コラム 海外を目指す学生たちのリアル

若山 空也(わかやま・くうや)さん(JICAインターンシップ・プログラム参加者)

先の目標は決めすぎない。ただ目の前のことに、全力を注ぐ。

「JICAインターンシップ・プログラム」では、国際協力に関心のある学生(大学生・大学院生)および社会人に、JICA各部署および開発コンサルティング企業におけるインターンシップの機会を提供しています。今回ご紹介するのは、2021年度JICAインターンシップ・プログラムに参加した若山空也(わかやま・くうや)さん。現在、金沢大学医学部に在籍している若山さんには、いずれ医師として国際協力の分野で活動したいという夢があります。しかし、大学生になるまでは、国際協力やJICAについてほとんど意識していなかったそう。連載最終回では、インターン経験を経て若山さんが得た気づきを、ルーキーズ世代のみなさんにお伝えします!
*インターンシップとは、就業体験を通じて、企業や仕事への理解を深める制度のこと。

国際協力の第一線で活躍している人が意識していること。

JICAのインターンでは、どのような仕事をしていましたか?

私が配属されたのは、JICAの「人事部 開発協力人材室」です。ここは、国際キャリアに関する様々な情報を発信するWebサイト「PARTNER」を運営し、国際協力に関わる人や団体をサポートする部署です。
インターン中の業務の1つがコラムの執筆でした。国際協力の第一線で活躍する先輩たちにインタビューを行い、やりがいや苦労、思い出深いエピソードなど、先輩たちが歩んできたキャリアの道を、国際協力を目指す人たちに向けて発信しました。
社会人になる一歩手前の、大学生というタイミングでこのインタビューができたことは、私にとって幸運で、今後の人生の財産になったと思います。

それは貴重な経験ですね!印象に残っていることはありますか?

インタビューを重ねる中で私が一番驚いたのは、「国際協力の道を進むときに意識してきたことは何ですか?」という質問を投げかけたときに、一様に同じ答えが返ってきたことです。多くの先輩たちが「先の目標を決めすぎないこと」と、おっしゃいました。

みなさん、それぞれ違った人生、違ったキャリアを歩んできたはずなのに、同じことを意識していたのです。ということは、国際協力に関わっていく上で、これは本当に重要なポイントなんだ!と感じました。

「先の目標を決めすぎないこと」というのは、どういう意味でしょうか?

「キャリアプランをがっちり固める必要はなく、自分の興味・関心のある方向に動いていけばいい」ということです。その中で、目の前に現れる課題に全力で取り組んでいけば、今後はどんな能力が必要で、そのために何を学べばいいか、自ずと見えてくる。これを聞いたときには、目からうろこが落ちる思いでした。

私を含めて、国際協力に携わりたいと考える若者の多くは、「国際協力のキャリアは先が見えない」という不安を抱えていると思います。「国際協力の仕事をしたいけれど、そのために何をすればいいのか分からない」「どんなキャリアプランを描くべきか?」という声をたくさん聞きます。
だからこそ、この道で実績を残してきた先輩たちが、口を揃えて「先のことは決めすぎなくても大丈夫」とおっしゃっていたことは、私にとっても救いになりました。

JICA本部にて。
JICA本部にて。

ただ、目の前のことをやるだけでいい。それが分かってから、楽になれた。

なるほど。最初からキャリアプランを固めすぎる必要はない、ということでしょうか。

そうですね。こうしている今も、世界情勢は日々変わっていますし、必要とされる支援も変化していく。だからこそ、「自分ができる最大限のことをやりなさい。そうすれば、その時々に進むべき道は見えてくる」と。私たち若者に対しての、心強いメッセージだと思います。

考えすぎても正解が出るとは限らないし、見えないままでもいい、と思えてからは、肩の荷が下りて、とても楽になりました。思えば、私にとって今回のインターンも、明確な将来設計があって参加しようと思ったわけではなく、とにかく挑戦してみたかった。でも、それでよかったのだと思います。ここで得た出会いや経験は、私の人生にとって、絶対にプラスになっていますから。

ルーキーズを読んでいる中高生にも、ぜひ教えたい気づきですね!

はい。先ほども言いましたが、明確なビジョンが見えないというのは、国際協力を目指す多くの若者が感じている不安だと思います。でも、自分の興味のあることに打ち込んでいれば、道は開けてくると思うんです。勉強でも、部活動でも、アルバイトでも、ボランティアでも、何でもいいんです。今は、目の前のやりたいことに全力を注ぐ。そこで得た学びは、きっと、国際協力のフィールドでも通用する武器になります。

これから大きな問題にぶち当たったり、高い壁が立ちはだかったりすることもあると思いますが、「あのときは、こんな風に乗り切った」という経験をして、自信を育てることがまずは大事なんだと。それをルーキーズ世代のみなさんにも伝えたいですね。

今後の目標も自分らしく。今やりたいことを、全力でやっていきたい。

若山さんのこれからの目標を教えてください。

私のこれまでの人生も、これからもしばらくはそうなると思いますが、「何年後までに、こうなっていたい」というはっきりした目標はないんです。医師になって国際協力の道に進みたい、という想いはあるものの、具体的な道筋は見えていません。JICAの先輩たちから学んだように、目の前に出てくる問題や課題に全力で当たって、出会ったチャンスを掴みながら前に進んでいけるような、そんな生き方をしていこうと考えています。

離島での診療所見学(大学4年次)。
離島での診療所見学(大学4年次)。

国際協力の現場で活躍されている方々は、決して安定しているとはいえないキャリアの中で、自分が得意なこと、好きなこと、大切にしていることを突き詰めながら、世界中の人々のために働いています。私も、そういう人材になりたいです。しかし、日本育ちの私には、さまざまな問題を世界規模で考えられるグローバルな視点が、まだまだ足りないと思っています。

そこで視野を広げるために、2022年はアメリカの医師免許取得に挑戦することにしました。今後、医師として国際的な活動をしていくためにも、海外で医療行為ができる資格もあった方がいいと思ったからです。アメリカの医師免許は、日本の大学の医学部に在籍していれば、誰でも受験することができます。また大学を1年休学し、2022年の5月からは(※取材は2022年2月)カナダへの短期留学を予定しています。そこで、医療の現場で使える英語や、英語による医療行為などを学んで、資格取得を目指したいと思っています。

好奇心旺盛な、若山さんらしい進路ですね!

はい。そして、具体的な目標はないのですが、挑戦 してみたいことはたくさんあります。例えば、JICAの国際緊急援助隊(JDR: Japan Disaster Relief Team)(※)に参加することです。また、いつかは「国境なき医師団」に参加し、困難を抱える世界の人々のための医療活動もしてみたいと考えています。

そのために、まずは私が医師として一定の技術やスキルを身に着けることが先決です。そして、目の前にそのチャンスやタイミングが来たときに、一番情熱を注げる選択肢を取れるような人材になっていたいと思っています。

(※)JDRとは、開発途上国などで災害があったときに、自衛隊や消防隊と共に、医師などの医療チームを派遣する支援活動です。

※本記事の取材は、2022年2月にオンラインにて実施しています。

<JICAが提供する、中高生向けの国際協力関連情報の紹介>

JICAでは、国際協力について理解を深め、参加型で学ぶことのできるイベントやマンガで知る現地の活動紹介など、中高生でも取り組みやすく、国際協力を考えるきっかけとなるコンテンツを定期的に更新しています。ぜひ、チェックしてみてください。
・JICA地球ひろば: https://www.jica.go.jp/hiroba/index.html
・JICA発行のマンガ一覧: https://www.jica.go.jp/publication/manga/index.html


~大学生になったら、JICAインターンシップ・プログラムにも参加してみませんか?~
・JICAインターンシップ・プログラム: https://www.jica.go.jp/recruit/intern/index.html
「関連資料」として参加者の体験談が掲載されていますので、こちらもぜひ読んでみてください。