、現地で経験したさまざまなエピソードを教えてもらいました。そのときに、国際協力は人と深く関係を築いたり、そこでしか味わえない気持ちを大切にできたりする仕事なんだな、と思いました。そして、そういったことに喜びを感じる人たちが、やりがいを持って活動しているんだということを知って、私自身の視野も広がりました。
- 手島さんの将来の夢は?
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看護師になることです。そして、いずれは助産師になって、命が生まれる瞬間のお手伝いをしたいなと思っています。そういう意味でも、今回のプログラムに参加して、いろいろな人と仲良くなれたことは、大きな自信になりました。はじめて会う人と話をしたり、相手を理解して関係性を築いたりすることは、看護師になっても必要な能力だと思いますから。
- これから高校生国際協力体験プログラムに参加したいと思っている後輩に向けて、応援メッセージをお願いします!
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応募するかどうか迷っているなら、やるべきです!3日間という限られた時間の中で、はじめて出会う人たちととことん話し合ったり、ときにはぶつかったりする…こんな体験ができるチャンスって、なかなかないじゃないですか!?2日目の夜には、参加した仲間たちと「もう明日で終わり?寂しいね」なんて、話していました。そのくらい、ここでしかできない濃密な時間を過ごすことができるので、ぜひ挑戦してみてください。
<プロフィール>
高校生国際協力体験プログラム
JICA中国が主催する、中国5県の高等学校に通学する現役高校生を対象とした2泊3日の体験プログラム。JICA中国に泊まりがけで、世界の課題や現状に関する講義やワークショップ、アクションプランの作成などを通して、国際協力や自分に何ができるかを考えます。
WEB https://www.jica.go.jp/Resource/chugoku/enterprise/kaihatsu/jittaiken/index.html