国際キャリアフォーラム(オンライン開催)

イベントレポート

本イベントでは、「バックオフィススキルを活かして国際協力業界で活躍する!」をテーマに、一般企業での経験を活かして国際協力業界で活躍している2名の方にご登壇いただき、現在に至るまでのキャリアパスや、現在の仕事の魅力などについてお話いただきました。

ファシリテーター
・JICA人事部 開発協力人材室 室長 江崎 千絵

登壇者
・認定NPO法人テラ・ルネッサンス 啓発事業部 島 彰宏 氏
・JICAケニア事務所 職員 鶴田 亜津佐


冒頭江崎より【途上国支援に活きる多様なキャリアとスキル】について、続いて【途上国支援と私のキャリアビフォーアフター】として対照的なキャリアをお持ちの島氏と鶴田より講演いただきました。


◆概説:途上国支援に活きる多様なキャリアとスキル◆

江崎:

「国際協力というと、海外の現場で働くイメージが強いかもしれませんが、実は一般企業と同じく、事務や法務、財務、広報などの、国内でのバックオフィスの仕事もたくさんあります。また、国際協力の仕事をしたいけれど、ライフとの関係で海外で仕事をするのは難しいという方なら、国内のバックオフィスから関わるというやり方もできます。そして、ゆくゆくは海外の現場で働きたいという方も、最初は国内のバックオフィス業務から経験を積み、ステップアップするという道もあります。
国際キャリア総合情報サイト『PARTNER』の求人検索機能で、職務分野を『一般事務・経理』または『多岐にわたる分野』と選択して検索すると、2022年度の2月末時点で、年間約800件の求人掲載がありました。このように、実は国際協力への入り口は、いつでも開かれています。みなさんの思いにマッチする組織・団体との出会いを『PARTNER』がお手伝いできればいいなと思っております。」


◆講演:途上国支援と私のキャリアのビフォーアフター◆

島氏:

「私は小学生のときに、曽祖父が広島の原爆で亡くなったことを知ったのをきっかけに、国際協力や紛争、平和構築等に関心を持ち、神戸大学の大学院で国際協力についての研究・勉強をしました。
今は、新卒でNGOに入る方法はいろいろあると思いますが、私が大学院生のときは、『すぐNGOに入るのは難しい』と考えて、一旦企業に就職し、社会人経験を得るという選択をしました。
WEBマーケティングの仕事を経て、認定NPO法人テラ・ルネッサンスに入職しました。現在は啓発事業部で、台湾に駐在しファンドレイジング・資金調達の仕事に携わり、今年で6年目になります。
テラ・ルネッサンスに転職して分かったことは、WEBマーケティングの仕事は、一般企業でもNGOでも、基本は同じということです。そして、マーケティングに限らず、営業や経理、人事など、さまざまな分野において、NGOは一般企業での経験を強く必要としています。国際協力と掛け合わせられる仕事は無限にありますので、参加者の皆さんが必要とされている場所は間違いなくあるはずです。」


鶴田:

「私は、航空会社のサービス部門で経験を積んだ後、地域活性化に取り組むNPOを経て、契約職員としてJICAに入職しました。社内登用試験を受けて無期職員となり、現在はJICAケニア事務所で農業支援を担当しています。
私は国際協力で必要となるスキルは、『ハード』と『ソフト』の2種類があると考えています。ハードスキルは、資格や技術、英語力やITなど、学校や訓練を通じて得られるスキル。ソフトスキルは、柔軟性や協調性、コミュニケーション能力など業務経験等を通じて培うスキルです。
私が前職で得て、今役立っているものはすべてソフトスキルだといえます。例えば、航空会社では、さまざまな方のニーズを把握する洞察力、協調力、分析力などを培いました。NPOでは、マニュアルがない中で一から事業を立ち上げること、共通の目標を通じてチームをまとめるという経験をしました。
しかし、JICAで国際協力の仕事に関わるようになってからは、農業のより専門的な知識が必要だと感じ、JICAの勉強会、民間が提供している途上国での研修のみならず、大学院に通いながら、ハードスキルを積み上げていきました。国際協力業界には、いろいろな職種がありますし、さまざまなメンバーと一緒に仕事ができるので本当に面白いです。」


◆パネルディスカッション:国際協力業界で働く今と今後のビジョン◆

続いてパネルディスカッションでは、参加者のみなさんから寄せられた質問、「①民間企業から国際協力の世界に来て理想と現実のギャップはなかったか?」「②30代、40代でも国際協力業界への転職は可能か?」「③どんな人と一緒に働きたい?」「④再度学生に戻れるとしたら何を学びたい?」などに回答する形で、それぞれの視点や経験談についてお話いただきました。 ※質問内容は一部抜粋。


島氏:

「①については、今の日本の状況だと、やはり民間企業よりも平均的な待遇は少し下がってしまうというギャップはあると思います。ただ、実際に仕事をし、支援を届けることで得られた喜びや嬉しさは思ったよりも大きく、良い意味でのギャップを感じました。
③については、世界平和や社会課題に関心が高く、共通の認識を持っている人たちとなら、大変な時でも一緒に頑張ろうと思えるので、その志がある方たちと働けたら嬉しいですね。
④もし学生に戻れるとしたら、言語を学びたいですね。英語はもちろん、フランス語もできればどこでも通用します。仕事に直結するスキルは社会人になってからいくらでも身に付くので、学生時代は、海外に行ったり、本を読んだりして、もっといろいろな価値観に触れておきたかったと思います。」


鶴田:

「①について私は、転職に際してというより、ケニアに行く前と、実際に行ってからのギャップを強く感じました。ケニアに行く前に報告書を読んだり、話に聞いたりしていたことと、現地で実際に目の当たりにした状況には、驚くほどの違いがありました。見え方や価値観は人によって違うということを、理解しなければいけないなと肝に銘じたところです。
②30代での転職は、20代のときと違い、『私はこれができるので、こういう場面で役に立ちます』という強みがければ厳しいと感じました。逆に、そういう強みを持っているなら年齢は関係ないと思います。
③については、JICAの仕事は、途上国を含めてさまざまな国とのやりとりがあるので、日本の商習慣では考えられないような事態も起きます。そういうときに、どうやれば進めることができるかを一緒に考えてくださる方だと嬉しいですね。
④今は農業支援を担当していますが、私は農学部出身ではないので、学生時代に学んでいれば良かったかなとも思います。ですが、そうなると学生時代に経験した留学や語学の勉強はできなかったと思うので、要はどのタイミングで学ぶかということだけかなと思います。」


江崎:

「①については、島氏のお話を聞いて、良い意味でのギャップもあるなと気づきました。鶴田からは、ギャップがありながらも、それをどう乗り越えるかということも大事だと感じました。
②については、転職先が求めているものと、自分の持っているスキルがマッチすることが必要です。また、JICAでは未経験の分野を任されることも多いので、異動のたびに転職するような気持ちで勉強を重ねて、成長できるということもあります。
③については、お二人とも国際協力に対する共通の想いを持っている方と働きたいということになりますね。私の印象に残っている上司からの言葉として『“ウォームハート”と“クールヘッド”を持て』と言うのがあります。熱い気持ちを持ちながらも冷静に仕事を遂行できる力が必要だと感じています。また、バックオフィスこそ現場を想像する力も大事であると鶴田のコメントからも感じました。」



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・島 彰宏さん キャリア図鑑
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・2021年国際キャリアフォーラム 国境なき医師団 吉田 幸治さん
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・吉田 幸治さん キャリア図鑑
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・2021年国際キャリアフォーラム 認定NPO法人かものはしプロジェクト 小畠 瑞代さん
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・小畠 瑞代さん ROOKIESコラム
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